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 1929年生まれの著者。日本人の生き方として基本的なことが書かれている。

 

 

【本当の幸福を手に入れる】
 幸福とは一生をかけて修養を重ね、自分の内面の奥深くに眠る精神の根本を磨き高めることで築き上げるもの。一生かかってようやく得られるものである。修養するという意識のカケラもない現代人に幸福が訪れるなどという滑稽なことは最初からない。 (p.11)
 ドキッとする。
 修養・・・。
 渡部昇一先生も、新渡戸稲造の 『修養』 をことあるごとに言及している。

 

 

【月性の詩:根性と志がモノをいう】
 月性(1817―58)の詩に曰く、「男子、志を立てて郷関を出ず。学、もし成らずんば死すとも帰らず、人間(じんかん)、いたるところに青山あり」 と。(p.19)
 月性は、江戸末期の浄土真宗本願寺派の僧。勤王家。字(あざな)は智円(ちえん)、清狂と号した。周防(すおう)国(山口県)の人。
 よく知られた詩ではあるけれど、古典の中で言及されることが多いから、ついつい中国人の詩と勘違いしてしまいやすい。
 現在では交通機関が発達してい過ぎて、郷関という言葉自体、実感を伴わない。それにつれて志も希薄になってしまっているのだろう。
 志は、士の心である。交通機関の発達という以前に、士(武士・男子)が衰退しているのかもしれない。
            【 「士」 なのか 「民」 なのか】

 

 

【女としての品格】
 質素倹約を旨とし、必要以上に金銭を使ってはならぬ。見栄を張ってブランド品にうつつをぬかし大枚をはたくなど、もってのほかである。
 たとえ華麗に身を飾っても、内面の美がなくては何の価値もない。自分を磨いて身につけた、内に秘めた魅力こそが、品格であり、それが人を引きつけるのだ。 (p.28)
 外国人のスーパーモデルがインタビューされていた場面。 「一番大切なことは?」 と質問されて、「内面を磨くことよ」 と答えていたけれど、その後の笑った顔がなんともおぞましかったので、強烈に印象に残っている。口先だけの受け売りなら絶対にしない方がいい。

 

 

【自分だけの楽しみを考えるな】
 妻であり母親であることを忘れ、グルメだの友達との旅行だの無駄な買い物だのにうつつをぬかし、勝手気ままに振る舞う妻とも母親とも称するに値しない女性が増えてきた。これは日本文化の衰退につながる。(p.52)
 「妻や母親である前に、一人の女性として・・・」 という発言を良く耳にする。個人にとっての最適解であっても、社会にとっての全体最適解ではないことは、この場合に限らず多くの場合にありうる。
 全体最適を考慮できない人間は、つまり品格がないということではないだろうか。

 

 

【経営者はつまらぬ言に左右されるな】
 部下や取引先のへつらいやおべっかは道を誤るもと。またたがいの噂話にふりまわされて「あの人は良い人だから」 との評判で重く用いたり、「あの男は良くない男だから」 との評判でその男を遠ざけたりするようなことがあってはならない。あくまで自分の経験から出た厳正な判断で事を決するべきである。 (p.100)
 教養のない警察官は、最も冤罪を作り出しやすい輩だろう。教養ある警察官なら制服という “威” を借りず謙虚なままに人の安寧を守れるはずである。
   《参照》   『ひらめきはどこから来るのか』 吉永良正 (草思社)
             【人間の記憶】

 

 

【部下に礼儀作法を徹底して教えよ】
 したがって上司は、自らも反省するところは反省し、礼儀作法を基軸とした規律が組織を維持する最重要点であることとを自覚し、ことあるごとに部下に、

 礼儀作法の実際と精神
 上下の区別をわきまえた会話
 一歩下がったひかえめな態度
 相手に対する思いやり

 これらを辛抱強く教えねばならぬ。上質の相手なり上質の得意先は、この点を重視している。だからこの上質な相手の視点に合格しなければ、良き人間関係なり良き取引関係は構築できない。 (p.127)

 

 

【最もうまく自分を消し去ったとき】
 芸術の世界では 「最もうまく自分を消し去ったときに、作品は真の個性をもつ」 といわれるそうだ。なるほどと思う。これはまさしく人生と同じではないか。 (p.155)
 芸術も秘儀参入の術を伝承する世界の一つであるから、このような云いがある。これを 「まさしく人生と同じではないか」 と書いている著者は、四柱推命という秘儀参入の術を伝承する世界を学んできた人であるらしい。普通に人生を生きているだけで秘儀参入後の世界に出会える人は、よほど機根の秀れた人なのだろう。

 

 

【道徳の問題】
 まずは第一に、道徳の基本である 「素朴な心」 と 「清らかな生き方」。 これを大切にして、日本の現状を打ち破り、ふたたびこの日本に誇り高き 「東洋の君子国」 としての自信をよみがえらせ、みな和気あいあいと暮らそうではないか。 (p.181)

 

 

【大和魂・大和撫子】
 大和魂とは私欲のない真っ直ぐな心。大和撫子とは清らかで控えめな性質をいう。 (p.182)

 

 

【これからの日本】
 ある外国人が言ったそうな。「日本はあと20年ももたない」 と。
 いや、そんなことはない。
 日本には、2千年にわたって蓄積されてきた精神性と文化とがある。ちょっとやそっとのことではへこたれはしない。近頃の若い人は、この国に対してすっかり自信を失っているようだ。そんなことでは本当に困る。まだまだ日本も捨てたものではないというところを、これからお目にかけようではないか。諸兄の奮闘努力を期待してやまない。 (p.183)
 日本に向けられてきた禍々しき言葉・予言の数々は、その殆どが未然のうちに回避されてきている。日本の持つ精神性と文化性は、世界の中枢を分担しているからである。
 日本人の謙虚さは、何かにつけ悲観的な解釈に傾きやすいけれど、世界を導く真意(神意)は日本人の中にあることを多くの人々が知らずにいる。日本に叡智が蓄積されてきた期間は、たかが2千年程度ではない。 
 
 
<了>