カムフロムアウェイ 2024年3月10日 マチネ | All Because Of You!

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のんべんだらりと 観劇してみたり





とりあえず。良かった!!

何が良かった。というのは、ひとつひとつ話さないといけないくらい、様々な感情がたった100分の中に詰め込まれていて、最終的に「良かった。すごく、良い作品だった」に集約されてしまいます。

これは、アメリカに住む人と、その他の地域に住む人。あの時、あの瞬間を、どう見ていたか?と、人によって、揺さぶられる感情も変わってくるのではないでしょうか。
これを日本で上演するには、いわゆる「主演経験のあるスキルの高い俳優」が必要だったのも頷ける。そういう舞台でした。

お話は、2001年9月11日。
飛行機を使ったテロが起こり、アメリカの領空内への侵入禁止が出た日。
カナダのかつては給油地として栄えていたけれど、今では殆ど利用されない空港がある、人口1万人の街『ガンダー』が、アメリカに行けない飛行機38機。乗客、乗員合わせて7千人を受け入れた5日間の物語。
12人の役者が、街の人、航空関係者、乗客…動物や飛行機の音まで!?約100人のキャラクターを演じておりました。

とりあえず。幕開けの街について紹介する歌の圧。それだけで、これから始まる物語に期待が高まります。
いつもと変わらず、のんびりとした街が、ラジオから聞こえてきたニュースで、どんどんと加速していく。
一体、何が起きているのか?誰にもわからない。でも、目の前にいる困っている人々を対処していく。ただ、それだけ。この出来事で、変わる人。変わらない人。それぞれがスポットライトが当たる人生は、ほんの何人分ですが、その中でも様々な動きがあって、心が温かくなったり、辛くなったり…。

安蘭さん。
カッコいい女性が似合うんですが、「ペプシっ」が味があって、面白い。

禅さん。
安蘭さんとシルビアさんに振り回される男!
憎めないのよねぇー。

健ちゃん。
やっと、ちゃんと健ちゃんとして認識して舞台を見られましたよ!愛されオーラ!

和樹さん。
なんか、キャラが濃い!あと、ダンスがキレッキレでした。街に着いた時と街を信頼した時の差!人生の変わり時の表現!あと最後の健ちゃんを射止めていて流石ね。

咲妃さん。
初めましてさん。この方も踊りがキレッキレ。あと動物の声、可愛い。新人記者が、最後の挨拶だけで、ああ、街の人になったのだな。とほっこりしました。あと、前方席だったのでパーティーガールにびっくり!

シルビアさん。
多分、初めまして。
公演の日にしていた、安蘭さんと柚希さんがインスタライブでも語られていましたが、ボノボノへの慰めの言葉が温かくて…!!

万里生!
田舎の逞しい男性から、都会的な青年。そして、何よりターバンをつけた彼。彼の心の裡を察すると、胸が苦しい。本人に非はないのに受ける疑いの視線。でも、周りの人の気持ちもわかる…。受け入れてくれた瞬間は、ホッとした。

橋本さん。
町長の三人連続登場!に笑う。
振り切ってるのが、楽しかったです。

濱田さんっ!
パイロットとしての彼女。街のちょっとすっとぼけた彼女。
特に、キリリとしたパイロット姿は、キャラクターの内面と共に本当にかっこよかったです!
自分の半生を歌う、Me And The Skyは心が持っていかれましたわ。歌う姿の背景に青い空が浮かび、そのまま濱田さんが自分の力で大きな空へと飛んでいくような…。そんな体験が出来ました。素晴らしかった!!

森さん。
ニューヨークで消防士をしている息子と連絡が取れず、不安に押し潰されていた彼女に、あの大きな体がとても小さく思えました。
が、森さんはドライバーの「ヘラジカだ…」が好き!

柚希さん!
ずっと知っていたのに縁がなかったのですが、やっと、観れましたよ!心温かなガンダーの街という象徴のような女性でした!明るく、元気で、人情深い…!!この方の陽のパワーが存分に発揮される役だったのではないでしょうか?
柚希さんも踊りがキレッキレ!ほんと、ラム酒を飲め!の盛り上がりはテンション高くて楽しいのですが、その中で、加藤さん、咲妃さん、柚希さんがダンスが光ってて面白いです!

吉原さん。
出てくるとインパクトだけ残していく、吉原さん。
スペイン語を話す教師、バスのドライバー、脳外科医…と個性ばかりが出てくる中、穏やかな牧師姿もよき。

そんな感じで…
ラジオから聞こえてくるニュースも、テレビに映し出された光景も、舞台の上では何一つないのに。
何故か、私の頭の中では鮮明に、あの時の映像が、あれを見た瞬間の感情が思い出される。(これを書いていても、出てくる)
共通言語として、あの、光景が、見えている。と見えていない。では、この舞台から受け取るものは、違ってくるのではないかと思いました。
そして、攻撃を受けていない日本人ですら、いまだに心の中に悲しみ、悔しさ、恐ろしさが燻っているのに、直接攻撃を受けたアメリカの方、アメリカに縁がある方は、この話とどう向きあったのでしょう?

あの時に負った心の傷に対して、せめてもの救いであり、希望の話だと思います。
そして、団結であり、人に与えなさい。というキリストの教えを体現したような話でもあります。
だから、アメリカでは「無名の役者」でも成り立つのではないかと思いました。(勿論、日本とは層の厚さも違うと思うのですが)
演技としても、一瞬で違う人であることを客席に納得させるだけの力が必要です。しかし、遠くで起きたテロに対しての現地に比べれば傷の浅い日本人の心に響かせるには、舞台の空気を変え、それを適切に客席に届けられるだけの力を持った役者が必要だったのだと思います。
そして、それ以上に。「興業としての関心」を考えた時。このメンバーだから、このミュージカルを見に行こうと思える。そんな人たちでなくてはならなかったのではないか。と思います。

良い作品だった。その一言で終わらせるような作品ではないのですが、やはり「良かった。すごく良い作品だった」に尽きると思います。
最後。テロから10年後の再開のパーティで終わります。そのままカーテンコールではバンドメンバーも出てきて、曲に乗って大盛り上がりなので、やはりハッピーな気持ちで終われるので、人生何があっても、温かい人との繋がりを大事にできれば、幸せなのかもしれませんね。
こんな素敵な作品に出会う機会をくださり、ありがとうございました。





安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫