初めて降り立った新横浜駅。
時刻は23:00。
新幹線を降りて、改札へ向かうまばらな人波にまぎれて改札へ。
キレイでだだっ広い駅は、もう閑散としていました。
乗り越し。
名古屋で降りるはずが、ここは横浜。
ホテル代と名古屋へ戻る新幹線代が痛い。
誰かになぐさめてほしい。
でも、ここは横浜。知り合いは誰もいないし
スマホの電池も切れている。
とにかく、現状をどうにかして
明日の始発で名古屋に帰らなきゃ。
明日は月曜。
息子ふたりの学校の段取りだけして。
仕事は10時からだから、なんとでもなる!
その第一歩は改札を抜けて
ホテルを決め、部屋に入り、充電をして
電話をかけて指令を出すこと。
改札窓口には、若いお姉さんの駅員さんが座っていました。
「あのー、名古屋を乗り過ごしてここまできちゃったんですけど…」
と、手持ちの名古屋までの切符を差し出す。
「あーそうなんですねー。今日はこれからどうされます?どちらかまで行かれます?といってももう電車も限られますけど…」
普通のトーンで淡々と話す駅員さん。
乗り越しの精算を計算し始めた。
「明日の始発で名古屋へ帰りたいので、新横浜で泊まろうと思います」
「あー」
少し間が空く。
なに?なにかまずい?
すべてが不安なアラフォー、
40にもなるとずいぶんふてぶてしくなって
何事にも動じなくはなってきたが、
交通事情とか、まったく知らないから
その間が怖い。
「始発で帰られます?お約束できますかねー?」
お約束?
「はい。それに乗らないといけないんで」
「では、明日の始発が6時ジャストなんですが、朝の5:40までに
この改札に来れることがお約束できるのなら
この切符で明日、名古屋まで帰ることができます」
追加料金なしで?
名古屋への新幹線代なしで?
「ハイ。お約束ができるのなら。朝こちらで手続きありますので、間に合うようにきてくださるなら」
そうなのーーーーーーーー
そんなシステムになってんのーーーーーー
「絶対きます!ほんとですか!ありがとうございます!」
まぬけすぎるアラフォーのあまりの歓喜に
少し笑いをこらえて、
その神様のような駅員さんは
なにやらたくさんの文字を切符に直接書き込んで
私に返してくれました。
「それと、これもしよかったら」
そう言って差し出した小さい紙には
新横浜駅周辺の10軒くらいのホテルの名前と電話番号が印刷されていました。
「ありがとうございます!」
こうして、私は新横浜駅の改札を抜けて
コンコースへ。
そこには案内の矢印。
右へ行ったら、横浜アリーナ
左へ行ったら、日産スタジアム。
東方神起ファンにとっては
聖地ともいえるそのふたつ。
あぁ。
遠征ではなく
乗り越しで、私はここへ来たのだ。
2013夏、チケットは手にしながら
母との最後の夏と知って
迷った末に行くことをやめた日産スタジアム。
いかんいかん(笑)
こんな感傷にひたってる暇はない!
駅からの階段を降りると
ぽつぽつと見えるいろんなホテル。
もう、どこでもよい。
一番近いところを確保するのだ。
駅員さんにもらったホテルの紙も
スマホが使えない私には意味を持たなかった。
(感謝と自戒をこめて、今でも財布の中にある)
私はすぐそばの
結構大きなホテルの部屋を確保して
やらなければならないことを一通り済ませた。
救われたのは
電話をかけて、話の一部始終を夜中にかかわらず聞いてくれた
その日一緒だった友人と
実家の弟(こどもたちを預けていた)が
大笑いしてくれたこと。
救われなかったのは
何度電話しても旦那が出ない。
そしてやっとつながったら出張先で飲んでいて
プッとだけ笑われたこと。
なにかしらね。
無性に腹が立ったわ。
(自分が悪いだけなんだけど)
そんなこんなで
明日の早起きに(いつもより全然早い)びくびくしつつ
いつのまにか眠ってしまいました。
起きたら。
つけっぱなしだったテレビ画面左上の時刻に
目の焦点があったら。
5:38
なにかの間違いだろうか。
文字通り飛び起きる。ほんとにそのとおりの動作だった。
昨日の夜、すべてをまとめておいてよかった。
備え付けのパジャマを脱ぎ棄て
とにかく服を着る。
鼓動が早い。
顔を水で洗う。
歯をじゃっと磨く。
荷物をかきあつめる。
お約束は5:40。
とうてい間に合わない。
それでも部屋を飛び出す。
フロントでチェックアウトの手続きをする。
まどろっこしくて
キリキリしながらも、なるべく平静を装う。
(もうすでに見るからに平静ではない状態の見た目ながら)
そして、ダッシュ!!!!!!!!
ホテルを出ると、すぐに階段が見えた。
あれ?昨日はこんな階段知らなかった。
向こう側の階段から結構歩いた気が。
でも、この道は間違いなく駅へと続いている。
そう自分に言い聞かせて
階段を駆け上がる。
一瞬も止まらない。
長い階段をあがると広い吹き抜けの向こうに改札が見えた。
遠い!
でも走るんだ!
改札には、昨日の女性の駅員さんはいなかった。
若い男性の駅員さんに息を切らしながら説明して切符を差し出す。
ダメか。
駅の時計を見上げると
5:55
「あ~聞いてます~ちょっと待ってくださいね!」
ダメ………じゃないのか!!!!!!
許してくれるの、この私のお約束破りを………!!!!
「ハイ!急いでください!とにかくどの車両でもいいから乗ってください!」
「ありがとうございますーーーーー!!!!!」
もう恥ずかしいとか
そういうのは
彼方の星にいってしまった私は
笑顔(もちろんすっぴん)で叫びながら
ホームへのエスカレーターを駆け上った(危険だからやめてください)。
昇り切ったすぐそこに。
新幹線様が止まっていらっしゃった。
それも幸運だった。
すぐ近くの扉に飛び込む。
扉が閉まる。
ほんとうに、すぐに閉まった。
席を確保して、しばらく何もできず
窓の外の朝日をあびながら、私は思った。
この、目を覚ましてからの一連の行動は。
飛び起き、身支度をして、起きぬけに全力で走りだすこの行動は。
日々のラジオ体操参加で培った
なにげない習慣が可能にさせたのではないかと。
5:38に目を覚まし、
チェックアウトをして、5:53に改札に到着。
ホテルから改札まではいったい何百メートルだろう。
そんなことを思いながら
私は新横浜を後にし
車内販売のお姉さんから
「朝のおむすびセット」をほおけた顔で受け取ったのでした。
(完)
長くてほんとにごめんなさい。
(ちなみにタクシーで自宅へ向かうその視線の先に、
こどもたちが分団で元気に登校する後ろ姿をとらえました。
ごめんね。)
そのとき新横浜駅の駅員の女性にもらった
ホテルの電話番号の紙。
カード入れの中に今でも入ってます![]()
