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 最近の日本では、地デジ・チューナー搭載型ノート・パソコンが12万円程度で販売されている。パソコンとテレビの機能が合体して販売されるようになったのは、昨年あたりからであろうか。
 この書籍は、アメリカにおける、このようなPC技術の進化によるテレビとの統合化を予測した書籍であるけれど、日本で翻訳された初版はなんと1993年、今から15年も前である。


【テレコンピュータ】
 これからは 「テレコンピュータ」 の時代になる。これは、世界中の映像処理用のパソコンを、光ファイバーで結んだものと考えればいいだろう。テレビのような一方通行のものではなく、電話のように双方向の送信が可能なこのテレコンピュータは、言語通信の分野で電話が電報に大きく勝ったように、映像通信の分野で完全にテレビをしのぐようになるだろう。 (p.32)
 1990年代初頭は、日本製のアナログ方式のHDTV(高品位テレビ)が最先端技術として世界に向けて紹介されていた。しかし、21世紀のテレビ業界は、アナログ方式ではなく著者が予測したようにデジタル方式を採用するようになった。コンピュータは元々デジタル方式だったから、テレビとコンピュータは統合される方向に進むのが必然である。

 

 

【マイクロチップと光ファイバーの技術進化】
 マイクロチップと光ファイバーは、今日の世界でもっとも急速な進歩をとげているテクノロジーだといえるだろう。 (p.42)
 かつて真空管を用いていた頃のコンピュータはビルディングほどの容積を必要としたけれど、江崎玲於奈博士の発見したダイオード(半導体)の技術が進化して、ビルディングほどの容積がわずか数ミリのICチップの中に収まってしまう。
 光ファイバー(ガラス繊維)は、現在のメタル回線(銅のケーブル)や通信衛星の何千倍という量の情報を伝達することができる。光ファイバーはシリカ繊維でできている。
 画像は音声や文字に比べ遥かに情報量が多いため、マイクロチップと光ファイバーの技術進化がなければ、テレコンピュータ化は実現しなかったはずである。

 

 

【銅ケーブルの次は、アルミニウム・ケーブル?】
 電話の送話口には音圧を電気信号に変換するために純度の高い炭素が使われているが・・・(中略)・・・「炭素が尽きたら、次は銅の出番だ」 AT&Tの専門家はそう述べた。
 彼はさらに、銅の替わりになるものといえば、アルミニウムしかないだろうとも述べた。アルミは伝導性に優れているだけでなく、地球上で最も豊富な金属資源のひとつでもあった。 (p.92)
 しかし、高温多湿なアメリカ南部地域ではアルミニウム回線は化学変化に弱く銅より腐食が早いという欠点があった。AT&Tの専門家は光ファイバーの技術開発は、困難なものであると予測していたらしい。

 

 

【ニュージャージーこそピラミッドの頂点だった】
 トップに 「知能」 が集中しているときには、ピラミッド型のネットワークが一番適しているのである。そしてベル・システムでは、すべての 「知能」 はニュージャージーに集中していた。AT&T本社も、機材の製造を受け持つウェスタン・エレクトリック社も、そして世界最大の研究施設ベル研究所も、ニュージャージーに集まっていたのだ。
 ニュージャージーこそピラミッドの頂点だった。 (p.97)
 情報処理技術は、コンピュータの性能が進化したことにより、ホスト・コンピュータ方式という一箇所に情報が集中する処理方式から、クライアント・サーバー方式という情報を分散して処理する方式へと移行してきた。
 技術の進化により、情報の1箇所集中は無意味となり、ピラミッドの頂点は崩壊したのである。 

 

 

【ドモネティクスの実現を理解した日本人】
 アメリカ特許庁の科学者アラン・キロンは、1969年に、文化とテクノロジーの相関関係をあらわすために、「ドモネティクス」 という言葉をつくった。これは、ドミサイル(住居)、コネクション、エレクトロニクスの3つをつなぎ合わせたものだが、彼はこの言葉を使って、コンピュータや通信機器がどのように生活パターンを作り変えていくかを表現した。 (p.47)
 こうした 「ドモネティクス」 的現実をもっともよく理解して積極的に行動したのは日本だろう。・・・(中略)・・・。富士通は、1982年には早くもAT&Tより優れた光ファイバーの製造を始めている。ボストン、ニューヨーク、ワシントンDC間に光ファイバーを敷設する際の入札で、AT&Tグループのウェスタン・エレクトリック社が富士通を抑えられたのは、国家安全保障を理由にアメリカ政府が介入したからにすぎない。 (p.105)
 マイクロチップと光ファイバー。いずれにおいても製造技術世界№1は日本である。
 ところで、1982年というのは、富士通が8ピットのパソコン、FM8を、日本市場で始めて販売した記念すべき年でもあったのではないだろうか? であるならば、日本人がPC(パーソナル・コンピュータ)を使うようになって以来、その歴史はわずかに26年程度である。
 一般市場がどうであれ、日本企業が有する情報技術・製造技術の蓄積は、アメリカに比べても決してひけはとらない。いや勝っている。一般家電の技術では圧倒的に勝っているから、情報技術が内製化される様々な家電製品の生産において日本は圧倒的に優位になる。日本の家電産業界の基礎力は、間違いなく世界一である。

 

 

【情報通信事業を自由化するために】
 FCC(連邦通信委員会)は、電話会社とケーブル・テレビの共同所有を禁じた1970年の規制を解除する方針を、さらに徹底しなければならない。 (p.156)
 この文章に続いて、全部で4つの法整備を語っている。インターネット、電話(音声情報)、ファクシミリ(文字情報)、テレビ(画像情報) がすべて同一回線で処理できるようになっているのだから、各媒体の所有会社がバラバラのまま、それぞれに基本料金(使用料金)を支払うというのは、確かに不合理である。インターネットを使っている若者たちは、紙媒体の新聞は購入しなくなっている。
 おそらく日本の一般家庭も、ケーブル・テレビ契約料3000円、NTT基本料2000円、プロババイダー使用料4000円、合計額でおよそ1万円にも及ぶ月額料金を支払っているはずである。技術的には回線1本で全て利用可能なのだから、これらが一社に統合できるならば、利用者の負担は半分以下に減らせるはずである。
 以前、「アメリカ政府は、メディアを統合し、民衆に対する監視統制を強化している」 という視点で語られた下記リンク書籍を読んだけれど、メディアの使用料が安くなることを実現しようとするならば、各メディアの統合(所有者の同一化=クロスオーナーシップ)はされなければ実現しないことになる。
              【クロスオーナーシップを解禁したアメリカ】
 マルチメディア社会は、まさに 「両刃の剣」 である。
 
<了>