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 販売、財務、人材育成について、中小企業を経営してきた著者の経験が語られている。

 

 

【 「正で臨み、奇で勝つ」 】
 売上を伸ばそうという場合も、やはり正攻法でコツコツと新規開拓に努めていくしかありません。私自身、そうやって売上を伸ばしてきました。(p.14)
 売り上げは訪問件数に比例しますから、訪問件数を増やしていくのが一番の近道なんです。(p.21)
 訪問件数を増やす努力を横に置いといて、誰かいいお客を紹介してくれる人はいないか、どこからか新規取引の話が転がり込んでこないか、なんて考えているようではダメ。奇を先に立てていたら売上を伸ばすなんて絶対に不可能なのです。(p.23)
 下記リンクでは、創作、研究のヒントとして 「奇」 の効果が語られていたけれど、ここでは販売方法の基本として、汗の量に比例する 「正」 が語られている。
           【 「正で面して奇で勝つ」 】

 

 

【財務について】
 複式簿記というのがあります。あれは、イタリア・ベニスのルカ・パチョーリさんという人が15世紀に発明したらしいんですけど、・・・(p.65)
 商業のルーツはイタリアのベニス。国際金融資本家のルーツを辿っても、やはりベニスにまで溯るはず。
    《参照》   『船井幸雄がいままで口にできなかった真実』 船井幸雄 (徳間書店) 《後編》
              【ヴェネチアを見落としている世界史】

 ところで、経営者は財務の理解が必須であると書かれている。著者は顧問税理士さんに数時間集中的に聞きまくって会得したという。
 「いや、本を読んでいるヒマがないから、こうしてお聞きしているわけで、そのために顧問料を払っているんですから、教えてください」 (p.65)
 確かに、これが最速の方法だろう。この方法なら5時間くらいでマスターできるという。

 

 

【在庫管理】
 在庫と言うのは経理上、利益になります。・・・中略・・・。在庫のまま期を越すと、それに対して法人税50%、住民税10%、合計60%の税金がかかります。その税金を決算の2か月後に現金で払わなければなりません。
 ところが、商品としてはあるけれど現金がない、ということがままあります。・・・中略・・・。銀行から借りたものは利子を払って返済しなければなりませんから、在庫と言うのは結局、金利を食うわけです。それだけではありません。在庫は、置いておく場所代の倉庫料、つまりお家賃がかかります。(p.76)
 在庫は経理上、利益とみなされると言うのは、素人にとってはビックリである。
 上記以外では、商品には売れ行きに傾向があるから、これに合わせて在庫を過剰に抱えないように発注することが大切。

 

 

【資金繰り:手形・請求書・帳破】
 絶対に手形は切らない。うっかりミスで不渡りになるのが目に見えているから、手形は切りません。その点、現金払いなら、うっかり忘れても、「すみません」 と謝りながら引き伸ばしてもらえば、数か月間は何とかもちます。(p.94)
 経営者にとって請求書は業者の意見。経理の人間はまじめな人が多いから、経営者がチェックしなかったら、支払わなくてもいいものにまで支払ってしまいます。来月にまわしてもいいのに早く払ったりします。あるいは逆に、今月中に支払わなければならないのに、グズグズして払い忘れたりすることもあります。(p.116)
 資金繰りに関するもう一つの方法に 「帳破」 というのがある。締日の2・3日前に納品されたものについて、「これ、帳破でおねがいします」 と言い、了承されれば、締日後に納品された扱いにしてもらえるのだという。支払いが1カ月先延ばしできる。

 

 

【任せっきりは危険】
 失敗する社員は同じことで失敗する傾向がありますから、やっぱりつねにチェックしておかなければいけない。・・・中略・・・。ちゃんと(その人を)チェックする。(p.114)
 ある程度任せるけれど、任せっきりにしないで、その人間の能力、技の見切りをしておかなくちゃいけませんよね。皆さんも当然のことながらやってらっしゃるとは思いますけれど、絶対そうしなければいけません。(p.116)
 受刑者の再犯率が非常に高いという傾向があるように、ミスを犯す人って、体験によって学んで改善する場合よりも、ミスを繰り返すことの方が多い。人間一般にはそのような傾向(法則性)があるものである。
 人を信頼するということと、人間に関する一般則を知っていること。二つとも大切であるから、チェックが必要になる。
           【読み書きできる能力を磨く : 二上貴夫さん】

 

 

【会社の発展力とは】
 会社の発展力とは何か。ひとことで言うと、営業マン的な発想、営業マン的なセリフ、営業マン的な盛り上がりで会社を進めていく、ということです。(p.123)
 もっと煮詰めていうと・・・・
 人間って、本当にわずかな言葉で腹を立て、長年の信用がポーンと傷ついたり、わずかな言葉で嬉しくなって、一生その人についていく、結婚する。あるいは、その言葉に腹を立てって離婚する。その言葉に腹立って射殺する。自分も殺される。刀で切り合う。バットで殴り合う。それぞれ果てしなく発展するわけなんですが、生きる死ぬ、売れる売れない、殴る蹴る、結婚するしないは、わずかなひと言で決まります。・・・中略・・・。だから、そんなマーケティングだなんて大げさなことよりも、セリフですよ。セリフ。 (p.132-133)
 テレビや新聞で言っているようなことは、大企業にとって相応しいものであって、中小企業にはほとんど関係ないのだという。確かに、そうなのだろう。
 大企業には、気の利いたセリフなど言えなくっても、ちょっと優秀な学校頭のある人が相応しいかもしれない。
 中小企業の経営者は、取引相手と現場でコミュニケーションしながらの毎日なのだろうから、人間的には面白い人々が多いのは確かだ。お笑いも面白い芸人さんは売れる。商売も気の利いたセリフが言える面白い営業マンは売れる。
 
<了>