冒頭のタイトルは芸能界で高田文夫が島田洋七に向けた言葉である。
そうした意味でもとは芸能界の人間の間の話であるが、実はこの言葉はスポーツ界にも当てはまる。それを紹介したい。
筆者は昔からボクシングを見ていたが、タイ人の東洋王者にウェンペット・チュワタナという選手がいた。
ファイトスタイルは「左殺し」。とにかくサウスポーに有効ないきなりの右ストレートの連射が巧みで、国内の東洋タイトルの覇権を争った選手である。
しかし、そうしたウェンペットもこう言ってはなんだが、東洋レベルの選手というか、世界戦線に打って出るには少々役不足な感もあった。
その一方でウェンペットと同じ階級では、彼の同期が並のタイ人には手に入らないようなファイトマネーで世界挑戦をする選手もいた。
華々しい活躍がいる同期がいる一方で、ウェンペットは東洋タイトルやノンタイトルの試合を日本各地の小さな会場でコツコツ戦い、ファイトマネーを貯金した。
そんなウェンペットの世代も引退を考える時期が出てきた。
世界戦線で戦い大金を手にした選手は、お金の価値が分からず、酒や女に散財し無一文。
仕方なくボロボロになった身体にムチ打って噛ませ犬になる元世界王者もたくさんいた。
一方でウェンペットは東洋王者としてファイトマネーに限りがあったものの、その少ないファイトマネーを堅実に貯金。
そうして貯めたお金で洋服の裁縫工場を建てる。
結果的に世界王者でセカンドキャリアに失敗した選手よりも、東洋王者のウェンペットの第二の人生は順調になった。
まさに「芸は達者なほど生き方は下手くそ」という世界王者は多いが、芸(強さ)では劣るウェンペットの方が生き方は達者だった。
②でもこのことを考えていきたい。