中性脂肪は認知症のリスクをさげる? | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….

 


健康Web記事を時々覗いているのだが、たまにとんでも無い記事が出てたりする.
今回はえ〜っ!と言いたくなるデータを見つけたので転載してみる.

副長も循環器定期検診の度に中性脂肪高めの指摘を受けて、その低減化に
頑張って?いるのだが、老年期に於いては中性脂肪高めが認知症リスクを低下
させるという、夢のような?データー検証結果.

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中性脂肪は生活習慣病のリスクの一因とされていますが、ある一定の人にとって
認知症の予防効果があるかもしれないというデータ分析があります.

今回ご紹介するのは、Neurology誌に2023年10月25日付で掲載された、
血液中の中性脂肪と認知症との関連についての論文です.

中性脂肪の高値は様々な疾患のリスク増加につながるコレステロールや
中性脂肪などの血液中の脂質が高いことが、血管の動脈硬化を進行させる
要因となり、心筋梗塞などの病気の再発リスクが、コレステロールを低下
させる治療により低減することは、多くの臨床データにより確認された事実です.

認知症の多くも動脈硬化の進行と関連があり、その意味ではコレステロールや
中性脂肪などの脂質が低い方が、そのリスクの低下にも繋がると想定されます.

ところが…実際には高齢者のコレステロールのレベルと認知症リスクとは、
明確な関係はないとする報告(※2)や、むしろ血液中のコレステロールは
高めである方が、認知症のリスクは低いとする報告(※3)などがあります.

これは中年くらいまでの時期の高コレステロール血症は、動脈硬化を進行
させてその後の認知症のリスクになるものの、高齢者の高コレステロール血症は、
むしろ認知症に予防的に働く可能性を示唆している、と考えることが出来ます.

中性脂肪に関しても、その高値は動脈硬化の進行に繋がる可能性がありますが、
血液中の中性脂肪濃度と認知症リスクとの関連は、それほど明確なことが
分かっていません.

認知症・心血管疾患の既往歴がない人のデータでを分析

そこで今回の研究では、アスピリンの有効性を検証した臨床研究より、
登録の時点で65歳以上で、認知症や心血管疾患の既往のない、18294名
の臨床データと、遺伝情報を含む大規模な医療データを有している、
UKバイオバンクのデータより、68200名の臨床データを活用することで、
血液中の中性脂肪の濃度と、その後の認知症のリスクとの関連を比較検証
しています.

その結果、アスピリンの臨床研究のデータ解析では、血液中の中性脂肪が
高いほど、認知症リスクは低いという相関が認められ、中性脂肪値が倍になると、
リスクは18%(95%CI:0.72から0.94)有意に低下していました.

そして、UKバイオバンクデータ解析でも、矢張り同様の相関が認められました.
つまり、コレステロールと同様に中性脂肪においても、高齢になった段階では、
その数値が高いほど、認知症のリスクは低いという結果です.

ただ、今回のデータでは、中性脂肪の数値はその90%は186mg/dL以下で、
一般に問題となる200を超えるような中性脂肪高値の人は、全体の極少数に
留まっています.

従って、中性脂肪が高ければ高いほど良い、ということではなく、正常値か
それより少し高めの方が、高齢になった時には認知症の予後にも良い、
というくらいで考えるのが妥当だと思います.

程よく保つことが認知症予防になる可能性

コレステロールも中性脂肪も、脂質のレベルは中年期まではしっかり下げる
ことが、将来的な病気の予防に繋がるのですが、65歳くらいの年齢以降に
おいては、むしろ栄養状態を良く保ち、脂質も減らし過ぎない方が、トータルな
予後の改善に繋がると、そう考えるのが良いように思います.

ただ、勿論これは心筋梗塞や脳卒中の既往はない人の話で、そうした病気の
既往のある場合には、また別個の判断が必要となる点は、最後に強調して
おきたいと思います.
 
記事情報
引用・参考文献
※1 Association Between Triglycerides and Risk of Dementia in
 Community-Dwelling Older Adults
※2 Serum cholesterol and risk of Alzheimer disease: a community-
based cohort study
※3 Serum cholesterol and cognitive performance in the
Framingham Heart Study

著者/監修医プロフィール
石原藤樹(いしはら・ふじき)先生 


1963年東京都渋谷区生まれ.信州大学医学部医学科、大学院卒業.医学博士.
研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器
を主に研修.信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、
小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に
従事.2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、
院長に就任.
著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と
臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある.
略歴 
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/
医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/
認知症サポート医