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 著者の読書経験をもとに、若者が読書に親しめるよう書かれている。言及されている本の中には、オーソドックスなものもあれば、「えぇ~~、茂木さんが?」と思うような本もあったりするから、誰が読んでも面白いだろう。どうゆっくり読んでも2時間で読める薄い本である。2009年11月初版。

 

 

【文学】
 生の経験をそのまま文字として綴れば、それは単なる日記でしかない。自らの経験とあえて距離を置き、その出来事や心の機微を整理し、なおかつ洗練した言葉に置き換える。それが活字化されて、はじめて文学といえるのだと思います。(p.27)
 “なおかつ洗練した言葉に置き換える”ことができるか否かは、先天的な才能の問題ではない。それまでにどれだけ多くの本を読みつつ表現の仕方を学んできたかによるのである。良質な本を読むというインプットがなければ、良質な記述というアウトプットは生まれない。
   《参照》   『蛇にピアス』 金原ひとみ 集英社
             【小説に教養は不可欠】

 茂木さんは 『プロセス・アイ』(徳間書店) という小説も書いているという。

 

 

【「読む」だけではなく「書く」ことも大切】
 皆さんに申しあげておきたいのは、「本を読む」ことはものすごく大事なのですが、同時にぜひ「書く」こともすべきだ、ということなのです。
 脳の学びの形式として、「感覚性の学習」と「運動性の学習」というものがあります。このバランスが取れていれば取れているほど、脳の学びとして完璧になります。(p.61)
   《参照》   『脳を活かす仕事術』 茂木健一郎 (PHP) 《前編》
             【「脳を活かす仕事術」の神髄】

 

 

【日本の良さを世界に向けて発信しなければならない】
 いったいどうすればいいのか。結論からいうと、バイリンガルを貫く覚悟を据えるしかないということになってしまいます。(p.77)
 日本を発信したいのであれば、やはり日本人が自ら先んじて外国語で日本を語らなければならない。
   《参照》   『日本人はなぜ国際人になれないのか』 榊原英資 (東洋経済新報社) 《後編》
             【日本文化を世界に搬出せよ】
 私は今、英語で本を書こうとしています。最近では、ブログを英語と日本語の両方で書いています。(p.81)
 有言実行しているところが凄い。
 日本と世界を仲介する立場で活躍している人々は、当たり前にバイリンガルである。この読書記録にある中で、大前研一さん、中丸薫さん、深見東州さん などは日本国内より海外での知名度の方が遥かに高いだろう。

 

 

【バイリンガル脳のメリット】
 目的が何であれ、バイリンガル脳には、以下のようなメリットがあるという。
 私は『赤毛のアン』を読んで英語脳を鍛えたのですが、最近の研究によると、バイリンガルの脳というのは老化に強いそうです。しかも何歳で第二外国語を始めたかは関係ないといいます。何歳で始めても、外国語のレベルがある程度に達したらバイリンガル脳になって、そのとき脳は強靭になるのだそうです。(p.77)
 海外に出かけて何事かを見聞するだけでも、経験値は跳ね上がるから脳は活性化するだろう。しかも外国語が使いこなせるレベルにあるなら、日本語では使われない脳の別領域が活性化しているはずだから、老化なんて生じっこないということなのだろう。
 この書き出し部分を根拠に、「だから幼少期の英語教育が大切だ」と言い出しかねない無教養な"人罪"がいそうな気がするから、下記のリンクを付けておこう。
             【思春期以前のバイリンガル化は必要か?】
 ところで、この本の中では『赤毛のアン』の内容について多く言及されている。夏目漱石と並んで、茂木さんの読書体験の基幹となっている本らしい。
 

<了>

 

茂木健一郎・著の読書記録