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 「金運を掴むには、真面目に汗を流して働く以外にあるわけないじゃないか」と考えるのが普通だろうけれど、だからといって、このようなタイトルを頭からバカバカしいと思うのは、どうかと思う。未開封のこのCDブックを古書店で買えたので、水琴の音が流れるCDを聴きながら読んでみた。2009年5月初版。

 

 

【まえがき】
 金運の出発点は「あなたが幸せである」ということです。
 でも、残念ながら今のままでは、あなたに金運は舞い降りません。なぜなら、あなたは低周波な世界、つまり、とても幸せとは言えない現実の中で、金運について思いを巡らせているからです。
 そんな低周波な世界を「高周波な世界」に変えるスイッチが、水琴です。
 本質の世界には、今のあなたの周囲にある低周波な世界ではなく、もっと高周波な世界が広がっています。あなたがしがみついている現実の世界よりも、もっと高周波なところに「本質の世界」=「幸せの世界」があります。
 音を流すだけで、あなたがいる「場」とあなた自身を、幸せな(高周波の)状態に運んでくれるのが、この水琴です。(p.5-6)
 だったら、『金運体質に変わる・・・』ではなく、『幸せ体質に変わる・・・』というタイトルが本当である。そもそも「幸せな状態=金運」というのは、たいそう安易な考え方であるけれど、要は売らんがためのタイトルなのである。著者には他にもCDブックがあることが巻末に示されているけれど、基本はすべて「高周波」ということだろう。
 江本勝さんのいくつもの著作に写真付きで示されているように、人間の感情や言葉や文字に関して幸せ側のものは秩序だった美しい波形・周波数をしていて、反対側のものは無秩序で粗雑な波形・周波数をしている。周波数が人間の心理状態・霊的状態に関与すること自体は疑いようがない。
 

 

【水琴が奏でる高周波の音】
 人間は、生まれた時は体の約90%が水で構成されています。その水は、細胞の一つひとつに、ひたひたと満たされています。水は私たちの生命力です。同じ音を聴くのであれば、自然の高周波音、それも生命の源である水が奏でる高周波音が、体にいい影響を与えることは明らかでしょう。
 その水音のエネルギーをさらに高めたのが、水琴です。
 日本庭園の技法の一つである「水琴窟」を応用して、高周波の魂を発生させることに成功した水琴の音は、湿度100%の空間から発信され、水蒸気を伝播します。水中音の伝播速度は、空気伝達のそれに比べて約5倍早く、波長も非常に長いと言われていますが、胎児のころの私たちが母親の羊水に浮かんでいる最中に聞いていた、空気伝達ではありえない高周波音を、都会の住空間にいながらにしてシャワーのように浴びることができるのです。(p.19-20)
 空海が求聞持法を成就したのは室戸岬の洞窟の中といわれている。寄せては返す波の音が洞窟内で響いて、特殊な高周波空間となっていたのだろう。水琴窟内の響き合う音も、そんな状況に似ている。何らかの効果はあるのだろう。
 水琴の発生源は水滴です。
「ポーン」「ポチャーン」と、どこからともなく聞こえてくるような癒しの音は、体にスッとしみこむような、何とも言えないみずみずしさを保ちながら、火の産物である陶器とコラボレートしています。
 つまり、反対の性質を持つ火水の競演が、すなわち水琴なのです。
 そして、相反するものが融合する瞬間、次元昇華(アセンション)がおこり、「火水(かみ=神)の音」として完成を遂げます。
 その一つの音に含まれるハイレベルな高周波エネルギーが、その場とあなたを浄化し、調整し、そこにプラスのエネルギーを注ぎこみます、小さな水滴音でありながら、爆発的なエネルギーを持っている。それが、水琴の本質です。(p.56-57)
 「火水(かみ=神)の音」という記述があるけれど、枢要な言霊解義である。
    《参照》   日本文化講座 ⑤ 【 言霊・天皇 】
              【「神」という言霊】

 

 

【再現性のない世界が招く効果】
 一滴一滴の水音は、自然現象と同じで、一つとして同じ音が生れない再現性のない世界です。ですから、「さっきのあの音がよかった」などと、そこに過去の情報を持ち出すことは、全く無意味になります。
 一つの音にこだわっても、すぐに次に聞いたことのない音がやって来る。
 つまり執着する気持ちを断ち切らないと、水琴はたのしめません。

 つまり、「二度と同じ音はない」=「一期一会の音」ということが、実は脳にとっては、「こだわっても意味がない」=「処理する必要がない」という判断を促し、過去への執着を捨て去る(忘れる)能力をアップさせるというわけです。
 それは、「今に生きる」という能力です。(p.38-39)
 我々の生きている世界を高度なものにしてきたと考えられている科学は、再現性をその基盤にしているけれど、それ故にこそ、人間たちは再現性なき自然本来のありかたから遊離してストレスをため込んできたといえるだろう。
 再現性なき世界が誘うのは、著者が書いているように「今に生きる」という能力の発現より、「意識の鎮静化・深化」ということの方が重要だろう。
 寄せては返す潮騒の音のみならず、焚火の炎の形にも再現性はない。空海は、洞窟に響く波の音で深層意識活用能力を高め、護摩の炎を見つめつつその能力を最大化していたのである。
 村上春樹の小説には、焚火が重要なカギとなっている短編があるけれど、要は、再現性なき炎であるがゆえに、現実を癒す異界へのとば口として活用されているわけである。
    《参照》   『神の子どもたちはみな踊る』 村上春樹 (新潮社)
 

 

【ジャングルと都会の音風景】
 この本(『音と文明』)の中で、大橋力先生の研究グループは、ジャングルの音風景と都会の音風景とを比較しています。
 ジャングルの音風景は、通常、超音波といわれる20キロ~100キロヘルツの非常に幅広い周波数帯域を持っていて、都会の音風景には、その高周波の帯域が欠乏している(仮にあったとしても、車の騒音やエアコン・冷蔵庫のモーター音といった大音量の低周波音にかき消されている)というのです。
 これを言い換えると、遮音性の高い家やマンション、ビルなどでは、脳を刺激する音環境は非常に脆弱である、ということです。さらに脳に栄養を与える「やさしい音環境」を、早急に作り出さなければならないと警告しています。(p.54)
 高層ビルの上階で仕事をしていると、日中、雷雨があったとしても、それを全く知らずにいることがある。雷雨ですら気づけない人工的環境って凄すぎである。しかも、室内はIT機器の発する非人間的な波動に満ちているわけである。週末くらいは自然環境に心身をさらして精神を慰撫しない事には、とてもじゃないけど正常な人間でいられなくなってしまう。
 CDの構造上、20ヘルツから20キロヘルツまでの音しか収録することが出来ませんが、それでも十分、ジャングルの音風景の一部である高周波音を部屋にいながらにして簡単に受け取っていただけます。
 部分的に超音波だけを得ることが、脳に良いわけではないからです。つまり連続する高周波への階段が大切なのです。その一部をCDでお届けすることができるからです。(p.57)
 ジャングルに満ちている超音波の帯域(20~100キロヘルツ)がCDではスッポリ落ちている!
 それでも効果があると書かれているけれど、自然豊かな環境に身を置ける人は、このCDより窓を開け放って自然音に耳を澄ませた方がいいだろう。
     《参照》   『新世紀を拓くバイオメディア』 志賀一雅 ジュピター出版
               【音の周波数領域と脳の満足】

 

 

<了>