Angel Down 狂乱する少女編 第12話『主従関係』 | 東方自伝録

トップMapAngel Down 狂乱する少女編 >『主従関係』


前回→AD狂乱する少女編 11話『運命の糸』


注意事項


1、これは東方projectの二次創作小説である


2、オリキャラが登場するのである


3、原作設定一部崩壊、キャラ設定一部崩壊しているのである


4、これらの要素のひとつでも嫌なのであるなら、すぐに戦略的撤退をするのである


5、以上のことが大丈夫ならば、スクロールで読んでいってくれ









八雲藍は今朝の紫の様子を見て、こたつの中で待機していた。
主である八雲紫の言いつけを守ってここにいるのである。


「それにしても今朝の紫様の様子には驚いた。一体、何があったというのだろうか」


私は今朝の紫の様子を思い出していた。
冬眠中であるはずの紫が突然起床し、慌ててどこかへ向かった。
毎日ぐーたらして過ごしているあの紫が自身の苦手な冬に活動。しかも、仕事ときた。


これは、何かあるに違いない。
あの紫様をも動かす、とてつもない大きな何かが。
もしかしたら、もう異変は動き出しているのかもしれないな。

私は足早に部屋を出て、自身の部屋に戻った。
そこで身支度を整え、玄関へ向かおうとした矢先、彼に会った。


黒の短髪に、幼さが残る顔つき。
そして170を越える身長に、人間界で使われていたという学生服を着こなすその姿。
八雲藍の式神である、八雲博であった。


「藍様。どうしたんですか? そんなに慌てて」


「ああ、博か。ちょっと紫様の元へ出かけてくる」


「ええっ!? 紫様が起きているのですかっ!? 冬なのに?」


「そうだ。紫様は血相を変えてあるところに向かった。
 私も待機命令を出されていたのだけれど、心配になってきたから様子を見ようと思ってな」


「成る程、分かりました。僕も同行させてください。きっと、藍様のお役に立てるかと思いますので」


私は彼の顔をじっと見る。
彼は昔から頑固だった。
自分の決めたことには誰が何と言おうと曲げない、そういう精神の持ち主だ。
今私が何を言おうと、彼は絶対に私の後を追いかけるだろう。


――何を言っても無駄か。


そう確信した私は、ひとつ溜息を吐いて優しく語りかけた。


「……分かった。でも、もし私に何かあったら、橙のことを頼むぞ」


「はいっ!」







博麗神社に移動中の藍と博はここ、人間の里を訪れていた
人間の里は辺り一面中白い霧に覆われており、一寸先の様子を確認するのさえ困難な状況であった。


「何なんでしょうか。凄く……嫌な予感がします」


「私もだよ。これは一体……?」


目の前の光景に得体の知れない恐怖を感じていた。
少なくとも私の知ってる人間の里は、こんな人気のない静寂だけが支配された世界ではなかった。
これではまるで、人一人住まぬ廃村のようではないか。

どうやら博もこの光景を前に足を震わせているようである。
彼自身も何度か人間の里には訪れたことがあった。
だからこそ理解できる。
この場所は、自分たちの知っている場所ではないことを。


「ともかく先に急ごう。いつまでもここに留まっている必要はないからな」


私の言葉に彼が頷くと、足早にここを通り抜けようとした。
だが、いくら走っても先に進めない。
まるで、霧の迷路かのように。


「どうして……どうしてここから抜け出せないんだ?」


博がそう呟くと、無意識の内にぽつりと答えた。
おそらく彼に向けた言葉ではなく、自分に語りかけるかのように。


「もしかしたら……私たちは閉じ込められてしまったのか?」


「えっ?」


彼はすぐに私の顔を見る。
彼の顔は驚きと悲しみの二つの感情に満ちていた。
自分の式に心配させるなど、私は主失格だな。

彼が何か口にしようとしたとき、空気が一瞬凍るように冷たくなった。
すぐに身構えて目を凝らす。
その先にいたのは、一人の少女であった。

黒に近い緑色の髪に、腰まである長い髪。
まるで西洋人形のように白く透き通った肌が、その少女の魅力を引き上げていた。
そしてその鋭い瞳と、腰に差してある刀のようなものの存在のおかげか、
その少女を敵として認識することは容易であった。


「何者だっ!?」


その少女をじっと睨む。
私の言葉に反して、少女は何も答えない。
そして少女は無言のまま、腰に差してあった刀を抜き出す。
その刀は黒く輝いていた。まるで黒の宝石――オニキス――かのように。


「やる気か」


胸元からスペルカードを取り出そうとしたとき、自分の前に誰かが出たのに気付いた。


「藍様、ここは僕に任せてくれませんか?」

博のその言葉に、驚きを隠せなかった。


「博っ!? 何を言って……!」


「藍様。紫様の仕事を助けるには藍様の力がないと無理です。
 ですから、藍様は先に行ってください。僕は後から追いかけますから」


彼の言葉に、私は戸惑っていた。
確かに主である紫のほうが大事だ。
だからといって、彼を見捨てることができるのか? 
いや、できないだろう。


「自身の式神よりまず先に自身の主を守れ。
 それが藍様が教えてくれた式神の理……でしたよね?」


式神の理、第1条。

『如何なる状況であろうとも、主の身を案じろ』


その言葉と彼自身から湧き出る迫力に、私は観念せざるおえなかった。


「……分かった。博、私は先に紫様を助ける。絶対に来るんだぞ。約束……だからな」


その言葉に、博が力強く頷いた。
私が足早にその少女の横を走りぬけた。
もし彼女の目的が私と博、二人を始末することであったなら、何かしらの動きを見せるからだ。
だが彼女は何もしなかった。だとすると狙いはまさかッ!


「博ッ! 気をつけろ! そいつの狙いは――」


そう言おうとして振り向いたとき、目の前に映った光景に唖然せざるおえなかった。
いつの間にか霧が晴れており、本来の人間の里と化していたのだ。


――まさか、罠だったのか。


そう確信すると、身体の奥底から後悔の念が押し寄せてきた。
だけど、私は足を止めることはできない。
足を止めれば彼との約束を破ることになるし、何よりも主を重要視しなければいけなかったからだ。


――すまん、博。先に行くから絶対に追いついてこいよ。


心の中でそう謝罪すると、私は足早に先に向かった。








僕はひとつ溜息を吐くと、その少女と対峙した。


「まず、ひとつ問いたいがいいか?」


僕の言葉に対し、少女はこくりと頷いた。


「ひとつめ。何故、藍様を見逃したのか?」


問いただすと、少女はゆっくりと口を開いた。


「あやつは我の目的とは関係ないからだ」


「なんだよ。ちゃんと話せるじゃないか。
 じゃあふたつめ。この世界は一体なんだ?」


「この世界は、我の世界。我の境界」


「成る程。だからここには人一人さえいないわけか」


「なら、最後の質問だ。お前の狙いは……僕か?」


目の前の少女はゆっくりと頷いた。


「そうか……。なら、戦うしかないか。僕の名前は八雲博。主である藍様の命により、お前を倒すっ!」



僕の叫びに対して、目の前の少女はゆっくりと刀を構えた。
その動きはさながら熟練の剣士かのように。


「我の名はラケシス。汝の運命を絶つ剣だ」


感情の篭っていない声で少女、ラケシスは叫んだ。
それは人知れず始まる、死闘だった。








満身創痍リスト:


パチュリー・ノーレッジ
十六夜咲夜
レミリア・スカーレット
犬走椛
射命丸文
小悪魔
サリエル
エリス
ユキ
マイ
夢子


                   To be continued...

次回→3月21日公開予定