GPS狂騒曲② | 長女Aは、夢を見る。

長女Aは、夢を見る。

長女A(満50歳)
父と同居を始めてみた。

大学生の息子×2
父の愛犬
ワタシの愛猫

楽しいことばかりじゃないと
重々考えてのことだったけど

想定以上の毎日に
もう笑うしかないわけで。

いや、ほんとは泣いて怒ってばかりだけどさ。

 

 

 

 

認知症の父との日々を書いています

現在、要介護1認定の父(77)との日々

 

認知症?と気づく少し前からのこと

レビー小体型認知症と診断を受けたあとのこと

今の日常のどーでもいいこと

 

書くことで

何かが変えられたらいいな、って

思ってるんでしょうね、ワタシは。
 

 

 

 

GPSのタグを

父の靴紐に装着したときのこと

今でもよく覚えてる。

 

 

父が完全に寝静まったことを

部屋の外から確認して

すぐ横の玄関から

いつものスニーカーを左側だけ持って

2階の自分の部屋にダッシュした。

 

 

不器用というか

めんどくさがりのワタシは

靴紐を順番に通していくのが苦手だけど

父がトイレに起きないうちに、と

少々焦る。

 

 

少しの後ろめたさを感じながらだね。

 

 

 

いいことなのか

悪いことなのか

 

 

スマホアプリとタグの両方のGPSは

すぐにチカラを発揮する。

 

 

設定して使い始めたと報告した日

 ほんとに弟①は微妙な顔をしていたけど



一日目から「これは必要や物申すびっくりマーク

と言う出来事があった。



会社でもワクワクして気になって

GPSの行方を追ってみると

朝まず犬の散歩に

近くの大きな公園に行き

家に帰ったと思いきや



たぶん、犬を家に置いて

南に真っ直ぐ進み出す。

どんどん歩いて

地図上のアイコンはズンズン動く。

ほんとに脚が強くて早いんだ煽り







どう考えても

普段知っている行動の範囲を超えていて

心配になってきた。

ワタシはランニングしていたので

家からの距離は大体キロ数わかるのだけど

その時点で家から2.5kmほど。



ワタシたち姉弟は、

「これは……もしかして?」

と思い浮かぶ父の行先があり…

でも、そこは歩いて行くところではない。

車でなら20分ほどだろうか。


でも、海まで20km歩いたのが事実なら

十分有り得てしまう。



じっと追っていた画面の変化に

ワタシは目を疑う。



アイコンの地図上を動く速度が

どう見ても倍速以上になり

アイコンの右上にある靴のマークが

赤い車に変わっている。



一瞬ハテナでいっぱいになる姉弟だが

すぐ気づく。



「タクシーに乗った!???」



初日からそんなことなる昇天



そこで弟が

「ちょっと親父に電話してゲロー!!!」となる。



GPSをスマホに入れていることは

父には伝えたが

理解はしていないようだったし

靴のはナイショだったので

何気なく偶然電話したかのように

かけてみる。



だいぶコールしてから父が出る。



お母さん「もしもしーカイトビーグル犬あたまの散歩

もう行ってきたー?」



おじいちゃん「おう、行ってきたよ。         

            今はまた出かけとる」



お母さん「そうなんだ!今どこ?」



おじいちゃん「今…どこかな、

    えーっと、今どのへんですか?」



父はそう尋ねた。

運転席のタクシーの運転手さんに。


 やり取りが電話の向こうで少しあってから


おじいちゃん「もうすぐ入口だ」


と言う父。




入口………

そこは競馬場に入るゲートなのだろう。




隣の市にはなるけど

大きな地方競馬場があるのだ。

昔よく父が行っていた場所。



母が亡くなって10年

すっかりパチンコや競馬に

興味をなくしていたけど

ワタシたちが

「やることないなら」と勧めて←



前の週末にこの競馬場まで

車で送っていき、馬券を少し買っていた。


その払い戻しに………



確かこの日は水曜日だった。



「親父!水曜は競馬場やってないよ!」



弟①が大きな声で電話の向こうに。



週末、久しぶり過ぎて

いろいろルールを忘れていた父に

ワタシがスマホで調べて確認したはずだったが

それは忘れてしまったんだろう。

次の週末また行こうね、と

約束していたんだけど。



「なんやと〰️ガーンやってないって

閉まっとるってことか

そんなことないやろ?

昔は平日も窓口はやっとったやろ?」



昔は知らんけど、今はやってない。

残念だけど週末また行こう?



競馬場が開いていると

それでも言って聞かない父は

入口に着き

ゲートが閉まっているのを目で見て

はじめて現実を受け止めた。



「歩いたらすぐ○鉄の駅あるでしょ?

帰りは電車で帰れる?

タクシーのお金持ってたの?」



帰りのタクシー代は足りなさそうだ。

ていうか、足りても電車だ。

競馬場には電車の駅が隣接しているので

普段電車は乗らない父だけど

頑張って帰ってもらうしかない。


 

電話でこちらと通話しながら

父はタクシーを降り

駅に向かって歩き出したが


さっきまでの元気な声が

急にトーンダウンしただけではなく

強ばった顔が想像できるほど

真剣な声色になっていた。



驚いたことに

今までの父なら絶対言わないだろう

「今から迎えにきてくれんか」

という苛立った言葉を聞いたとき

こちらも一瞬声がつまった。



「仕事中だよーにっこり電車大丈夫ーだよー

このまま説明するから

切符売り場まで歩いてー


と、つとめて明るく言ったんだけど



「……わかったわ

自分で帰れる

すまんかったな」



と、低い声で返ってきて

電話は切れた。



そんな父にワタシたちは驚き

少しどう対応したらいいのか考えたが


GPSでその後を見守り

電車に乗れたことを確認して

最寄り駅で降りて

歩いて家に着くまでを追いかけた。




「GPS、あって良かったね」

と話すワタシたちも父と同様

まったく笑ってはいなかった。




父がやはり健脚で

週末の会話は全部忘れていて

タクシーに乗ることを覚えてしまって

一瞬で不穏な雰囲気をまとって

でも

電車にひとりで乗れて

最寄り駅から歩いて帰れる



GPSはすごい



という

いろんなことがわかった日だった。



まだまだ序の口の出来事。