ようこそのお運びで。大河ドラマの影響というものは凄まじく、拙ブログの次の記事にアクセスして下さる方が大勢いらっしゃいました。有り難うございます。

人の親の 心は闇に あらねども 子を思ふ道に まどひぬる哉(かな) | 耳鳴り・脳鳴り・頭鳴り治療の『夜明け前』 (ameblo.jp)

◎白良浜の夕景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題

「木枯の 吹くにつけつつ 待ちし間に おぼつかなさの ころも経にけり」(源氏物語・賢木)朧月夜をめぐる歌⑦

 

源氏は、朱雀帝の次の帝位を継ぐ春宮の後見である。桐壺院は朱雀帝に源氏と春宮を重んじるよう遺言を残したが、朱雀帝は優しい性格故に母の弘徽殿太后らの政治的専横を止めることができない。逆境の源氏であったが、政敵の娘、朧月夜との密会を続けていた。

 

大将、頭弁の誦じつることを思ふに、御心の鬼に、世の中わづらはしうおぼえたまひて、尚侍の君にも訪れきこえたまはで久しうなりにけり。初時雨いつしかとけしきだつに、いかが思しけん、かれより、
 ☆木枯の 吹くにつけつつ 待ちし間に おぼつかなさの ころも経にけり
と聞こえたまへり。をりもあはれに、あながちに忍び書きたまひつらむ御心ばへも憎からねば、御使とどめさせて、唐の紙ども入れさせたまへる御厨子あけさせたまひて、なべてならぬを選り出でつつ、筆なども心ことにひきつくろひたまへる気色艶なるを、御前なる人びと、誰ればかりならむとつきしろふ。
 「聞こえさせても、かひなきもの懲りにこそ、むげにくづほれにけれ。

 ☆身のみものうきほどに、
 ☆あひ見ずて しのぶるころの 涙をも なべての空の 時雨とや見る
 心の通ふならば、いかにながめの空ももの忘れしはべらむ」
など、こまやかになりにけり。

・・・源氏の大将の君は、頭弁が(「白虹日を貫けり。太子畏ぢたり」春宮を擁する源氏が朱雀帝に逆心を抱いても、成功しないと暗示)と口ずさんだことを思うと、お気が咎め、世の中を煩わしく感じ、尚侍の君(=朧月夜)にもお便りをし申し上げないで、長く経過した。初時雨が早くもその気配を見せはじめた頃、どのようにお思いになったのだろうか、朧月夜のもとより

 ☆木枯の 吹くにつけつつ 待ちし間に おぼつかなさの ころも経にけり

とお詠み申し上げなさった。お便りの折も時節にふさわしくしみじみとして、無理に人目を避けてお書きになったであろうお気持ちもいじらしいので、ご使者を引き止めさせて、中国渡来の紙をしまわせておいでの御厨子を開けさせて、並み並みではない上等な紙を選び出しては、筆なども格別に繕いなさっている様子が艶美であるのを、御前に仕えている人々は、お相手は誰だろうっと、突き合っている。

 「お便り申し上げても、甲斐ないのに凝りまして、ひどく挫折してしまいました。

  ☆身のみものうきほどに

  ☆あひ見ずて しのぶるころの 涙をも なべての空の 時雨とや見る

 もし、心を通わすことができるなら、どんなにか「物思い」を催させる「長雨」の空を見ても、憂いを忘れることができるでし 

 ょう」

など愛情こまやかな文面になった。・・・

 

源氏は、頭の弁に逆臣のように皮肉られたことに気が咎め、弘徽殿太后一派が権力を掌握する世の中が煩わしく、朧月夜に便りをしないでいた。初時雨の頃、朧月夜からてがみが届く。源氏は人目を忍んで手紙を書いた朧月夜をいじらしく思い、上等な紙に達筆で返事書いた。

 

源氏物語六百仙

 

 

◎和歌と引き歌をを取り出す

身のみものうきほどに・・・以下の歌の引き歌

『後撰集』

「1260 かずならぬ 身のみ物うく おもほえて またるるまでも なりにけるかな」

・・・ものの数にも入らない我が身がつらく思われていたのに、待たれるほどになってしまったことよ。・・・

お便りをしないでいた間に、あなたから待たれるほど月日が経ってしまいましたの意。

 

☆木枯の 吹くにつけつつ 待ちし間に おぼつかなさの ころも経にけり

・・・木枯らしの吹くごとに木の葉ならぬ言の葉(便り)を待ち続けていた間に、お便りを待ち遠しく思う時期も過ぎてしまいました。ですので、こちらからお便りを差し上げます。・・・

①「木枯の吹くにつけつつ待ちし間に」

・風が木の葉のように「言の葉」(便り)を届けるという発想に基づく。

『後撰集』

「1289 ははそ山 峰の嵐の をいたみ ふることのはを かきぞあつむる」

『斎宮女御集』

「216 まつかぜに こころをよせて たのむ身を とふことのはの あだにもあるかな」

②「おぼつかなさ」・・・待ち遠しさ。

『拾遺集』

「817 ながめやる 山べは いとどかすみつつ おぼつかなさの まさる春かな」

『後拾遺集』

「761 いかばかり おぼつかなさを なげかまし このよのつねと おもひなさずは」

 

☆あひ見ずて しのぶるころの 涙をも なべての空の 時雨とや見る

・・・あなたにお逢いできなくて耐えしのんでいた頃の涙が時雨になって降っておりますのに、ただ普通の空から降る時雨とご覧になっていらっしゃるでしょうか。・・・

①「涙」が「雨」となる発想

『古今集』

「88 春雨の ふるは涙か さくら花 ちるををしまぬ 人しなければ」

『和泉式部続集』

「222 つれづれと ふれば涙の 雨なるを 春のものとや 人のみるらん」

②「なべて」・・・並み一通りの。普通の。

 

朧月夜は源氏から木枯によせて便りが来るものと思っていたのに、来なかったので待ちきれず自分から便りをした。源氏は便りをしてもお逢いできないのに凝りてしまったと返事をする。また、源氏は、今降る時雨はあなたに逢えぬ私の涙が降っているものなのに、ただの時雨とご覧になっているかと問う歌を贈る。

 

 

おまけ

 

医大プロジェクトチームの研究に参加して下さった被験者の皆様のご尽力と、

ネンタ医師の困っている患者様を何とかして救いたいという熱意と、

被験者様に集まっていただこうとして開設したこの拙ブログの存在も少しばかり貢献して実現した論文

 

国際科学雑誌 「PLOS ONE 」の論文

「Brain Regions Responsible for Tinnitus Distress and Loudness: A Resting-State fMRI Study」

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0067778

 

二報目

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0137291

  sofashiroihana