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 2005年9月から2006年4月まで産経新聞に掲載されたもの。

 

 

【民主主義とカースト】
 実はインドの選挙で集票マシンの機能を果たしているのがそれぞれのジャーティであり、皮肉にも民主主義体制そのものが、カーストを固定化し制度を温存しているとも言えるのだ。(p.26)
 ジャーティとは共通の職業集団のこと。バルナ(肌の色)とジャーティはカーストと不可分な関係にある。
   《参照》   『驚異の超大国インドの真実』 キラン・S・セティ (PHP研究所)
              【カーストとIT産業】
 インドの現代社会で不可触民は少数部族などを含めて人口の約20%(約2億人)、上位3カーストは約15%(約1億5千万人)を占めるといわれるが、統計上の数字はなく定かではない。(p.28)

 

 

【経済発展とダウリの悲劇】
 経済発展に伴い、インドの女性がより美しく、ファッショナブルに装い始める一方で、消費社会の到来は女性たちに新たな悲劇をもたらしていた。
 “ダウリ” (p.40)

 比較的低額のダウリですむ幼児婚を選ぶケースもある。農村部では、15%の女性が13歳以下で嫁いでいるという調査もある。(p.41)
   《参照》   『驚異の超大国インドの真実』 キラン・S・セティ (PHP研究所)
                【ダウリー】

 

 

【ヒンズー至上主義】
 ラーマ神の生誕地というアヨディヤは、ヒンズー教の聖地として知られる。 ・・・(中略)・・・ この地が、国際ニュースの舞台となったのは1992年12月のことである。
 アヨディヤには、ムガール帝国時代の16世紀にヒンズー教寺院を壊して建てられたと伝わるモスク(イスラム礼拝所)があった。そのモスクを、今度はヒンズー教過激派ら約20万人が襲撃し破壊してしまったのだ。
 ヒンズー教徒とイスラム教徒の衝突は全土に広がり、わずか1週間でおよそ1200人が犠牲になったとされる。(p.44-45)
 下記は、ヒンズー至上主義者のグループ、RSS(民族義勇団)の方のお話。
 「米国はドルによって国が一つにまとまる。イスラエルや日本の場合は愛国精神でしょう。では広大なインドをまとめるのは何か。それは、やはりヒンズーなのです」  ・・・(中略)・・・ 〈イスラム教徒はインドを母なる国とは思っていない、人口を増やすことばかり考えている。そのうち、もう一つのパキスタンができるだろう。国民よ、目を覚ませ。そしてヒンズーを守れ・・・〉 (p.57)

 

 

【美人の産地・カシミール地方】
 インドで一番の美人の産地はカシミール地方である ――― とは、これまで訪れたインドの様々な土地でいく度も耳にしてきたことだ。(p.60)
 学校では絹織物の産地とかって習うわけだけれど、そんなのより美人の産地と習ったほうが印象に残る。両方教えてくれたらより印象的である。学校って××真面目だからつまらない。

 

 

【ボリウッド】
 年間8百本余りと本数では米ハリウッドをしのぐ世界最大の映画生産国、インド。そのヒンディー語映画の拠点がムンバイだ。ハリウッドとボンベイをもじって別名ボリウッドともいう。(p.86-87)
 ボンベイはムンバイの昔の呼称。
 ボリウッドで作られているのがマサラ・ムービー。

 

 

【マサラ・ムービー】
 「喜怒哀楽はもちろん、歌と踊りがないとインド人は満足しない。ハッピーエンド、これも鉄則です」
 コーディネーターのアニル・クマルによると、娯楽要素を満載したインド映画は 「マサラ(さなざまな香辛料の混合物)・ムビー」 とも呼ばれるそうだ。
 伝統演劇に必要なナバ・ラサ(9つの味)が盛り込まれているのだという。つまり、色気、笑い、恐怖、怒り、勇気、憎悪、悲しみ、驚き、平安の要素である。ただし、性表現の検閲は厳しくキス・シーンはほとんどない。(p.87)
 日本人がマサラ・ムービーを見たら、「ごちそうさまでした、もう結構です」 と言うに違いない。なんちゅうかケバケバしいし “秘すれば花” という日本的文化世界の真反対なのである。
 マサラ・ムービーはいただけないけど、マサラ・カレーは美味しい。
   《参照》   『笛吹きインドひとり旅』 うえの善巳 (中央アート出版)
                【インド料理】

 

 

【映画女優もカースト色】
 ボリウッド(ヒンディー語映画)の人気女優の肌はおしなべて白い。なぜなのか。
 「支配者たちの置き土産さ」。自身、色白の映画監督、ウメシュ・メーラ(52)のこの言葉は、白人の英国人による植民地支配だけを指しているのではない。
 3000年以上前、中央アジアあたりにいた肌の白いアーリア民族がインドに侵入し、肌の黒い先住民たちは南部に追いやられた。アーリア民族は身分制を示すカーストを作り、肌の色が身分を区別する重要な要素となっていく。実際、インドではカーストのことをバルナ(色)と呼んでいた。(p.82)

 

 

【養蚕(生糸生産) “牛糞信仰” との戦いから
 インドの生糸生産量は中国に次ぐ世界二位ながら、質が悪いため中国からの輸入に頼っている。だが、「人工衛星からサンダルまで」 と形容されるほど自給にこだわるお国柄である。インド政府が威信を回復すべく援助を求めたのが日本だった。(p.94)
 JICAの技術指導によって、高品質な生糸が生産されるようになっているそうである。
 蚕のかごの裏側を触るとザラザラしている。
「牛糞です」。驚いて手を引っ込めたが遅かった。指に糞がこびり付いていた。
「ヒンズー教にとって聖なる牛の糞を塗ると、疫病や害虫から守られると信じている。不衛生極まりないんですがね、本当は」
 日本の技術指導は、この “牛糞信仰” との戦いから始まったのである。(p.96)

 

 

【19×19の暗算は誇張】
 「19×19まで暗算ができるというのは誇張されていますね。数十年前の教育方法です。同じ教育を今でも受けている子供はいますが、そうでない子供が大半なのです」 (p.104)
 ニューデリーで開校している公文現地法人の社長さんの発言だという。

 

 

【親日の源流・ベンガル州コルカタ】
「インドの中でもとくに、コルカタをはじめとする西ベンガル州は親日的だ。バッタチャルジー州首相自身、黒澤明監督の映画を全作品見たという大変な親日家でもある。中国の様な半日デモは考えられない」
 岡倉天心 と親交のあった詩人のタゴール、日本の協力でインド独立を目指したビハーリ・ボースとチャンドラ・ボース、東京裁判の不当性を主張したパール判事、いずれもベンガル出身である。
 日本との間に歴史問題が介在せず、一般に親日的とされるインド。その源流がコルカタにある。

 

 

 

<了>