《前編》 より

 

 

【中国の国富ファンド「CIC」】
 ここで気をつけたいことは、この投資マネーの原資は全額、人民から借り上げているものだということである。 ・・・(中略)・・・ 日本の場合はまったくの余剰資金だから、最悪の場合、すべて無くなったところで国民は困らない。かたや人民マネーの借り上げ資金、かたや余剰資金。この差が日本と中国の差なのだ。
 しかも困ったことに、これらの投資80%が焦げ付いている。リーマン・ショック以降、世界でいちばん下降している株式市場は上海市場だ。ファンドにしても不動産、金融機関、資源会社にしても、中国の投資は軒並み失敗している。(p.168)
 世界一幻想に捉われている中国人民は、「国富」という名前のファンドにいれあげたのだろうけれど、どうせ運用しているのは、自分さえよければいい特権階級なんだから、「保八」コール(人民が暴動を起こさないように8%成長を保てという命令)に押されるように、まともな調査もせずボカスカ投資してきたのだろう。
 「中国が脅威である」 と騒いでいる戦争フリークのおめでたい人たちは、この本の第四章を読んでからにしたほうがいいんじゃないだろうか? 面白いことがいっぱい書かれている。

 

 

【鉄道事故】
 またまた中国で鉄道事故が発生した。日本のマスメディア報道しか知らない人は、「7月に続いて2回目か。懲りないなあ」と考えるかもしれないが、この手の事故は中国では数え切れないほど発生している。(p.180)
 一連の鉄道事故についてもっとも批判的な報道をしていた大衆紙「新京報」に対して、政府は北京市当局を通じて「管轄下に入った」と宣告した(9月2日)。 ・・・(中略)・・・ 目の上のたんこぶは潰せ、とばかりに制裁を下した、というわけだ。(p.186)
 頻繁に事故を起こしているのを知りながら、中国鉄道で旅をしてみたいという人は、先頭と後尾付近だけは絶対に避けて、なるべく中間あたりの車両に乗るのがいいだろう。

 

 

【中国は終わっている】
 どこかの役所が中国にバラ色の未来を描いたけれども、過去の成長だけで考えれば、いずれアメリカのGDPを抜くことになるのだろうが、それに何の意味があるというのだろうか? GDPとGNPのちがいもわからないエコノミストの世迷い言にしか聞こえない。現実を見ると、中国は火の車なのだ。(p.190)
 中国語では電車のことを火車と書くけれど、一連の電車事故は、中国経済の“火の車”状態を最初から意味していたのだろう。
 近年の中国は、対ユーロ貿易額が対米貿易額より多くなっていた。そんな状態下でユーロ不安が起きたから人民元は高騰している。日本のように確かな基盤を持たない中国経済の傷口は、ますます大きくなっている。
 インフレ、人件費高騰、人民元高の三重苦で中国という国家はすでに終わったのである。(p.194)

 

 

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