映画「海の上のピアニスト」4Kデジタル修復版 | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….

 


原題:The Legend of 1900
制作年:1999年 制作国:イタリア・アメリカ合作 上映時間:121分
 

 

相変わらず新作に興味もてる作品が無いので、旧作を劇場鑑賞している.
4Kデジタルで修復された「海の上のピアニスト」、今まで見落としたまま
だったので、これとばかりに柏キネマ旬報シアターで観賞.
本年劇場鑑賞累積105本目.

「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の
巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組み、船上で生まれ育ち一度も船を降りる
ことがなかったピアニストの生涯を描いたドラマ.

1900年.豪華客船ヴァージニアン号の機関士ダニーは、ダンスホールのピアノの
上に置き去りにされた赤ん坊を見つけ、その子に「ナインティーン・ハンドレッド」と
名付けて育て始める.

船という揺りかごですくすくと成長したナインティーン・ハンドレッド.
ある晩、乗客たちは世にも美しいピアノの旋律を耳にする.ダンスホールの
ピアノに座って弾いていたのは、ナインティーン・ハンドレッドだった.

日本では1999年に劇場初公開.約20年を経た2020年、トルナトーレ監督の
監修による4Kデジタル修復版(121分)が公開.同時に、99年公開時には
実現しなかった、170分の「イタリア完全版」も初公開される.

以上は《映画.COM》から転載.
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映画はしょせん虚構の世界.いかにもありそうな世界を描いて観客を騙して
くれる作品もあれば、あるある…と我々の現実世界をそのまんま描く作品も
あってしかりだ.

本作は、逆にないない…の連続で観客を楽しませてくれる作品だろうか.
トルナトーレ監督のでっち上げ話に乗れるか乗れないかで評価が分かれる
と感じた.

豪華客船のバーに置かれたピアノの上で生み捨てられたいわれであるとか、
名前の付けられ方、そして教えもされないのに天才的なピアノ弾きの才能….
絶対にあり得ない出来事の連続に、酔わされた振りをするしかない.

成人してからの主人公1900( ナインティーン・ハンドレッド)を演ずる
ティムロスはピアノ演奏を含めて、海の上で一生を過ごした希有の人生を
上手く演ずる.ラストのタラップを降りられず陸へ上がれなかった説明の
シーンなど、説得力ある演技が出来ている.

その一生涯の友人マックスを演じたブルイット・テイラー・ビンス無くしては
本物語は成立しない、貴重な脇役を演ずる.もう一人印象的な役柄としては
船上で1900とすれ違いを演ずる少女役のメラニー・ティエリー.
 

 

かなり個性的な顔付きなれど、1900が一目で恋に堕ちる魅力が溢れている.
最近の作品では「ロープ 戦場の生命線」とか「天国でまた会おう」でも
存在感溢れる演技が思い出される.この作品がデビューだったのだろうか?

船上でのピアノ対決〜JAZZ決戦は迫力の演奏シーン.これもエンリコ・モリコーネ
の偉大な仕事の成果であろう.が、ピアノの弦が熱を持ち、タバコに火が点く…
というのはやり過ぎであろう.過剰演出すれすれが多い本作品だが、ちょっと足を
踏み出しすぎの点が気にかかる.

4Kデジタル修復は効果大で音響的にも素晴らしい点が確認できた.
この後公開されるイタリア完全版は、ピアノ演奏シーンがもっと多いそう.
170分の長尺は気にかかるが、観ておいて損はないかもしれない.

ジュゼッペ・トルナトーレ監督とエンニオ・モリコーネのタッグならではの作品.
モリコーネを追悼する意味で劇場で本作を観られたのは幸運だったかも.