更新間隔が長くなりがちの
(はっきり言えば『サボりがち』ですね)
ここを訪れてださったり ペタをつけてくださる方々
いつもありがとうございます。
今日(もうすぐ日付が変わってしまいます)は
4月27日以来 久しぶりの
香川篤史先生と 私広瀬カナの
恋の想い出話の続きを綴りたいと思います。
(前回のお話は「お腹いっぱいの帰り道<1>
です)
香川先生の部屋を訪ねてきた 3人の男子生徒
小池くん 伊勢くん 大西くんと私を
ラーメン屋さんに連れてきてくれた先生が
その帰り道 何かを見つけたのでしょう。
怪訝そうな声とともに セリカのスピードを落としてゆきました。
「どうしたん?」
後部座席から身を前に乗り出した私にも
道路脇に 何か人のようなものを見つけるのは
もう かんたんなことでした。
セリカはその時にもう ほとんど停まりかかっていたのでした。
道路脇にしゃがんでいたのは 男の子でした。
路肩に車を停め ハザードをつけた先生はすぐに
車の外へ飛び出してゆきました。
後部座席の窓があいているので 先生の声が聞こえてきます。
「ボク こんな遅うにどうしたんや? 何かあったんか?」
男の子の声までは 私には聞こえませんでしたが
もう夜の帳に包まれているとはいえ
少し離れたところに コンビニのネオンサインが光っているせいで
その子が ほとんど泣きそうな顔をしているのはわかりました。
「猫? 君の猫がいなくなったんか?」
こくっとうなずいた男の子の表情が 一気に崩れました。
突然 子どもの泣き声が聞こえてきたせいでしょう
さっきまで コックリと舟を漕いだ状態だった3人が
お目覚めのようでした。
「え どうしたん?」
「誰が泣いとるん 子ども?」
「ここ どこ?」
助手席の伊勢くんが ドアをあけて外に出たので
私達も ぞろぞろと外に出てゆきました。
「あっちゃん 猫って?」
私が訊くと
しゃがんだままの姿勢で その子を抱いた先生が答えます。
「飼っとる猫が おらんようになって(居なくなって)
昼間からずっと探しとるけど 見つからんらしいわ
・・・それより 家からずっと歩いて探してきたら
疲れて 歩かれへんようになったみたいや。」
先生の言葉に 誰かが
「猫は 放っとっても家に帰ってくるんと違うん?」
そう言いましたが
その子のうちからいなくなった猫は
かなりの『おばあちゃん猫』で
歩くのも どちらかというとヨタヨタという感じらしいです。
「ママが言うたん
『ちゃちゃまるはおばあちゃんで 道歩いたら
車にはねられる』ゆうて言うたん
そんなん嫌じゃ 嫌じゃ!」
そう言って また大きな声で泣きはじめました。
「おばあちゃんじゃのに ちゃちゃまる?」
「お前なぁ そんなん今ツッこむことか?」
大西くんと 伊勢くんのやり取りのあいだ
先生が男の子をなだめています。
「そうかぁ 君ひとりでちゃちゃまるを探しとったんか
心細かったなぁ
もう 泣かんでええ・・・」
背中と頭を撫でて 優しく話しかける先生を
しばらくの間 ぼうっと見ていた私でしたが
長い間 この子が何も食べていないのではないかと思い
声をかけてみました。
「ぼく 名前はなんていうん?
お昼から 何も食べてないんと違うん?」
やはり そうとうお腹がすいていたみたいでした。
「つよし・・・ かいつよし
お昼食べてない・・・」
それを聞いて 私は少し離れたところにあるコンビニへ行こうとしました。
「なんか買うてきてあげる おにぎりがええ?
あっちゃん 車そこに停めたままじゃとダメじゃ
つよしくん乗せて そこの駐車場に入った方がええよ。」
「ああ そうやな
カナ 悪いけどなんか買うてきてくれるか?
君は つよしくんって言うんか
なぁ つよしくん おにぎりでええか?」
まだ泣いているつよしくんに 先生が諭すように言います。
「もう大丈夫やから 泣かんでええから
『つよし』って どんな漢字書くん?」
「強い子の つよし・・・」
もう一回 ぎゅうっとからだを抱きしめたあと
先生が何か 強くんにささやいていました。
きっと
「強い子が泣いたりしたらあかん」
そう話していたのだと思います。
私は車内から自分のバッグを取り コンビニに走っていきました。
ずいぶん遅い時間ではあったけれど
陳列棚には おにぎりやサンドイッチがありました。
どっちが好きかわからないので その両方と
適当に お茶とジュースと
チョコレートを買って 外に出ると
先生のセリカが もうコンビニの駐車場におさまっていました。
「強くん お腹ペコペコじゃろ?
これ どれでも好きなん食べてな」
助手席に座っている強くんに 袋ごと渡すと
「ありがと・・・」
そう言って強くんは 中からサンドイッチを取り出しました。
「なぁ強くん 食うたら家に電話しとき
おうちの人 今頃めちゃ心配しとるはずやで。」
夢中でサンドイッチを頬張る 強くんを見て
先生が話します。
「だいぶ遅うなってしもたなぁ
お前らも・・・ カナは女の子ぉやから特にそうや
いつまでも帰らんと家の人が心配する 電話しとき・・・」
言われてみれば確かに
母に 帰ると言った時間をゆうに過ぎていました。
「あっ!」
慌てて私は 自分の携帯をだして家に電話をしました。
家の電話は 留守電になったまま誰も出なかったので
父の携帯電話にかけると 母が出ました。
「もしもし 私 カナ。」
「カナ どうしたん?
心配せんでも大丈夫よ ちょっと遠出し過ぎて帰りが遅なったね
ゴメンゴメン ゴメンね。」
どうやら 両親はまだデートの帰り道だったようでした。
私が 今の様子をかいつまんで母に話しました。
「あら そうだったん?
カナもまだ 家に帰ってなかったんじゃねぇ
え、 大丈夫じゃって
・・・篤史くんがいっしょなんじゃから そんなに心配せんの。」
最後のは 私ではなく父に言っている様子でした。
私が携帯で 母と話している間に
どうやら先生が強くんに うちに電話をさせたみたいでした。
「カナ 食いもんありがとうな
コイツ 強すっかり元気になったやろ?」
後の座席で 小池くんの膝に乗った強くんは
さっきまでとは全然違って見えました。
「強くんのうちに電話したん?」
「ああ ご両親やっぱりめちゃ心配してたみたいや
強 1年生で花咲台の子ぉらしいわ
もうちょっとしたら ここまでご両親が迎えに来られるから
この鉄砲玉とも もうちょっとしたらバイバイやなぁ。」
花咲台という町は ここからかなり距離があります。
よく小学1年生の子が 歩いてきたものです。
後ろの座席は 男子高校生3人と小学1年生で
ぎゅうぎゅう詰めの様子でした。
4人を見つめる先生の眼差しが とても温かく優しげで
私はしばらく 外から窓越しで見入ってしまいました。
「・・・お父さん 大丈夫やったか?
俺がいつまでも連れ回して 怒ってなかったか?」
先生はやはり それが心配だったようです。
「まだ ふたりとも家に帰ってなかったんよ
大丈夫じゃ あっちゃんは信頼されてるから。」
そう言うと 先生の表情に安堵が見えました。
本当は 父はちょっと心配していたみたいですが
そこは正直には言いません。
「そうかぁ でも今日は色々あった日ぃやなぁ
朝から いろんなことがあった
中身の濃い1日やった・・・
なぁカナ 早う乗りぃ。」
先生が そのまま私に助手席に乗るように言います。
「でも うしろ窮屈そうじゃ
それに 強くんのパパとママが迎えに来るんじゃろ?」
先生のセリカは2ドアなので
強くんを車から降ろす時に また助手席はあけなければいけません。
今私が乗っても また二度手間です。
「ええから 乗りぃ
この時期 外におっても
たぶん風邪はひかんけど
・・・俺が カナのそばに居たい・・・」
身を乗り出した先生
最後は とてもちいさな声で話すのでした。
「もうっ!」
照れくさくて そんなリアクションをした私でしたが
今日が 先生の唯一のお休みだから
私だって本当は おなじ気持ちでした。
今日はずっと 先生のそばにいたし
伊勢くん達がやって来る迄は
先生に抱かれて 愛撫を受けて
いっぱい いっぱい愛を確かめあったのだけれど
本当は それでもまだそばにいたいのです。
さっきの先生の言葉
うしろの高校生たちに聞こえたかなぁ?
ドキドキしながらそう思いつつも
うしろではしゃぐ子どもたちの声をBGMに
先生の横顔を 私はじっと見ていました。
メガネの奧にある 優しい眼
大好きでたまらなくて
他に誰もいなければ 迷いもなくハグするのになぁ と
強く思う私なのでした。