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 吉本興業自体は歴史のある企業だけれど、著者が吉本の興隆期を担った方らしい。ビジネスマンにとっては好材料がちりばめられている書籍。2002年9月初版。

 

 

【仕事の幅と男女差】
 男子社員は嫌な仕事でもいちおうは引き受ける姿勢はあります。結果はダメな場合も多いのですが、その経験はあながち全部が全部、無駄にはなりません。いわば、失敗に学ぶ姿勢です。それがあるかないかで、大きな違いになります。
 反面、女子社員はというと、どちらかというと限られた自分の専門分野を深く掘り下げようとする傾向があります。いわば、スペシャリスト志向です。
 嫌な仕事は、はっきり拒否します。男性が、できなくても 「できます」 というのに対して、女性には 「私にはできません」 で終わりになる場合が多いようです。
 確かにこれだと、自分の担当分野の業務には精通するし、スキル・アップもします。コストに見合った仕事もするでしょう。しかし、いかんせん幅が広がりません。ある分野の仕事だけを任せている分にはいいのですが、もう少し大きな仕事を任せようとした場合、スペシャリストとしての短所が災いすることがあります。(p.42-43)
 吉本興業のように異業種とのコラボレーションが可能なビジネスでは、スペシャリストでは確かにフィットする場面が少ないのだろう。
 秘書やプレスを目指すなら、ジェネラリスト志向でないと役には立たない。
             【ビターな知識人】

 

 

【変化を躊躇わない】
 (ボケとツッコミを)スイッチすれば生き返る、というコンビは多いと思うのですが、当の本人たちがどうしてもトライすることに躊躇するのです。元も子もなくなってしまうというリスクがあるからかもしれません。それ以上に、やはり人間というのは長年慣れ親しんだことをしているほうが、楽だというのがあるようです。
 部下を判断する際、このあたりは重要なポイントになります。 (p.124-125)
 従来の役割を止めて新しい役割を担うということは、年齢を重ねるほど肉体的にも精神的にもきつくなる。しかし、企業家精神を有する人なら、このことは、まさに企業の生死にかかわる重要問題であることを知っている。
 特に製造業の場合、製品には必ず寿命があるという冷厳たる事実を前にして、常に新製品のアイデアを出し続けるのは宿命である。企業活動においては、人も物も時流の中で立ち止まったとき、衰退ないし敗北を意味する。
 昨夜、テレビ東京のカンブリア宮殿で、印鑑の代名詞のように認知されているシャチハタという企業を取り上げていた。印鑑のインク台を作っていた会社が、インク台を不要にするシャチハタを作っていたのである。さらに現在は電子印鑑にまで先んじて進出している。完全なる自己否定を繰り返して成長してきているのである。
 変わるのが嫌、考えるのが嫌、前例を踏襲するだけ、規則に従って行為するだけ、自発的には何もせず、ただボーっとして生きていたいという人は、公務員が最適である。民間企業には全く適さない。

 

 

【セカンドオピニオンとしての女子社員の価値】
 彼女たちは、実によく周囲の男子社員を見ています。しかも、その評価は的確なのです。
 私は、「この人間は見込みがある」 と思っていた社員が、実は裏で手を抜き、彼女たちの人望がまったくなかった・・・・というケースもありました。彼女たちの指摘は具体的なだけに、参考になります。
  ・・・(中略)・・・ 。
 客観的情報を得るためのセカンドオピニオンとして、女子社員の声は本当に重要です。
 情報は一か所からですと、判断を間違えやすいものです。
 仮面社員に騙されないためにも、日頃から女子社員とコミュニケーションを図っておくことは大切なことです。(p.139)
 評価される側の男性社員は、ゆめゆめ女性社員をあなどってはならない。

 

 

【部下の判断方法】
  「今まで何をやったか」 と、「これから何をやりたいか」 だけ聞けば十分なのです。
  ・・・(中略)・・・ 。
 聞く際のポイントは、相手の話が長いか短いか、です。
 概して、いい仕事をして、自信のある者ほど話が短く、いい加減な仕事をし、自信のない者ほど話が長いものなのです。(p.140)
 鋭敏な頭脳で明晰な考え方をしている人は、コンパクトにポイントを突いた話が出来る。そうでない人の場合は、ポイントがボヤケテいてやはりちょっと危険。
 通常のチーム・ミーティングでも、話し方で、個々の鋭敏さと作業の進捗状況はだいたいわかってしまう。

 

 

【いじめ対策】
 山形には、山形の教育があっていいはずです。例えば大阪だったら、教育は読み書きソロバン、ボケ、ツッコミだけを教えればいいのです。
 これさえあれば、どこに行っても通じますし、ボケ、ツッコミを教えれば、イジメも意味がなくなります。イジメというツッコミには、ボケで対抗すればいいのですから。なにしろボケ・ツッコミはコミュニケーションの一つなのです。(p.161)
 確かに、大阪ではイジメ問題なんてそれほどないのだろう。
 先生側の統制を免れるためにも、生徒はこの術を会得しておくべきである。中学生だった時、ホームルームで何か決めごとをしていて、担任の先生が 「後で文句言うくらいなら、今のうちにブーブー言っときなさいよ」 と言ったから、数人が同時に手を上げて 「はい、ブーブー」 と即座にボケツッコミで返して、すっかり先生を閉口させていたのを思い出す。面白いクラスだった。

 

 

【いい人をやめて孤独を楽しむ】
 チャンちゃんには考えられない症状であるけれど、群れをなしつつ悩む日本人が多いらしい。
 雑誌のコラムにあったその対策方法が要約されている。
 要するにいい人をやめればいいのです。
 さらに、自分を確保し、他人とはきちんとした距離をとる、自分の人生に大切な誰かを見つける、自分の人生はたった一つだというような、いくつかの条件を満たして孤独を楽しもうというものでした。孤独とは、積極的な能力なのです。 (p.212)
 これは、ビジネス環境が変わりつつある現代には適した生き方でもある。
 孤独力を身につけてこそ、さらに実社会で、有効な働きができるのです。他人の評価を気にせず、自分の思ったままを力一杯発揮できるのですから、充実感や達成感は12分に味わえます。(p.212)
   《参照》  “孤独” に関する引用一覧

 

 

【不美人論】
 陶智子さん の書かれた 『不美人論』(平凡社新書)という本です。
 著者は 「安直なモノマネ美人にならず、インパクトのある不美人になろう」 と訴えています。 ・・・(中略)・・・ 。
 陶さんはある新聞の著者インタビューで、
「自分を知れば付和雷同せず、自分なりの化粧で個性的な不美人になれる。グローバル化に揺れる今の日本人も外国人に合わせるだけではかえってだめなのでは」
 とも答えておられました。
  ・・・(中略)・・・ 。
 自分をしっかり持っている男性にとって、個性的な不美人というのも、かなり魅力的なものです。美人だが、個性もないし、中身もないという女性よりも、一緒に過ごしている時間の充実感が違います。女性を飾りものとしてしか見ていない男性にとっては美人は意味があるでしょうが、それはほとんどの場合、金と時間の無駄遣いです。(p.218-219)
 男性と女性を入れ替えて考えても全く同じだろう。

 

<了>
 

  木村政雄・著の読書記録

     『吉本興業から学んだ「人間判断力」』

     『「人をつくる」という仕事』

 

  中邨秀雄・著の読書記録

     『自分が楽しむ。だから成功する』