ようこそのお運びで。

大河ドラマ第二回で「まひろ」が代筆で書いた歌・・・『源氏物語』夕顔の巻の歌です。

心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花(『源氏物語』「夕顔」)コメ無 | 耳鳴り・脳鳴り・頭鳴り治療の『夜明け前』 (ameblo.jp)

上記の歌の返歌です。

寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 花の夕顔

・・近寄って初めて夕顔の花かどうか判別がつくことでしょう。誰と区別もできない黄昏時に、ぼんやりとその夕方の顔を見ただけの花ですので。・・・

相手の女に「あなたに近づきたい」と意志表示をした歌。

 

◎京都・平安神宮・・・ドラマのロケ地

応天門・平安京大内裏の朝堂院の正門」

 

「四神の一つ、白虎楼」

 

お題

「逢ふ瀬なき 涙の川に 沈みしや 流るるみをの はじめなりけむ」(源氏物語・須磨)朧月夜をめぐる歌⑧

 

源氏の須磨隠棲時代。発端となった密会事件の相手、政敵の姫君である朧月夜に手紙を書く。

 

尚侍の御もとに、わりなくして聞こえたまふ。「問はせたまはぬもことわりに思ひたまへながら、今はと世を思ひ果つるほどのうさもつらさも、たぐひなきことにこそはべりけれ。

 ☆逢ふ瀬なき 涙の川に 沈みしや 流るるみをの はじめなりけむ

と思ひたまへ出づるのみなむ、罪逃れがたうはべりける」。道のほども危ければ、こまかには聞こえたまはず。女いといみじうおぼえたまひて、忍びたまへど、御袖よりあまるもところせうなん。

 ☆涙川 うかぶみなわも 消えぬべし 流れてのちの 瀬をもまたずて

泣く泣く乱れ書きたまへる御手いとをかしげなり。今一たび対面なくてやと思すはなほ口惜しけれど、思し返して、うしと思しなすゆかり多うて、おぼろけならず忍びたまへば、いとあながちにも聞こえたまはずなりぬ。

・・・尚侍(=朧月夜)のもとに、無理をしてお手紙をさしあげなさる。「お便りくださらないのも当然と思いますものの、今はこれまでと京を捨てて行くことの情けなさも苦しさも、比類のないものでございます。

 ☆逢ふ瀬なき 涙の川に 沈みしや 流るるみをの はじめなりけむ

とあなたのことを思い出しますことだけは、私の逃れがたい罪でございます。」道中も危険なので、こまごまとは申し上げない。女(=朧月夜)はたいそう悲しく思われなさって、我慢なさるけれど、(涙が)御袖より溢れるのも、厄介なことだ。

 涙川 うかぶみなわも 消えぬべし 流れてのちの 瀬をもまたずて

泣く泣く書き乱れなさった御筆跡が実に美しい。もう一度対面することがなくてお別れするのかと思いなさるのは残念だけれど、思い返して、自分のことを嫌悪する人々が多く、並大抵ではなく人目を忍びなさっていたので、困難を冒してお便りすることはなさらず終わった。・・・

 

源氏は朧月夜から手紙を貰えぬ恨み言を言いつつ、離京のつらさを訴える。二人は歌を詠む交わす。源氏は朧月夜に心を寄せていることだけが、自分の罪だと言い添える。もう一度対面したいが、政敵の目が厳しいので自制する。

 

 

                           源氏物語六百仙

 

◎和歌を取り出す。

 

源氏の歌

逢ふ瀬なき 涙の川に 沈みしや 流るるみをの はじめなりけむ

・・・逢瀬を持つことのできない悲しみの涙に暮れたことが、我が身が流離うことになった初めのきっかけだったのでしょうか。・・・

①「涙の川」

『古今集』

「529 篝火に あらぬわが身の なぞもかく 涙の河に うきてもゆらん」

『源氏物語』 

「767 身を投げし 涙の川の はやき瀬を しがらみかけて たれかとどめし」

②「流るる」・・・「泣かるる」を掛ける。「泣かるる」の「るる」は自発の助動詞「る」の連体形。

『後撰集』

「20 白玉を つつむ袖のみ なかるるは 春は涙も さえぬなりけり」

『後撰集』

「515 おもひがは たえずながるる 水のあわの うたかた人に あはできえめや」

③「みを」・・・「みを」は「水脈」と「身を」との掛詞。

『後撰集』

「889 涙河 いかなるせより かへりけん 見なるるみをも あやしかりしを

『伊勢集』

「293 せきとむる なみだいづみに たえせずは ながるるみをぞ とどめざりける」

④「瀬」「川」「流るる」「水脈」は縁語。

 

朧月夜の返歌

☆涙川 うかぶみなわも 消えぬべし 流れてのちの 瀬をもまたずて

・・・涙の川に浮かぶ泡のようにはかない私はきっと死んでしまうでしょう。あなたが流離いなさった後の逢瀬をお待ちすることもなくて。・・・

①「みなわも消えぬべし」・・・「みなわ」は水泡。ここでは朧月夜を指す。「消ゆ」は「死ぬ」意も持たす。

『兼盛集』

「40 こひしとは 何をかいはん いは波に たぐふみなわの きえぬばかりを」

②「瀬」・・・川の水の浅い所。ここでは「逢瀬」の意も掛ける。

後世の例

『拾遺愚草』

「1173 命だに あらばあふを まつら川 かへらぬ浪も よどめとぞ思ふ」

③「川」「みなわ」「消え」「流れ」「瀬」は縁語。

 

源氏は「川」の縁語仕立てで、あなたへの懸想が流浪の端緒となったのだなあと振り返る歌を詠むが、逢瀬はまだ無かったのように装う。人目につくことを警戒してのことだ。朧月夜は同じく「川」の縁語仕立てで、源氏の帰京を待たずして悲しみのため自分はきっと死んでしまうだろうと悲嘆する。

 

 

おまけ

 

医大プロジェクトチームの研究に参加して下さった被験者の皆様のご尽力と、

ネンタ医師の困っている患者様を何とかして救いたいという熱意と、

被験者様に集まっていただこうとして開設したこの拙ブログの存在も少しばかり貢献して実現した論文

 

国際科学雑誌 「PLOS ONE 」の論文

「Brain Regions Responsible for Tinnitus Distress and Loudness: A Resting-State fMRI Study」

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0067778

 

二報目

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0137291

  sofashiroihana