シャガールのカレンダー(2024年02月) | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



Marc Chagall《Paris through the Window》1913年
Guggenheim Museum、NY

2月のシャガールのカレンダーは《窓から見たパリ》.
ほぼ正方形の原画ゆえ、カレンダーでもカット
されていない.


原画はこんな調子.


マルク・シャガール《窓から見たパリ》
1913年ニューヨーク グッゲンハイム美術館所蔵 

帝政ロシア領ヴィテブスクで生まれた
シャガールは成年後ズヴァンツェヴァ美術学校
で学んでいたが、1910年23歳の時に4年間
のパリ留学を果たす.

パリでは居を“ラ・リュッシュ”に構える.
ここにはスーチン、キスリング、モディリアーニ、
バスキン、ザッキンらが居たが、くしくも
国籍は違えど、みなユダヤ人であった.

本作は1913年、シャガール26歳の作品.
当時は、ピカソとブラックのキュビズムが
パリを圧巻していた頃、その影響も少し
見られる.

上空の面の構成や窓枠の色彩は、都市の
きらめく光のスペクトルを直接写し取ったよう.

窓の外を眺める人物は、古代ローマの神
ヤヌスのように2つの顔をもち、窓際の猫も、
古代エジプトのスフィンクスの顔のように措かている.

パリは、シャガールにとって2つの顔をもつ都市
として見えたのだろうか?
ひとつは、近代文化の坩堝である「現実」の都.
もうひとつは、想像を絶する「神話」めいた狂騒
が繰り広げられる、夢の都として.

二つの顔は、方やパリを向き、方や故郷の
ヴィテブスクを見ているのかもしれない.

あるいは、シャガール自身と故郷に残してきた
婚約者ベラの顔とも見える不思議な表現だ.

エッフェル塔を見上げる人間の顔をしたネコ、
パラュートで降りてくる人、
真横になって空中散歩する紳士と淑女は、
やはりシャガールとベラであろうか?
逆さまの汽車も走ってる.

夢の続きのような景色だけれど、
故郷と人への想いは生涯を通じて
変わらない画家のテーマ.

不思議感満載の画だけれども、


郷愁や祖国ロシアに残してきた
大切な人への想いが伝わってくる作品.