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 著者の肩書きにモンロー研究所ジャパンオフィス代表とあったから、かなり理屈っぽく意識を語っているのかと思ったら全然違っていた。日本でも昔から最も良く読まれている 「マーフィーの成功法則」 について検証しながら、願いが叶う場合を3通りに区分して分かりやすく記述している。
 自己啓発系の中にあっては、秀でた良書だろう。

 

 

【努力の有無】
 願いを叶える上で、マーフィーの法則が無視している点を、2つ指摘している。
 その1つ目が、努力の必要性である。
 マーフィーらは、願望を実現するために必要な努力の有無については、一切何も語っていません。それどころか、あたかもすべての願望は努力なしで実現可能であるかのような言い方をしています。(p.26)
 潜在意識を活用すればよい、というのがマーフィー理論。願望が潜在意識から発せられれば想いは実現すると言っているだけで、努力が必要であるとは書かれていない。しかし、
 実現するのに本人の努力を必要とするような願望は、本人の努力が肝心です。それなしには、実現しません。また、物理学や生物学の法則に反する願望は実現しません。(p.47)

 

 

【因果律】
 マーフィーが無視している2点目。
 もうひとつ、マーフィー理論は、因果律を無視しているところが見受けられます。願望が実現するにしても、それは因果律を超えることはない、というのが私の体験してきたことです。(p.26)
 マーフィーは、潜在意識を活用すれば、善い行いがなくても良い結果が得られる、と言っている。
 つまり、善因善果・悪因悪果という因果律より、潜在意識の方が上であると。
 悪いことばかりしている人が、実際に恵まれている事例は確かに多く見かけるし、善人で困窮している人も少なくない。これは潜在意識活用の有無の差なのか、それとも過去世から繋がっている因果律によっているのか、霊智のない人々には判断しかねる問題である。
 著者は、「因果律は越えられない」 とはっきり書いている。つまり、仮にマーフィーの理論を実践して宝くじが当たったとしても、それはその人に、それ以前に積み上げられた善因があった場合であって、善因を欠いている人がマーフィーの理論を実践しても宝くじは決して当たらない、と。

 

 

【努力と因果律は不可分】
 大リーグで活躍するイチロー選手が子供のころから練習の虫であったことは殊に有名です。もちろん並はずれた才能の持ち主であることは事実です。 でも後で説明しますが、才能というのは、幾つもの過去世でのたゆまぬ努力の賜物であることを知る必要があります。(p.36)
 才能が過去世の努力の賜物であるとするなら、才能と努力は因果律の支配下にあるということになる。それを一言で言うならば、「努因才果(前世の努力が原因で、結果として今世は才能に恵まれている)」 とでも言うべきものだろう。
 つまり、マーフィー理論における “努力の無視” と “因果律の無視” は、当然ペアで揃っていたわけである。

 

 

【努力せずに願望が叶うケース】
 イチロー選手の例にみられるように、
 大きな願望を実現すためには、過去世からの努力と今生での努力の両方が必要です。(p.51)
 ということは、首肯できる。
 しかし、それほど大きな願望でない場合、努力とは無関係に叶うことがある。著者がアメリカに住んでいたとき、ある団体に300ドル寄付したいと思っていたけれど、出せなかった。そんな時のこと。
 叔父は帰り際に、ラスベガスで儲かったけど、いらないからと言って、封筒を渡してくれました。後で中を見ると、何とそこには300ドル入っていたのです。もううれしくて、すぐに寄付しました。
 このように、自分のためというよりも、世のため人のための願いは、実現することがあるようです。(p.42)
 このような話は、実際にしばしば耳にすることがある。
 この事例は、努力の必要性を語らないマーフィー理論の例に該当しているかのように見えるけれど、実際はマーフィー理論の枠外の力によって起こっている。

 

 

【自利と利他】
 願望には、欲を礼賛し積極的に活用しようとする自利願望と、自らの欲を越えてしまった利他願望の2種類がある。マーフィーは前者であり、上に書き出した寄付金のケースは後者である。
 この2つの願望の根源となる点を考察することは、重大なポイントである。
 ストレートに欲を礼賛するようなマーフィー理論は、人間としての成長からは遠い理論だといえるでしょう。欲を礼賛することは、欲の中に囚われる結果をもたらすだけです。(p.60)
 「人間としての成長からは遠い理論」 とあるけれど、私に言わせれば 「前世紀の理論」 という感じである。下記の自己啓発系著者である、佐藤富雄さんもマーフィー系に属するだろう。
   《参照》   『脳が元気になる1日の習慣』 佐藤富雄 (ダイヤモンド社)
              【物欲のエネルギー】

 自己啓発系の著作も、最終的には、欲から離れて高次元存在との関わりの中で記述されねばならないのである。自己啓発系著作の質の高さを判別するポイントはこれである。
 この著作は、そのポイントを明確に捉えている。(後編にそれを書きだした)