万引き犯と僕 | Centotrenta 代表 加藤いさおのBLOG                        

昨日は自身の万引き体験でした

今回は

そう、店での体験

20ほど前の話し

60代くらいの白髪のおじさまが

ぷらっと店に来た

とてもオシャレな方で

ローリングストーンズのシルバーの

ネックレスを着けて

ビンテージのデニムを履き

当時の僕にとっては

ファッション玄人だった

その方は

伊藤と名乗り

宝塚でホテルを経営していて

車はいつも日航に停めていると

いかにも

セレブな雰囲気で

また、喋りが面白い

伊藤さんは

いつも店に来て

1時間くらい喋るが

一度も商品を買った事が無い

「自分の接客は

まだまだこの方のハートに

響いていないのだなと

純粋に思っていた

ある日

店の外に出ていると

向こう側から伊藤さんが

歩いてきた

僕に気付くと方向を変えて

帰って行った

「??」となったが

気にもしていなかった

少し時間が経って

伊藤さんが店に来た

椅子に座り

話し込んでいる時に

ふと

タワーレコードのビニール袋から

見覚えのあるベルトが

チラっと見えた

おかしいなと思いながら

少し誘導した

「伊藤さん、ウチのベルト

今見えたのですが

買ってくれました?」

少し慌てた様子の伊藤さん

確信した

「こいつは・・・」


「そのベルト見せてくれません?」

「ん?ああ?これな

こらはもらってん」


「そうなんですね

一度見せてください

ウチのベルトに似ているので」

渋々出すと

やはりうちのベルトだった

このベルトはサイズ調節ができるのだが

店の者にしかできない

長いベルトだったので

不自然なところに穴が開いていた


「伊藤さん・・・

これ盗みましたよね?」


「盗んでない」


プチンと来た僕は

少し言葉を荒げた

「こっちは信じて

話すの楽しみやったのに

あんた、商品パクる為に

わざと近づいてきたんやろ?」


「そんな、つもりは

本当にそんなつもりは

勘弁して下さい」


「許せるわけないやろ

店のスタッフもどんな思いかわかるか?」


当時は女性スタッフも居たので

なにかあったら

危ないので

「ストックに行って.あと警察呼んで」と

小声で話した


追い込まれた人間は

何をするかわからない

しかし僕も当時

20代でまだまだ若かった


「絶対許さんぞ

人の気持ち踏みにじりやがって」

そんな言葉のやり取りをしたような

記憶がある


モノを盗む

それは

その人の心を壊す

あの幼少期の頃に体験した

「盗み絶対悪」が

どうしても彼を許す事ができなかった


近づいてきて

警戒心が解けた時に

パックリ行く

こいつは詐欺師だと

嫌悪感が先行した


サイレンと共に警察が来た

驚いた彼

警察に事情を説明する僕


何事かと店の前に

人だかりができる


伊藤さんは免許証を

警察に見せた

なんと本名は佐藤だった・・・


ずっと身分を隠しながら

僕らに近づいてきていたのだ


彼は連行された


なんともいえない

虚しさが残り

スタッフ達に

「警察呼んでくれてありがとう」と言う


彼女らもショックを隠しきれない

様子だった。


万引きは絶対に

いかなる理由があろうと

ダメだ。

あの日からずっと

そう思い生きてきた自分

僕は許してもらえたし

矛盾してるようだが

だからこそ

絶対に許せなかった。


そして

月日が流れ

百貨店で

奴が正面から歩いてきた


また僕に気づいて

慌てて方向転換して

去って行った


百貨店のマネージャーに

報告すると

「ええ?めちくちゃ

フロアを徘徊していて

店のスタッフ達とも仲良いですよ」


「だめです、それが

詐欺師の手口です」


「わかりました

証拠をおさえてないので

警戒しておきます」と

百貨店のマネージャーが言う


まだやってるのか・・・

心の底から哀しくなった


警察に連れて行かれた後

改心しているものだと思っていたが

彼はもう

やめられないのだ

1円誤魔化す人間は

いくらでも誤魔化すのだ


我々店側の人間は

どう防ぐか

これは

イタチごっこですね。

万引きは軽い罪ではなく

大罪です。

それが例え何十円の

お菓子であろうとも。