皆さま
「魂を視る畳職人【和】の物語」です。
前回の物語はこちらからお読みください。
https://ameblo.jp/chamamitsu0523/entry-12751556111.html
それでは、その続きを書いていきますね。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「魂を視る畳職人【和】の物語」
~こんな形で願いが叶うとは思わなかった②~
左眼が見えない畳職人の和(なごみ)ですが、
ひょんなことから今までに無い新しい畳を
作ることになったのです。
和は、いつも以上にワクワクと
していました。
「新しい畳を作る」その言葉だけでも、
和みの胸は躍るのです。
しかし、なぜだか、いつもは直感で
こんな畳を作ろうと決められるのですが、
今回ばかしは、どうしてもイメージが
湧いてきませんでした。
ならばと、和は、依頼者の初老の男性に
会いに行き、左眼で魂を視ることにしたのです。
そこで、視えたもの
「お主の願いが叶うじゃろう、ひょひょひょ」
そんなメッセージだけでした。
さすがの和も、ここで、アイデアが
出てこずに、困り果てていたのです。
さすがに、このままでは作れないので、
初老の男性に断ろうかとも思いました。
でも、「お主の願いが叶う?」その初老の男性の
魂を視たときのメッセージが気になって
仕方がなかったのです。
「もう一度、アイデアを出してみよう」
和は、ちゃぶ台に向かって、アイデアを
絞り出すことにしました。
和は、久しぶりに大集中することに
なったのです。
周囲の音も声も聞こえないほどでした。
同僚の職人たちが、帰宅していったことも
気がつかずにいたのです。
そうして、ひとつのアイデアが
ちゃぶ台の上で形になろうとしていました。
その時でした、ひとつの足音が聞こえて
くるのです。
和にとって、とても懐かしい音でも
ありました。
「変わってないな」そんなことを
なぜだか和も感じています。
すると、右肩に後ろから手を置かれた
感覚がありました。
和は、驚きよりも懐かしさが勝って、
振り返ります。
そこには、ひとりの男性が立って
いました。
和は、なぜだか時が止まったような
感覚で、その男性を見つめています。
「久しぶりだな、和」
声を聞いた瞬間、和の中で、いろいろなことが
繋がっていった感覚になりました。
懐かしくて、安心感があって、
ずっと会いたくて、心底会いたくて
仲良くて、大好きで、自分自身みたいで・・・
和の後ろに立っていたのは、小学生の頃
離ればなれになった従兄弟の洋だったのです。
海外生活が長かった洋の風貌は随分と
変わっていました。
でも、和は、洋と目が合い、その瞳の奥が
見えたとき、洋だと確信が生まれていたのです。
「よ、洋!どうしたんだ!いったい!」
和はやっと驚くことができました。
あれから二十年ほどが経ったでしょうか。
和は、洋と自分の勤める畳屋さんで、
再会を果たすのです。
和は、うれしくてうれしくて、
涙を流すことしかできませんでした。
ずっと張り詰めていた何かが
決壊したかのように。