製作年:2023年 製作国:日本 上映時間:123分
昨夏公開時は広瀬すずが鼻についていたので意識的にスルーした作品.
レンタルDVDなら観ても良いかの気分に.本年度累積44本目は、
なんともジャンル分けしがたい作品.
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田島列島の同名コミックを、広瀬すず主演、「そして、バトンは渡された」の
前田哲監督のメガホンで実写映画化.
高校に入学した直達は、通学のため叔父・茂道の家に居候することに.
しかし最寄り駅に迎えに来たのは、見知らぬ女性・榊さんだった.
しかも案内されたのはシェアハウスで、会社員の榊さん、親に内緒で会社
を辞めマンガ家になっていた叔父の茂道、女装の占い師・颯、海外を放浪
する大学教授・成瀬ら、くせ者ぞろいの住人たちとの共同生活が始まる.
いつも不機嫌そうだが気まぐれに美味しいご飯を振る舞ってくれる榊さん
にいつしか淡い思いを抱くようになる直達だったが、彼と榊さんの間には
思わぬ過去の因縁があった.
広瀬すずが榊さん役で主演を務め、「キングダム」の大西利空が直達、
「横道世之介」の高良健吾が茂道、アニメ映画「かがみの孤城」で主人公
の声を担当した當真あみが直達の同級生で颯の妹の楓を演じる.
以上は《映画.COM》から転載.
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叔父の家に住むことになった直達:大西利空.叔父茂道:高良健吾は
シェアハウスで暮らしていた.そのシェアハウスに住んでいた榊:広瀬すず.
榊は無愛想で、直達の父:北村有起哉と面識があり、過去に秘密があった.
過去にあった出来事のせいで榊は心を閉ざしていた.
直達は榊の過去のことを知り、けじめをつけようとして一緒に行動して
いくという内容. とにもかくにもヒロイン広瀬すずは終始不機嫌な表情しか
見せない.難しい役柄とは思うが、なにかパッとしない印象.
昨年の岩井俊二の「キリエ」でも酷い演技だった.その後撮影スタッフへの
見下した暴言が拡散されて、SNSでも叩かれまくっている広瀬すず.
年齢的にも20代後半になり、女優としても難しい時期に来ているのかも.
10年前に自己中な母親に捨てられた怨みから、ふてくされ人生を歩んで
いる.もう一生恋をしないとか宣言しては不機嫌さを周囲にまき散らしている.
昔の出来事にとらわれていて、苦しんでいるのはとてもつらいこと.
それだけ、その人にとっては大切な出来事だったとは理解はする.
相手に対してずっと怒りを維持することはそれだけ相手に対してなんらかの
繋がりが欲しいかなとも取れ、直達は榊の母親へ遭うことを薦めてみるが….
やはり、その母親:坂井真紀のくされっぷりは尋常ではなく、相変わらず自己中、
自己保身の気持ちしか見えず、榊をますます奈落の底へ突き落とすものだった.
自分だけの世界から、自分とは違う他人が存在することを知り、自分の思いとは
無関係に動いていく現実を受け入れ折り合いをつけていくことが、成長するという事.
或る意味では、堕落していくのも成長なのかもしれないのだが.
今どきは、自分が未熟であることに気付かず、成熟することをダサいと思っている
ふしもある.そんな風合いをヒロイン広瀬すずは演じてみせる.
それでも、怒っている広瀬すずは魅力的ではあった.芯の強い女性、あの強さは
広瀬すずでなくてはなかなか難しいかったかもしれない.ツンとした横顔のアップ
は目に焼き付くほど美しかった.
蛇足だが、不機嫌な気持ちの発露に手荒な料理に広瀬すずが手を付けるのが
面白いと感じた. 最初は出逢ったばかりの直達に作ってやる「ポトラッチ丼」.
高級和牛と玉ネギの輪切りを普通のめんつゆで手早く味付けた料理.
味覚が発展途上の十代の直達なら最高に思えても、年相応に食の経験を
積んだ大人なら「適切に調理すれば素材の良さをもっと楽しめるのに…と
感じさせた. 次に出てきたのは大量のポテトサラダであった. 山盛りの頂上から
広瀬すずが豪快に大きなスプーンでガツガツ食べてゆく….
最後は、自作カレーに生卵ぶっかけ.初体験の直達は感激していたが、カレー
をほめるでなく、生卵をほめるという失態をやらかす(笑).
の他に中華屋の北京ダックとか30年もの紹興酒とか、食べ物と怒りと諦めとか
の感情は表裏一体の関係であることを表現していると思った.
高評価された原作漫画に、メジャーなキャスト陣と、素材は良いのに活かしきれて
いないもったいなさが一杯.
これは、思春期や青春期を描いた漫画を人気俳優のキャストとベテラン監督の
組み合わせで手堅く稼げる実写映画化作品を量産してきた、日本の商業映画の
典型的な失敗作かも….
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