とてもとても長い一日の終わり | Snow white ~さよなら 先生

Snow white ~さよなら 先生

はじめまして 日記という形で、香川先生との出逢いから別れの3年半を回想させていただきます。 

1998年の 春の連休

たった1日のことですが

実に 長きにわたる記事が続いています。

今 この記事を編集しているのが

2008年 6月12日なのですが

この日のはじまりである

広瀬家のキッチンでの 朝の光景を書綴ったのは

なんと 

2007年 去年の8月22日なんですね。



・・・う~~ん  ヾ( ̄0 ̄;ノ


その間に 私自身が病院のお世話になるなど

色々なことがあったとはいえ

我ながら 引っぱりすぎだなぁと思います。



さてさて

そんな長い1日も 今日でようやく終わろうとしています。





大型トラックが たくさん停まれるほどに広い

このコンビニの駐車場に 先生のセリカが停まって

30分ほどが経ちました。

ここで出逢った 小学校1年生の男の子

強くんのおうちのものであろう 

白い車が駐車場に入ってきました。

「あっ パパじゃあ!! それにママもっ!」

ご両親は 車の窓から顔を出した強くんに

すぐに気づいたようでした。

「強っ! あなたって子はっ!!」

お母さんが 停まった車からすぐに出てきました。

心配でたまらなかった様子が ひと目でわかります。

お父さんらしき男性も降りてきました。

セリカから降りた強くんを 

お母さんがぎゅっと抱きしめています。

「お電話いただいた方・・・ 香川さんでしたか

うちの子がご迷惑おかけしたみたいで 

本当にすみません  助かりました。」

頭を下げる 強くんのお父さんに

先生は 頭をあげてくださいと言っています。

「ちょうど通りかかっただけなんです

こんな夜遅くに ちいさい子がおったから

どうしたんかな と 思って・・・

いや でもほんまに良かったです。」




そんなやり取りのあと

強くんのおうちの車の中で

座席に座っている 大きな猫を見せてもらいました。

ちゃちゃまる おばあちゃん猫の『茶々丸アキラ』でした。

赤茶色の長い毛をした 少し眠そうな顔をした茶々丸は

強くんのおうちがある 隣町で 

散歩していた老夫婦に保護されたのだそうです。

強くんがおうちを飛び出していってすぐに

そのお宅から 首輪に書かれた連絡先である

おうちに電話がかかってきたと聞きました。

こうして 

茶々丸の次に 強くんが迷子になってしまったのでした。




先生曰く 「鉄砲玉の強くん」一家とお別れをしたあと

私達は 先生の部屋のあるマンションへ急ぎました。

明日 用事があるのは先生だけでしたが

それにしても もう夜遅くなっていたから

それぞれの家に自転車で帰る途中

車にだけは気をつけろと 

先生は車の中で しつこいくらい言って聞かせていました。

「大丈夫じゃって 俺らみんな運動神経はええから。」

そう言って笑っていた 3人の男子高校生たちは

駐車場で 車から降りたあと

めいめいに自分の自転車にまたがり

同じ方向の帰り道を 並んで走りはじめました。

「おまえら 並進はあかんで

ちゃんと一列になって帰れよ おい!」


そういう先生の表情は やっぱり「先生」の顔です。

「わかってま~す

ありがと 先生

ラーメンと餃子 うまかったっす!

カナさん さようならっす!」


うしろをむいて 私達に1度頭をさげたあとは

あっという間に 彼らの姿はちいさくなってゆきました。

「うちも帰らんと・・・」

自分が乗ってきた 母のママチャリに目をやった時

ふっとうしろから先生に抱き寄せられました。

「きゃあっ!」

「アイツらは男やから ああして帰ってええけど

カナは・・・  女の子やから危ないよ。」


ぎゅっと抱きしめられると 

また 先生の匂いに包み込まれます。

「自転車じゃったら すぐうちに着くし・・・

ちょっとだけじゃ・・・」


トクン トクンという 自分の心臓の鼓動が

先生にも伝わりそうなほど

大きくなっている気がしました。

「夜道は危ない  あかん 

カナ  もう一回車に乗り。」


自分の車に乗れと指示しているくせに

先生は 私のからだを離してくれません。

「あっちゃん

その腕を 離してくれんと

それは 無理じゃ。」


私がそう言うと 先生が少し笑いました。

「そらそうやなぁ・・・」

少しだけ 先生の腕の力がゆるんで

私のからだは 解放されたのでした。

でも それはほんの少しの間だけです。

セリカの助手席に乗った私のからだを

先生はすぐに また引きよせてしまうのでした。

それだけでなく 

キスキスをしてきた先生の吐息は

夕ご飯にいっぱい食べた 餃子のにおいがしました。

「・・・くさいか?  ゴメンゴメン。」

すぐに くちびるを離したのは

私の顔にきっと 

『イヤだ くっさあ~~い』と書いていたのが

わかったからでしょう。

「ホントくさい  気絶するかと思った。」

私の言葉に 先生が大笑いしています。

「気絶はオーバーやで

まぁ カナも食べたけど 俺らとは量が全然違うしなぁ

・・・それはそうと 

この休みは もう今日みたいにゆっくりはできんけど

夕方からでも もう1回逢えたらええな。」


私も 同じ思いでした。

「うん  うちもまた逢いたい

あっちゃん忙しいから あまり無理できんけど

また 逢いたいな。」


「そやな  また時間つくるし

前もって わかりそうやったらメールする

・・・そろそろ帰らんとな。」


セリカのエンジンが動きはじめました。

ここからは ほんの少しのドライブタイムです。

車はあっという間に 私のうちの隣のコンビニに着き

今度こそ 「バイバイ おやすみハートを言う時でした。

私が以前 同じマンションの人に見られると言ったのを気にして

最近どうやら先生は

この辺で私にキスをするのを 控えている様子でした

だから車の中で 私からほんの一瞬キスをしました。

先生の名前を呼んで 振り向いた瞬間に

チュッと ほっぺにキスです。

「おやすみ あっちゃん・・・」

先生は なんとも言えないような顔をして

しきりに自分の髪をさわっています。

「カナ  おやすみって・・・

今晩 寝られんやないかそんなんされたら

もう・・・

おやすみ。」


えっちの時は 平気であんなことをするのに・・・

そう思うと

そのギャップに 先生のことが愛おしくてたまりませんでした。

バイバイしたあと マンションの中に入り

エレベーターで 自分の家の階に上がったあと

共用廊下から ふと下を見やると

まだ 先生のセリカが駐車場に停まっていました。



今日はずっと先生と一緒にいました。

一日の中で見た 先生の表情を

私は上からの景色を眺めながら 思い出していました。

生徒たちに接する 『教師』としての表情

迷子になった強くんに接する 優しく諭す

きっとパパになったなら こうなんだろうと思える表情

そして 先生の部屋のベッドでたくさん感じさせてくれた

いっぱいの愛の言葉

やがてセリカが動きだし 敷地から道路に出たあと

ちいさくなり 見えなくなってからも

廊下の手すりにもたれたままで

私は色々な先生の表情に 思いを巡らせるのでした。