映画「コーポ・ア・コーポ」(DVD)…このゆるさは好きなテイスト. | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:97分

 



昨年冬の公開時はその存在も知らなかった作品.レンタル屋の新作棚で発見.
本年度累積149本目に観たのは、関西発のゆる〜い人間ドラマ.
なにかアパートものが続くね.
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コミックサイト「COMIC MeDu」連載の岩浪れんじによる漫画「コーポ・ア・コーポ」
を実写映画化し、安アパートの訳あり住人たちと彼らを取り巻く人間模様を
つづった群像劇.

大阪の下町にある安アパート「コーポ」には、家族のしがらみから逃げてきた
フリーターの辰巳ユリ、複雑な過去を背負い女性に貢がせて生計を立てている
中条紘、女性への愛情表現が不器用な日雇い労働者の石田鉄平、人当たり
は良いが部屋で怪しげな商売を営んでいる初老の宮地友三ら、さまざまな
事情を抱える人たちが暮らしている.

ある日、同じくコーポの住人である山口が首を吊って死んでいるのを宮地が
発見する.似たような境遇で暮らす人間の死を目の当たりにした住人たちは、
それぞれの人生を思い返していく.

主人公ユリを馬場ふみか、中条を東出昌大、石田を倉悠貴、宮地を
笹野高史が演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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本作を選んだ理由は、脇に東出昌大が出てるから.どんな演技を見せるのか
気になったのだ.風呂無しトイレ共同のアパートに住む人たち、それぞれの
人生にスポットがあたり、過去を振り返りながらも今を生きていく群像劇.

冒頭の住人のいきなりの首吊り自殺から始まるのはパンチが効いて、つかみは
十分.この伏線が最後に或る結末も描いてあって好ましい.でもそこから何か
大きな事件が起こるでもなく、淡々と各々の日常が進んでいく.
それが観ていて、なにか心地好い.大阪という地の利もあるかもしれない.

住人それぞれも一癖も二癖もありそうだけど、別に悪人では無い.
何処かいろんな過去に少し振り回されてここにきてはいるがそれに特に
悲観も達観もしていない.なんとなく淡々と的に日常を受け入れている.
その緩さとなんとなくの温かさに小ネタとテンポの良いセリフが効いている.
 

 

馬場ふみかのヤサグレ感というか、めっちゃ脱力した感じがすごく良くて
彼女が軸になって話しは回っていく.彼女の共生者はなにも演技しない猫.
ねこじゃらしで遊ぶ様か抱かれているだけの猫.これが猫の本来の姿であろう.
 

 

ヒロインユリ:馬場ふみかは家族の鬱積した問題から逃れて“コーポ”に
逃げ込んでひっそり暮らしている.入院してしまった祖母を見舞いに行った先
で母親:片岡礼子と遭遇してしまう.

ピンタを喰らわすは、自分の娘を脅すはで、怖い鬼母を演ずる.バーのマダム
を生業にしているようで、身なりはけばい…(汗).その後も顔を見に行ったユリ
を喫茶店で待てと指示したが、休店していたのを見ると、シャッターを殴るは、
蹴るはの大狂乱.これじゃユリも逃げ出すよね…と納得.

さて、東出昌大は得体の知れないダンディ、いつもピシッとしたスーツに白シャツ、
ネクタイは毎度赤とか青とか替わっている.ひまをみると靴を磨いていたりする.
いわゆる“すけこまし”のようで、いろんな女に貢がせている模様.
1シーンだが、一緒に酒を飲み、金を巻き上げて、そのままキス一つで、
タクシーに乗せて返してしまうシーンが.やらずぼったくりなんだね(笑).



長身、ハンサム、似合うスーツ姿、されどさびれたアパートで淡々と暮らす姿.
プライベートのやらかしと類似している役をやっている様な気もするが、暗くは
なく、抜けた明るさを感じさせる演技で好印象.最近の東出昌大の演技は幅が
広がっている気がする.

笹野高史の飄々とした演技や、倉悠貴の苛立ちとか、不器用な恋愛模様は
すごく人間っぽくてそして力が抜けていて好印象.笹野高史は“コーポ”の
一室を使っていわゆる“覗き部屋”を運営して稼いでいる.その覗かれ役が
白川和子だったりするのが秀逸なキャスティング.

時間はさほど長くないため、人物描写には粗いと感じる部分もある.
結局どういう人物なのか、どんな過去があったのか、掘り下げようと思えば
まだまだいくらでも出来るのであろう. でもこの寸止めが気持ち良いのだ.

この全てが分からないもどかしさが、所詮他人の住人の関係性っぽくて、
ちょうどよいドラマ性を楽しめると感じた.対象をそれほど知らないから、
干渉しないからこそ居心地がいいんだろうなと思ったりもした.

味付けに出てくる、アパートの住民でタバコを交換したがるおばちゃんの
脱線感が面白い.役者名は藤原しおりなのだが、あのブルゾンちえみだった
のを知ってビックリした.ここにも意外なキャスティング.の妙が.

上映時間の97分も観やすくて良い.群像劇ではあるけど固くはないし、
テーマが有るようで無い感じなのが心地好い.
好みが分かれるかと思うが、個人的には好きなテイストの作品.