冒頭のタイトルは、古代中国で商人から秦王朝の宰相に成り上がった呂不韋(りょふい)の言葉である。
言葉の意味は「掘り出しものを(自分は)見出した。これは周囲には価値のないものに思われるが、実はある。手元に置こう」という意味だ。
商人である呂不韋が、落ちぶれ貴族である子楚(しそ)の出自を見出し、彼を秦王朝へ売り込みに成功し、宰相として巨万の富を得た、という話が史記にはある。
そんな中国史の話から来た、今回の「スポーツの現金化」。
こうした一見すると何の価値もない者に存在意義を見出し利益を出すというのは、全ての商いにとって基本中の基本だ。
そうした中で筆者のブログはスポーツビジネスのブログである。
今回は冒頭の呂不韋のような特殊な商品価値を見出した男について紹介したい。
今回のテーマはボクシング。タイのプロボクシングの世界というのは1990年代以降、特殊な世界へと変貌を遂げていった。
それまで世界→東洋→タイ国内タイトル、と言った整然としたヒエラルキーが存在していた。
それがタイや韓国のプロモーター(試合の主催者)が手を組んで、東洋とは別の新たなアジア系団体を旗揚げ。
しかも悪いことにWBAという老舗団体がこうした新設団体を認めてしまった。
かくして「悪貨は良貨を駆逐する」ではないが、そうした金とコネにモノを言わせたアジア系団体がボクシング界におけるタイや諸外国のパワーバランスを破壊して、既存の東洋やタイ国内タイトルの権威を失墜させた。
そうしてとばっちりを食ったかつてのタイトル。今やタイ国内で影響力がある団体というのは古い団体ではなく、新設団体の方だ。
そして、後者の団体のタイトルを得られなければタイ人は世界タイトルには進めなくなった。
しかし、そんな何の権威もない古株のタイ国内タイトルを、秦の子楚を掘り出しだ呂不韋のように価値あるモノに変えた、ある種の錬金術師のようなタイ人がいた。
その男のことを②で紹介する。