19年ぶりの関東鉄道竜ヶ崎線。
そして、動いているところにお目にかかったことがなかった(はず)のキハ532。
しかし、今回偶然の縁でキハ532は走ってきた。
この好機を逃すわけにはいくまい。
関東鉄道を巡る四半世紀の“因縁”を吹き飛ばすくらいの勢いで、佐貫駅で出迎えたのだった。
3扉・片開き・両運転台。
関東鉄道はおろか、今や全国でも類型を見ない極めて稀有な存在。
しかも現状、毎週土曜日のみの運転という更に稀有な個体になってしまっている。
稀有なのは、何も車両だけではない。
佐貫駅の終端部、制限速度…0?!
まぁ強ち間違ってはいないけど。
当車は1981(昭和56)年、新潟鐵工所(現・新潟トランシス)製。
2001年まで在籍していたキハ531(元江若鉄道)の続番となったが、車体は新製。
走り装置は国鉄キハ20形の廃車発生品からの流用されている。
後年エンジンは換装されているものの、国鉄の香りを随所に残す異端形式である。
さて、降車が一段落すると、佐貫駅構内はエンジンのアイドリング以外極めて静かになっていた。
竜ヶ崎線の利用客は、ほとんどが常磐線からの乗り継ぎで成り立っている。
その常磐線との接続を考慮しているのか、佐貫駅での折り返し時間は余裕がある。
ただ、常磐線の列車が着いて乗り換えてくるまでは閑散としている。
てか、連休の中日だったこともあったからなのか…
あまりの閑散ぶりには、ちょっと面食らってしまったのだけど。
さて、竜ヶ崎線用車両の個性的な特徴。
それは、竜ヶ崎側の運転台が右側に設置されていることである。
これは、竜ヶ崎線各駅のホームが竜ヶ崎方面に向かって右側にしかないため。
平成に入って2両が製造されたキハ2000形も、この仕様が踏襲されている。
但し、前掲写真の通り非ホーム側も3扉となっており、かつての和田岬線用キハ35とは異なる。
佐貫側は従来通り左側運転台。
位置が違うだけで、機器配置は揃えられている。
竜ヶ崎線は路面電車以外の私鉄で初めてワンマン運転を開始したことで知られる。
但し切符、運賃は竜ヶ崎駅では改札で、それ以外は各駅備え付けのきっぷ箱に投入する方式。
首都圏でいえば南武支線など、都市型ワンマン仕様の先駆けとなっている。
そのため車内には運賃箱の類は一切なく、運転台仕切り上に現在地表示器があるのが独特。
車内はシンプルなロングシート。
「新潟鐵工」の銘板も、今やすっかり貴重なものに。
乗降扉は片開きでステップ有り。
近代的な外観と、古いアイテムが共存する独特な個体。
唯一無二ともいえる個性的な車両に身を預けて、竜ヶ崎線片道4.5kmの旅が始まる。