映画「シャドウプレイ」(DVD)…粗くて、雑の印象. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:風中有朶雨做的云 The Shadow Play 製作年:2018年
製作国:中国 上映時間:129分


製作年は2018年なれど、中国本土の検閲問題で日本公開が昨年に延期された作品.

本作は完全版でノーカット版.つくづく中国の検閲制度には呆れさせるが、
さて、そのカットされた内容は、性愛パートか、天安門連想パートか、官民癒着の
汚職構造なのか、今となっては私にはわからなかった.
本年度累積38本目の鑑賞は中国製問題作.
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「スプリング・フィーバー」「天安門、恋人たち」のロウ・イエ監督が、天安門

事件が起こった1989年を起点に、社会主義市場経済が押し進められ激変する中国の
30年間と、香港・台湾との離れがたい関係を、ある家族の姿を通して描いた
クライムサスペンス.

2013年、広州の再開発地区で立ち退き賠償をめぐって住民の暴動が起こり、
開発責任者のタンが屋上から転落死する.事故か他殺か、捜査に乗り出した
若手刑事のヤンは、捜査線上に浮かぶ不動産開発会社の社長ジャンの過去
をたどる.

その過程で、ジャンのビジネスパートナーだった台湾人アユンの失踪事件が
見えてくる.転落死と失踪、2つの事件の根本は、ジャンと死亡したタン、
タンの妻のリンが出会った1989年にあった.

刑事ヤンに中国の人気俳優ジン・ボーラン、野心家の不動産会社社長ジャン
にロウ・イエ組常連のチン・ハオ、夫のタンを失ったリン役に「SHOCK WAVE
ショック・ウェイブ 爆弾処理班」のソン・ジア.
中国当局の検閲によりカットせざるを得なかったシーンを加えた129分の
完全版には、香港の人気俳優エディソン・チャンの出演シーンも含まれる.

日本では2019年・第20回東京フィルメックスのオープニングでカットされた
バージョンが上映され、2022年に「完全版」で劇場公開.

以上は《映画.COM》から転載.
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ロウ・イエ監督はあまり馴染みがないのだけど、第一印象は造りの粗さだ.
カット割りの細かさ、時制の行き来とか、カメラワークも暗いし、手持ちカメラ
でせわしない、意味の無いドローン撮影とか…数え切れない不満点が列挙
出来てしまう.

それでも、なんとなく作り手のエナジーとか勢いは伝わってくるから不思議.
検閲に屈しない監督を始めスタッフ達の心意気のせいだろうか.
主人公が刑事で容疑者の女性との痴情のもつれというと最近の韓国の秀作
「別れる決心」を想い起こされるが、緻密さや脚本の出来は著しく差がある.

主人公ヤン刑事にジン・ボーラン、憂いを含んだイケメン俳優ではある.
広州の役人、再開発責任者のタン主任:チャン・ソンウェンは冒頭で死んで
しまうのだけど、その妻リン:ソン・ジアに惹かれ怪しい関係となってしまう.
それどころか、その娘ヌオ:マー・スーチュンとまで出来ちゃうという不純な
男を演ずる.
 

 

そのリン婦人と愛人関係のジャン:チン・ハオは悪徳不動産業者.タン主任と
官民癒着して大もうけしている.リン婦人の娘の真の父親はジャンであることも
作中で明かされる…(汗).
 

 

官民癒着、不倫、三角関係…の三題話しを中心に1989年、1996年、1998年
2004年、2013年へと目まぐるしく時制が行ったり来たりするのが特徴.年代は
クレジットされるが、配役の年齢表現もあやふやで、ややこしい事このうえない.

構成的にも、端緒の殺人事件の犯人の意外性を最後に明かすなど、あざとい
収め方で、観ていて正直腹が立つ.途中官憲に追われる身となる刑事ヤンが
最後はハッピーエンドを迎えるのも、なんだかなぁ…の感がしてならない.

粗さと雑さ、そして熱情だけの駄作の感有り.