皆さま
「魂を視る畳職人【和】の物語」です。
前回の物語は、こちらからお読み
いただけます。
【自己紹介】
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「魂を視る畳職人【和】の物語」
~ひとりではないと確信する瞬間~
左眼の見えない畳職人の和(なごみ)、
右眼だけを駆使して畳を編み込んでゆきます。
ずっと、孤独感を感じていた和、それは
畳職人になってからも続いていました。
「自分が孤独なのは、左眼が見えないからだ」
和は、そうずっと信じてきたのです。
だから、大人になってもそのことは、
続いていました。
和が唯一孤独から離れられるとき、
それが、畳を制作しているときです。
そのときばかりは、無心になって集中して、
孤独であることなど思い出さなくなります。
そんなある日、いつものように畳を制作していると、
どんどんと集中していきました。
その日は、いつもより深いところまで集中
できているように、和も感じています。
集中しきったとき、和の中にどこからか
声が聞こえてくるような気がしました。
「あなたは、決してひとりではりません」
「あなたが感じている孤独は、
本当の孤独ではありません」
「ひとりではないと気がつくための孤独です」
「私たちの存在に気がつくための孤独です」
「ずっと、観てきましたよ」
「あなたが、悔しくてそっと涙する日も」
「痛くて痛くて仕方がないのに、我慢している姿も」
「本当は悲しくて仕方がないのに、涙をこらえる姿も」
「抱きしめて欲しいのに、孤独を選ぶ姿も」
「ずっと観てきました」
「誰よりも観てきました」
「でも、もうあなたはたくさん頑張ってきた」
「だから、もう自分を許してあげてください」
「もう、孤独と戦うことなんてありません」
「だって、こんなにもたくさんの存在がいるのだから」
「あなたが、本当に孤独だったら、ここまで」
「生きることだってできません」
「ずっと、一緒に歩んできたのです」
「これは、本当のことです」
「これだけは、忘れないでください」
「私たちは、これからもずっとあなたと」
「歩んでいきます」
和は、こみ上げる、何かで目の前が
ぼやけて見えていました。