映画「ソウルメイト」…韓国映画らしくない味わいがある. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:Soulmate  製作年:2023年
製作国:韓国  上映時間:124分


予告で気になっていた作品.2番館でようやくキネマ旬報シアターにやってきた.
本年度累積92本目の観賞は韓国製の人間ドラマ.
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香港のデレク・ツァン監督が手がけた「ソウルメイト 七月と安生」を、韓国・
済州島に舞台を移して新たに映画化.幼い頃からの無二の親友だった2人
の少女のすれ違いや絆を、切なくも温かく描いた友情の物語.

絵を勉強しながら世界中を旅したいという夢を抱く自由人のミソ.
そんな彼女に憧れを抱きながらも堅実に生きることを願うハウン.
性格も価値観も真逆な2人の幼なじみは、楽しい時もさみしい時もずっと
一緒だった.

そんな日々がずっと続くと思われたが、ある出会いをきっかけに2人の関係は
急激に変化していく.互いのことを思い合いながらもすれ違い、やがて疎遠に
なって16年が過ぎたある日、ハウンはミソにある秘密を残し、こつ然と姿を
消してしまう.

ミソ役は大ヒットドラマ「梨泰院クラス」や映画「The Witch 魔女」で知られる
キム・ダミ、ハウン役はドラマ「ボーイフレンド」のチョン・ソニ.
2人の関係に深く関わることになる青年ジヌを「力の強い女 カン・ナムスン」
などのドラマで活躍するピョン・ウソクが演じた.

以上は《映画.COM》から転載.
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あまり韓国映画を感じさせないのは、香港映画の「ソウルメイト 七月と安生」が
基調だからだろうか.しっとりと湿度を感じさせる出来上がりの作品だ.

性格も育ってきた環境もまるで異なるふたりの少女、ミソ:キム・ダミとハウン:
チョン・ソニ.本作は彼女たちが大人になるまでの道程を切々と綴っていく
絆の記録でもあり、大人になってからの別れを描いた記録でもある.
 

 

時に笑い、時に泣き、恋の悩みを共有したり、才能を認め合ったり、かと思えば
激しく衝突したり.一人の男性を巡って両者の思いが揺れ動く展開では、このまま
メロドラマモードに突入するかといささか不安にも思ったが、しかし本作は中盤
から各々の人生をかけた決断があり、またその後の展開も含めて、題名の如く
“ソウル・メイト”としての意味合いが響きと輝きをより増していく.
 

 

いなくなるミソと、置いていかれるハウンだったが、途中からミソとハウンの役割が
逆転していく.お腹に子供がいながらジヌとの結婚式の真っ最中に逃げたが、
ミソのようなたくましさと自己責任が身についた筋金入りの自由人とちがって
上手くいかず、切羽詰まってミソに助けを求める.

赤ちゃんをミソに託して一人で旅に出るって意味がわからない、と思っていたら、
旅に出たのはミソの空想の世界の中の話しで、実は産んですぐ亡くなっていた.
けっきょくミソはハウンの娘を独りで育てていく….

ミソは幼い頃から絵が上手で、ハウンは教師をしている頃に画に目覚めて、
絵画学校に通い始めた.ハウンはソウルの丘の上の家でミソの顔の超精密画
を描こうとしていた.ハウンが死んだ後、その家を訪ねたミソが描きかけの
その画を見て息を飲む…. そしてミソはその画に手をいれて完成させていく.

親でもなく、兄弟でもない.親友という言葉でもまだ足りない.ソウルメイト

たる二人は、互いをいちばん深く知る存在で、愛憎の感情もすべて込みで、
遠く離れていても堅く結び付き合っている.

絵画という手段を通じ、言葉では言い表せないものが形となって
昇華されていく過程に、心打たれた.

演技するわけではないが、猫の存在が大変いい仕事をしていた.
最初に二人が道端で拾うところから始まり、二人の成長に寄り添うように、
傍らにさり気なく、いつもいるところが映される.子猫が成長し、若猫、成猫、老猫
になり、最後に指定席の座布団が焼かれたところで、その猫が旅立ったところ
まで描かれ、二人の人生の交わりも終わるのを表していて上手いなぁと感心.

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