《前編》 より

 

 

【4年間ここにいれば、必ずバカになる】
 日本型経営、アメリカ型経営に関係なく、新しい商売に適した経営を提唱する村沢氏にお会いした。彼は、東京に経営コンサルタント会社を設立したのだが、その社員の規定はなんと18歳から99歳までなのだという。「それは面白いね」と私がいうと、「私は本気です」と睨まれてしまった。真剣そのものである。
 この人は東京大学の機械科を卒業しているが、駒場に行って後輩たちに「18歳の諸君も、こんな大学はすぐ退学してわが社に来なさい。諸君はバカでないということは分かっている。しかし、これから4年間ここにいれば、必ずバカになる、いますぐ採用して俺が鍛えてやる」と宣言したらしい。(p.92-93)
 研究者や技術者になりたいのならともかく、ビジネスの世界で生きて行きたいのなら大学の教育って、多分ほとんど役に立たない。
   《参照》   『勉強について、私たちの考え方と方法』 小山政彦・羽生善治 (PHP研究所)
             【ビジネスマンが読む本】

 上記の書き出しに続いて、
 こういう人がついに日本にも出てきたかと思い、「いますぐ退学して入社する東大生はいないだろうが、そのうち毎年行くようになるよ」と激励したつもりが、「日下さん、あなたは67歳。すぐにわが社に来なさい。まだ32年間働けます」と、お誘いを受けることになってしまった。ここまで応用されては、私もお手上げである。(p.93)

 

 

【「急がば回れ」の読書】
 無駄のように思えても、あらゆる意見の著書を参照したり、日頃全く関連のない分野の著書に目を通すのは無駄ではない。読書する場合に、この教えを意識している。(p.98)
 上記は、「急がば回れ」という諺に対して、一般読者から寄せられた意見。
 これについて、日下さんは以下のように書き添えている。
 読書は将来に必ずや生きてくることを私は保証する。将来有用な本というのは、今の時点では無駄に感じるものの方が多い。逆に、いま有用だと思うような本の半分は将来無駄になっていると思ってよい。つまり、いま使えそうな本ばかりを慌てて読んでいると、長い目でみると貰いが少ないほうになる。これは、若い時の苦労は金を払ってでもしなさい、ということにも通じてくる。 (p.99)
 日下さんは、読書に関して下記の本を著している。
   《参照》   『「逆」読書法』 日下公人 HIRAKU
 チャンちゃんは暇つぶしで読んでいるだけで、「急がば回れ」などという思いは全然ない。同じジャンルばっかりだと飽きちゃうからバラバラのジャンルになっているというだけのことである。こんな読書だから何の役にも立っていないけれど、誰かの役に立てばと思い掲載している。このチャンちゃん読書記録をジャンルにかかわらず必ず毎日覗いている数百人の方々は、乱読的読書の効用が分かっている人々なんだろう。
 

 

【「ネガティブ」ではなく「ポジティブ」で】
 日本人で成功した人の話は「ハングリーをバネにした」「逆境のおかげだ」というのが大半だが、順境だからこそ明るく楽しいアイデアがどんどん出て成功したという話がもっとありそうなものである。明るく楽しくやっているときは、いいアイデアが出るし、能力も発揮される。世の中不景気で、来年はクビになるかもしれないと思うと、脳味噌も筋肉もコチコチになるが、そんなときに出てくるアイデアは、モノが小さい。
 アメリカのスポーツ選手はオリンピックで自己最高記録をどんどん出すが、日本の選手は出ない。これは日本の指導者が、「頑張れ、踏ん張れ。もう後がないぞ」と追いつめるからではないか。「いくらでも前は空いているぞ」といわれれば前向きになれるが、「後がない」などと追いつめられると、後ろばかりが気になる。結局、明るく成功した経験が上の人にないから、そのような言い方になってしまうのだろう。
 明るく楽しく考えることが願いが叶う可能性を高くする、というのは私の持論である。(p.156)
 日下さんの持論は、脳科学的に「正しい」と答えが出ている。
 脳内をドーパミン漬けにした方が、あらゆる点でうまく行くのである。
   《参照》   『脳を活かす生活術』 茂木健一郎 (PHP)
             【楽観回路を深く豊かにする】

 今、体罰問題が世論を賑わしているけれど、これを機に体罰は一掃されるべきだろう。
 人生の捉え方を、「ネガ基調」から「ポジ基調」に完全変換できれば、日本人は今まで以上に、いやかつてないほどに、大きな力を発揮することだろう。
 

 

【「あなたはとてもキレイだ」】
 パリのモードコレクションなどでモデルのヘアメイクを担当するアーティストは、髪をセットしながら「あなたはとてもキレイだ。今日は一段と美しい」と囁き続ける。・・・(中略)・・・。ヘアセットをしているのではなく、モデルの心の中をセットしているといってもよい。ちなみに、そういう男性が大勢いるのがパリやミラノで、まったくいないのが日本の大企業である。(p.161-162)
 こういうのを読むと、大企業のオジサンたちは、「“豚もおだてりゃ木にのぼる”ってことだよね」なんて言いそうな気がする。だからよくならないのである。
 単なる“おだて”では、場が整わないから発展性がない。言っている側と言われている側の共鳴が起こらないからである。不誠実な“おだて”なら相手に対して逆効果になる場合があるから言わない方がマシである。無理して褒めない。そのために長所を探すのである。褒めるに相応しいことであれば、場が共鳴して発展基調が整うだろう。
 

 

<了>