「史上最強」VS「初心者」。第4節。VSオリンピア。ホーム。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

「史上最強」VS「初心者」。第4節。VSオリンピア。ホーム。



脱走の続きです。



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSオリンピア。2013年8月24日(日)②



 無事に
不衛生度MAX・プライバシー0(ゼロ)・サソリも出る最強最低クラブハウス」からの【脱走】を果たして迎えた、リーグ第4節…。「開幕から地獄のアウェー3連戦」という、1部昇格元年の我々には過酷過ぎる日程をどうにか「1勝2敗」で乗り切り、この日、ついに初めて「ホーム」で戦います。…が、相手はよりによって、前人未到の「リーグ4連覇」中の、「ホンジュラスリーグ史上最強チーム」オリンピア。この日のスタメンには昨年のロンドン五輪でホンジュラスを「ベスト8」に導いた2選手…スペインの強豪バレンシアからオリンピアに復帰した若干20歳のFWアントニー・ロサーノと、セルビアの名門レッドスター・ベオグラードから復帰したMFルイス・ガリドが名を連ねました。その他のポジションにも現役ホンジュラス代表選手がズラリ…。どう考えても、ホームとは言え簡単に勝てる相手ではありません。

 「20年ぶり」にプリメラ・ディビシオン(1部リーグ)の試合がテラ(パリーヤス・オネのホームタウン)で行われる、しかも国内最大のビッグクラブ・オリンピアが相手…という事で、空前の盛り上がりを見せるスタジアムとテラの街…。勝ってサポーターを喜ばせたい…。※20年前まで、テラには別の1部リーグのチームがあったそうです。それ以来この試合まで20年間、一度も1部リーグの試合は行われていませんでした。

 現在、2連敗中の我々パリーヤス・オネ。3試合で7失点はリーグワースト2位…。GKとGKコーチである自分に対する風当たりは凄まじく、チーム幹部からも「Yoji不要論」が出るなど、僕の立場は完全に崖っぷちに追い込まれました。もし、この日のオリンピア戦でもGKが良いプレーをできなくて敗れるような事があれば…もう、チームに居られなくなる可能性も…。


 正に、崖っぷち…。勝たないと、本当にヤバイ事になる…。


 自分の「存在価値」を証明するためにも、勝利以外は許されない…。


 神様、頼む。勝たせてくれ…。



 果たして、結果は…?




※黄色がパリーヤス・オネです。





 パリーヤス・オネ、「0-1」でオリンピアに惜敗…。


 これで泥沼の「3連敗」…。ついに順位も「最下位」に転落しました…。



【第4節を終えてのホンジュラスリーグ順位表】

1位:レアル・ソシエダ     勝ち点10  得失点差+7
2位:レアル・エスパーニャ  勝ち点9   得失点差+4 
3位:オリンピア        勝ち点7   得失点差+4
4位:デポルテス・サビオ   勝ち点6   得失点差-4
5位:モタグア         勝ち点5   得失点差+1
6位:マラトン          勝ち点5   得失点差-1
7位:プラテンセ        勝ち点5   得失点差-1
8位:ビダ            勝ち点3   得失点差-3
9位:ヴィクトリア        勝ち点3   得失点差-3
10位:パリーヤス・オネ 勝ち点3 得失点差-3



 第4節にして「今季初めてのホーム」での試合を勝利で飾る事はできませんでした…。上の試合動画を見てもらえれば分かりますが、チャンスの数自体は我々パリーヤス・オネが上回っていました。少なくとも2、3点は取れるチャンスがあったのに、その全てを生かせず…。特に動画「0:54」のゴールまで3mのヘディングシュート(しかもフリー)と「1:10」のゴールまで5mの右足シュートは「超」が付くほどの決定機であり、絶対に決めなければならなかった…。あれを決めれないと正直キツイし、勝つのは難しい…。

 チームとしてやっているサッカーは決して間違ってないし、監督の標榜するサッカーをどの試合も体現できています。ところが、上記したようにチャンスは作っても決められない、良い試合をしててもちょっとしたミスが出て失点する…という「ほんの僅かな差」で敗れてしまう。例えば今回のオリンピア戦で言えば、前述した我々が外した「ゴールまで3mのヘディングシュート」と、オリンピアの「決勝点となったヘディングシュート」は、角度もゴールまでの距離も似ていますが、我々は外し、相手はしっかりと決めた(ちなみに決めたのは、前述したバレンシアから復帰のFWアントニー・ロサーノ)…その「差」で勝敗が分かれました。本当に紙一重のところ。
しかしその「ほんの僅かな差」が実は「大きな差」であり、「『史上最強』と『初心者』」「『これまで1部リーグで戦ってきたチーム』と『初めて1部リーグで戦うチーム』」のなのかもしれません…。

 2試合連続で先発出場したGKマリオは前節よりも格段にプレーが良くなり、持ち味の瞬発力でオリンピアの決定機を何度も防ぐなど成長を見せましたが、失点シーンで「クロスに対して前に飛び出せなかった」とまたも批判の嵐にさらされ、それを指導しているGKコーチである自分も「お前のせいだ!」と批判の嵐にさらされました。負ければ全て「GK」と「GKコーチ」の責任だと言うのか?あの失点シーンに関しては、決して「100%GKが前に出れる」といった状況ではなく、それ以前に3人もの相手選手をフリーにするなど「チーム」としてのミスが出ての失点であり、GKだけに責任を擦り付けるのはあまりに不当。批判する者に対して反論したい気持ちは当然ありましたが、結果が出てないのでグッと我慢。とにかく「結果」を出してGKと自分の力を証明し、見返すしかありません。

 またこの試合では、前節で2連敗して腹を立てた会長が、通常はある「試合当日の朝食と昼食」をカット。これでは意識が低くお金もないパリーヤス・オネの選手たちの中には、カップラーメンやロクでもない食事を取って試合に臨んでくる者も出てくる訳で(しかも住んでいるのはあの「最強最低クラブハウス」)、アウェーとは言え最高級ホテルに宿泊し、栄養たっぷりの最高の食事を取って試合に臨んでくるオリンピアとは対照的…。試合前に、すでに勝負はついていたのかもしれません。勝てないから食事が無くなり、そして、さらに勝てなくなる…。正に、悪循環…。

 これまでチームの書類手続きの遅れで開幕から3試合に出場する事ができなかった例のレギュラーの3選手は、やっとこのオリンピア戦から出場する事ができました。3選手ともに高い能力を発揮し、チームの力を明らかに底上げしました。だからこそ、チームのズサンな書類手続きの遅れで出場できなかった開幕からの3試合が大いに悔やまれます。もし出場できていれば、結果は違ったものになっていたかもしれません。しかもその書類手続きというのが決して難しい手続きだった訳ではなく、ただ単にチームが「やるのが面倒だから」という理由で1ヶ月以上も何もせず放ったらかしにされ、たまりかねた当事者であるレギュラーの選手が自ら首都のサッカー協会にバスで往復12時間以上かけて行ってその書類作業を行うと、僅か「3日間」でその書類作業は完了したという…。あまりに馬鹿げた話。一体、チームに放置されて出場できなかった「1ヶ月間」は何だったのか?本気で勝つ気はあるのか!?ここまでズサンなチームは、本当、ホンジュラスの2部リーグでもなかなかありません。


 「3連敗」は、2011年のアルビレックス新潟シンガポールGKコーチ兼選手2年目以来、「2年ぶり」…。チームの雰囲気も決して良くはなく、「どうすれば勝てるのか?」本当に分からなくなりそうです…。


 しかも次の相手が、現在リーグ「単独首位」で4節を終えて全10チーム中「唯一の無敗」と最も波に乗っている、「最強」の古巣・レアル・ソシエダ。しかも、「アウェー戦」。レアル・ソシエダは今節、モタグアと引き分けて開幕からの連勝は「3」でストップしましたが、「4大ビッグクラブ」の1つモタグア相手にアウェーで「0-3」と3点リードを奪われるも、そこから不屈の精神で3点取り返して「3-3」の引き分けに持ち込みました。凄すぎる…。得点は「リーグ最多」で失点は「リーグ最少」。現在ホンジュラスで「最も強いチーム」。攻守ともに隙は全くありません。



 「首位レアル・ソシエダ」VS「最下位パリーヤス・オネ」


 「最高のチーム状態にあるレアル・ソシエダ」VS「最低のチーム状態にあるパリーヤス・オネ」



 昨季まで共に仲間として戦ったチームだけに、彼らに勝つのがいかに難しいか、誰よりも分かる…。が、「古巣」相手に、絶対に負けたくない。いや、負けると自分のクビが飛ぶ…。


 果たして、「運命の一戦」の行方は…?



「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -VSオリンピア。2013年8月24日(日)③



つづく


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