私が普段から喫んでいるのは、煙管である。
曽祖父の遺品で、煙草盆ごと私が引き継いだ。
曽祖父もまた、その父親、祖父から受け継いだそうなので、
目立たぬながら我が家でも最古参に属する家財だろう。
田舎の家らしく我が家は物持ちがよく、倉庫には先祖の刀だの、本家から分かれた際に貰った屏風だの、戦時中我が家に分宿していた兵士の置いていった銃剣(剣のみ)だの、いろいろなものがあるが、曽祖父が愛用していたこともあって煙管の保存状態はよい。
少なくとも私の記憶にある曽祖父の煙管と、羅宇も真鍮部も変わっていないようだ。
ただ、曽祖父が没して20年以上、誰も吸わなかったため、中身は完全にヤニで詰まっていた。
貰った当初も格好をつけて銜えてみたものの、立ち昇る年月を経た煙草臭に辟易し、私が煙管喫煙に興味がなかったこともあってそのまま和風インテリアにしてしまっていた。
それを吸うことになったのは、まさに偶然の産物と言ってよい。
煙草を吸うことに決めた私は悩んでいた。
最初からシガレットでは他の煙草に挑む気力がうせてしまう。
シガレットの銘柄を渡り歩くだけで良し、となってしまいかねない。
とはいえ、最初からパイプや葉巻では、いくら金があっても足りない。
そんなときに、ふと曽祖父の喫煙姿を思い出したのだ。
曽祖父は私が小学生のころ他界した。
そのため、煙草について詳しく聞いたことはないのだが、
足元で遊ぶ幼い私を嬉しげに眺め、ゆっくり煙管をふかしていた温顔を思い出す。
常に日向の畳のような刻み煙草の匂いを漂わせていた曽祖父が、ついに起き上がれなくなってしまったとき、私は子供心に、煙草の匂いをなくしてしまった曽祖父はもう長くない、と泣き叫んだそうな。
刻み煙草【小粋】を初めて買ったとき、パッケージに鼻を近づけて嗅いだ匂いは、少し違うものの思い出の曽祖父の匂いであり、思わず涙を流してしまった。
その瞬間、私は煙管を愛することに決めたのだ。
今は刻み煙草は【小粋】と【宝船】の2銘柄がある。
どちらも好きだが、やはりどこか懐かしい【小粋】をより好むようだ。
値段としても、1箱360円で1週間はもつのだから、非の打ち所はない。
今では、一日の終わりに、仕事が終わったとき、叺から取り出して嗜んでいる。
最初の直系の曾孫の成長を最晩年の喜びとしてくれていたのだろう私の曽祖父は、平成のはじめに彼は眠るようにこの世を去った。
生涯煙草を愛し、煙管を愛した94年の生涯だった。
小粋 たばこ 10g 【キセル 煙草盆 かますを同時にご注文時のみ限定商品】JT刻み煙草
