映画「風をつかまえた少年」 | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:The Boy Who Harnessed the Wind
制作年:2018年 制作国:イギリス・マラウイ合作 上映時間:113分
 

 

ギンレイホールでの2本目までの幕間ってちょうどお昼時.観客みな持ち込んだ弁当を
一斉に食べ始める.お握りあり、サンドイッチあり、マックあり、モスあり….

強者はコンビニのサラダでビールを空けている(笑).幕間の最後頃にはホールの係さんが

ゴミ箱を持って回って、食後のゴミを回収してくれる.こんな映画館他にある??(笑).

さて、この日の2本目はBBC制作の実話を元にしたある少年のお話し.本年27本目の鑑賞.

当時、人口の2%しか電気を使うことができず、世界でもっとも貧しい国のひとつと
言われるアフリカのマラウイで、少年が風車で自家発電に成功した実話を収め、
世界各国で出版されたノンフィクションを映画化.

アカデミー賞を受賞した「それでも夜は明ける」で自身もアカデミー主演男優賞に
ノミネートされた俳優のキウェテル・イジョフォーがメガホンをとり、映画監督デビューを
果たした.

2001年、アフリカの最貧国のひとつマラウイを大干ばつが襲う.14歳のウィリアムは
貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で出合った1冊の本をきっかけに、
独学で風力発電のできる風車を作り、畑に水を引くことを思いつく.

しかし、ウィリアムの暮らす村はいまだに祈りで雨を降らそうとしているところで、
ウィリアムの考えに耳を貸す者はいなかった.それでも家族を助けたいという
ウィリアムの思いが、徐々に周囲を動かし始める.

以上は《映画.COM》から転載.
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実話だからしょうがないことかもしれないが、全体の構成が冗長と感じた.
肝心かなめの風力発電が出来上がるシーンはたったの20分くらい.
あとはそれに至るまでの、教育問題、食糧問題、政治の腐敗、家族の絆…等々
に時間が割かれる.

本作観るまで「マラウイ」という国の存在を知らなかった.不勉強の極み、恥ずかしい.
アフリカ大陸南東部に位置する内陸国.幅160km長さ900kmの南北に細長い国.
1964年の英国連邦からの独立.2014年の1人当たり国民所得は250米ドルで、
世界最貧国…らしい.

事実、作品中でも採れる穀物はトウモロコシとタバコしかない.トウモロコシ粉を水で
練ったものが主食らしい.主人公家族が食べるものはこれしかなかった….
温帯夏雨気候で降水量は多いらしいが、ばらつきが大きく干ばつも多いらしい.

そんな地で主人公家族は原始的なトウモロコシ栽培を営んでいる.機械化なんて
とんでもなく、鍬一つの農業だ.灌漑施設などありようもなく、天気次第の雨に頼る.

そんな家族に干ばつが襲い、収穫金もなく主人公:ウィリアムは中学校へも通えなく
なってしまう.更に大学進学を夢見る姉は中学校教師と駆け落ちして家を出るし、
干ばつによる大飢饉で、倉に貯め込んでいたトウモロコシ粉も暴徒に強奪されてしまう.

そんな合間にも、父親は民主化運動のデモに参加しようと家を外出してしまうありさま.
そんな父が支持する族長も、大統領選の演説会で飢餓問題をなおざりにしている
大統領の批判を口にしたために、取り巻きから暴行されて死んでしまう.

この辺りのくだりは、アフリカをはじめ政治の近代化されていない国の貧困を加速させる
政治の貧困が描かれる.もっとも、近代化された某日本国に於いても政治の貧困は
目に余るものがあるけどね….

 

 

さて、図書館の数冊の本から得た知識で自らの手で風力発電を作り出し、廃品の
ポンプを使って地下水をくみ上げる灌漑施設を作り上げるのだが、この課題の大きな
壁は父親だった.

息子を農業の稼ぎ手としか考えず、ましてやその施設に自らのなしなけの自転車を
使わせてくれと息子に言われ、激怒する.これを説得し、協力させるに至るのは、
賢夫人である母親の仕事.素晴らしい母親で、長女に対してもお前を喰わせて

いくためなら自分の腕でも差し出すと名言をはいて涙をさそわせる….

結局のところ、この発電という偉業の陰に潜むのは家族の絆と賢い母の尽力の
賜物だったというお話し.

アフリカの小国に対する知見と家族愛に触れることが出来た貴重な一作.