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 『そして、日は昇った!』  の直後に出版(初版は2週間前の3月31日)された本。この本は、書店に平積みされて、2日後には全て売り切れていた。増田さんの固定的な読者は10万人以上はいるのだろう。私は政治経済の新刊などめったに買わないが、日本のビジネスマンたちは、最新図書をとてもよく読んでいる。


【アメリカの中国連邦制計画】
 中国を自由化してドルの市場を拡大するためには、いま進行中の中国経済のバブルをさらに過熱させてハードランディングさせ、政権崩壊へと追い込めば良いい。アメリカは、いずれ中国を5つの共和国による連邦制にしようと、準備を始めている。まだそれらのトップに誰を据えるかは決まっていないが、具体的な分割プランは出来ている。 (p.100)

 今月はじめに、『七つの中国』 いう古い本を読み返して読書記録を書いておいたけれど、この考えは、アメリカのように戦略的な立場で立案されているというだけではない。日本人の霊能者であり、日中関係に深い縁のあった親族を持つ広瀬謙次郎さん(既に故人である)は、10年ほど前に、良きビジョンとして、分割された将来の中国の様子を霊視してその内容を本に著していた。この方は、予言者であっても預言者ではないから、実際には当たっていないことが多いけれど、中国の将来に関しては、分割されて継続的な発展をする以外に選択肢はないはずである。


【中国の崩壊を延期させ、さらに太らせるために使われる日本の資金】
 アメリカは、アメリカ企業が海外の子会社の利益配当金などを本国に送金する際にかかる連邦税率を、2005年、1年間の時限立法で35%を5.25%に引き下げ、中国に投資した資金を既に回収してしまっている。
 引き上げられたアメリカ資金に変わって、さらに中国を太らせるために、日本の資金を中国経済に注入させるための小泉改革だったのである。(p.102-103)



【アメリカの中国投資内容の変化】
 胡錦濤国家主席は、「テクノクラート」(高級官僚)出身で、彼が頭角を現した背景にはシティーバンクによる中国投資の拡大があった。しかし、アメリカ政権の中枢にゴールドマン・サックス出身者が出てきたため、アメリカの対中国投資の流れが変化し始めてきている。
 シティーバンクは銀行融資という直接的なかたちで中国市場に投資していたが、ゴールドマン・サックスは世界中の投資家から資金を集め、それを投資する投資銀行である。 (p.107-108)

 このシティーバンクからゴールドマン・サックスへの移行に関しては、副島隆彦さんが昨年から興味深いことを書いている。『アメリカに食い尽くされる日本』 森田実・副島隆彦 (日本文芸社) という本の中だ。気が向いたら読み返して読書記録を書こうと思うが・・・。
 中国投資の主体がゴールドマン・サックスに移行されたことで、中国のリスクは当然大きくなる。軍事と資本を使い分け、その資本も、直接投資とブローカー投資を使い分けるアメリカは(ズル)賢すぎる。ここだけ見れば、日本も中国も、アメリカにとっては徹底的に好い鴨である。


【アメリカ=イスラエル対イランは、アメリカ対ロシア・中国】
 このように(アメリカ)のロードマップは、表面上民主化だ、和平だといいながら、その裏で和平維持できない状態を作り出しておき、自らの軍事行動を正当化する。(p.166)
 このシナリオが効を奏し、そう遠くない将来、中東における最終戦争、アメリカ=イスラエル対イランの戦いが始まることは間違いない。イランのバックにはロシアと中国が控えている。 (p.192)

 ブッシュ政権が終わっても、基軸通貨ドルの死守は、アメリカのマニフェスト・デスティニーだから、ロシア・中国が基軸通貨ドルにNOであるならば、間違いなく、第6次中東戦争は勃発する。


【世界経済のイニシアティブはアメリカから日本へ】
 アメリカの金利は2007年の夏までにも引き下げられる可能性があり、金利が上昇へ向かう日本とは正反対の動きをすることになる。ドル安とともにアメリカ経済は内需主導から外需依存へ、日本は外需依存から内需主導型に変わっていく。このような日米経済の質の転換の動きのなかで、世界経済のイニシアティブはやがてアメリカから日本へ移ることになる。(p.215)



【三角合併をこう評価する】
 『そして日は昇った!』の中に書かれていた三角合併について、増田さんは、この本の中でこう書いている。
 新日鉄のような日本を代表する伝統ある重厚長大産業が三角合併のターゲットである。 (p.232)
 日本人が汗水たらして貯めたお金がアメリカ人の好き勝手にされ、挙句の果てに日本を代表する大企業までアメリカに買収される。これを屈辱と感じる人がいるかもしれないが悪いことばかりではない。
 日本人は物づくりは得意だが、ファイナンス=金融は苦手である。・・・物づくりで貯めた豊富な資金は、辣腕ポールソン財務長官が率いるウォール街の専門家達に運用してもらえばいいのである。
 これにより日本人は安心して物づくりとアジアの平和的発展に貢献できる。(p.234)


 増田さんがこう書いている裏の理由というか本当の理由が、この書籍のタイトルである。

 新日鉄は韓国のボスコ、中国の宝山など、設立当初から技術丸投げで提携関係を進めてきている。最近ではタイにもボスコと共同出資の製鉄所を作っているし、トヨタ車の車体鋼板作成技術に絡んでヨーロッパにも進出している。
 新日鉄は、朝鮮戦争で疲弊した韓国の国情を憂え、技術料なしで浦項総合製鉄所(現:ボスコ)を建設した。中国の宝山製鉄所に対しても、あまりにも杜撰な経営状況に再三再四の忍耐をしつつ、戦後半世紀にわたって協力を惜しまなかったはずである。新日鉄こそ、戦後アジア近隣諸国の復興と平和発展に貢献してきた代表的な企業である。その新日鉄が、アメリカに買収されて、こんどはアメリカの衰退を救うことになるというのか。
 新日鉄が、これほど国際貢献してきたのに、韓国・中国には、戦後60年間、「反日」 一色で報いられても、誰一人事挙げしなかったお人よしの日本人だから、「今度はアメリカ? それもいいんじゃない」 というのだろうか・・・・。
 いずれにせよ、新日鉄が三角合併に関ってどうなるのかは、これからの世界経済全体がどのようになってゆくかを判断する重要な判断材料になりそうである。


【温家宝首相】
 現在日本を訪れている温家宝首相。今のところに日中関係改善に向かっているようであるが、既に中国経済は、1997年段階の韓国と同様に、アメリカによってどのようにでも料理されうる状態なのである。中国が唯一生き残れる方法は、アメリカを介して日本の経済力を取り込むのではなく、直接日本の経済力・技術力の恩恵にあずかる以外にないはずである。
 マスコミは「温家宝首相 国会で初演説 歴史認識 姿勢を評価」、などと書いているが、現実の日中の力関係の本質をはずしたヘッドラインである。日本の政治家は、半歩たりとも下手に出る必要はない。
 自国のみならず東アジア全体の繁栄をぶち壊す爆弾因子は、中国の傲慢だけである。温家宝首相が名前のとおり、温かさを家宝とした人士であり、温かな日中関係を築けなければ、北京オリンピックないし上海万博後に中国はアメリカによって崩壊させられるのを待つだけである。自国のみならず東アジア全体の繁栄のために中国が良識を保てるならば、日本はいくらでも協力するはずである。

 

 

<了>