「午前十時の映画祭14」となり、見逃している作品を鑑賞。
今回は「ヴェンダースの宇宙」と題した2作品。
天使の世界をモノクロ、人間の世界をカラーで表現した壮大な映像詩。
ヴィム・ヴェンダース監督の、1987年の作品。
映画「ベルリン・天使の詩」
ベルリンの街を見守る天使のダミエルには、人々の心の声が届く。
彼は様々な人々の嘆きを聞いては、その苦悩に寄り添っている。
ほとんどの人が絶望に暮れ、日々の愚痴をこぼし疲弊している。
多くの人々の人生が垣間見えて交錯し、群像劇のようでもある。
次第に、過去の戦争による惨状や、分断された現状が分かる。
悲劇の街ベルリンを映し出し、ある意味反戦映画だと思った。
苦悩を深める中、見えない存在があんな風に寄り添ってくれたら。
救いを求める人には夢とロマンがあり、希望が見えるファンタジー。
ある日ダミエルは、孤独を抱えた美しい女性マリオンを見初める。
華麗に空中ブランコで舞う姿がお見事で、美しくて魅力的だった。
だが、サーカスの一座は解散が決まり、次が最後の公演となる。
マリオンに恋したダミエルは、彼女に近付きそっと触れる。
やがてダミエルは天界から、人間の世界に降りることを決意。
そんな彼に、俳優ピーター・フォークがしきりに語りかける。
撮影のためベルリンを訪れていた彼は、コロンボ役で人気者。
穏やかで優しい人柄がにじみ出ていて、ホッコリさせる。
幻想に現実がそのまま盛り込まれているのも、ユニークで斬新。
彼もかつては天使だったと分かり、実は多くいるのだという。
元天使が人間界に多く紛れているなんて、愉快で夢がある。
そしてついにダミエルは、人間となってベルリンに降り立つ。
天使の世界はモノクロだが、人間の世界はカラーとなり広がる。
血の鮮やかな赤や、壁のカラフルな絵を見て無邪気に喜び興奮する。
死なない天使から死ぬ人間になり、逆に生を得たようだった。
初めて知る寒さなど、彼は多くの気付きを得て変化を見せる。
天使と俗世間に生きる人間、どちらが幸せだろう、と思った。
そしてライブ・ハウスでマリオンと会い、会話を交わすのだが。
互いに運命の人だと思ったのか、あまりに唐突で驚いた。
双方が語る内容も詩的で、芸術的で高尚だが難解に感じた。
ほとんど天使目線のモノクロで、呟きが多くて途中は退屈。
戦争の傷跡が残るベルリンを舞台にした、メッセージ性もある。
悩める現代人を導いてくれる存在は、夢があり感動的だと思う。
だが面白いという類の娯楽作ではなく、あまり楽しめなかった。