ウチの犬の物語 | Centotrenta 代表 加藤いさおのBLOG                        

ミニチュアピンシャーという犬種を

ご存知だろうか?

ドーベルマンを小型にしたような

容姿の犬なのだが

今日はその犬との物語を綴ろう。

時は約17年前に遡る

私は、31歳だ

若い・・・・

 

人それぞれ価値観はあるが

私は生命をカネで買う事に少し抵抗を

感じている一人で

 

それはなぜかと言うと

我々世代は

普通に雑種の仔犬が

よく捨てられていたり

 

野良犬が産み落として

そこらじゅうに

群れを作っていた時代である

 

以前もブログで書いたが

団地住まいの我々は

犬を拾ってきては

「飼われへんねんから

飼い主探しなさい」とよく

母に言われて

飼い主を探していた時代だった

 

 

生命の尊さも

そういう経験で学んだのかもしれない

 

尚更「イノチはお金で買えない

ただ一つのモノ」と

子供ながらに理解していたので

 冒頭でも述べたように

ペットをお金で買う事に

多少の抵抗がある

 

何故か17年前の私は里親募集の

保健所やペットショップのサイトを

よく調べていた

 

堺市の

とあるペットショップの

サイトに辿り着いた

 

「生後2ヶ月ミニピン血統書無し

貰い手のいない場合は

保健所に行く」というニュアンスのものだった

 

私はそのペットショップに連絡をして

見学予約をした

 

鳥籠のような狭いケージに

入れられていた彼女は

上目遣いでブルブルと震えていた

 

「人を信用していない目だな・・・・」

 

「この子ちゃんと

外に出すのもここに来て

初めてなんすよ」と

アルバイトらしき若い女の子が

平気で残酷な言葉を発する

 

「こっちおいで」と言うと

その彼女はブルブルと震えながら

ぎこちない歩き方で

私の膝の上に乗った

いや・・・・・しがみついていた

まるで

「助けてくれ」と言っているようだった

 

 

「連れて帰ります」と言うと

 

その店員は

 

「血統書無いですよ、良いのですか?

ワクチン代はいただきますよ」と

言うので

 

「はい、もちろん」と言葉を投げ捨て

彼女を連れて帰った

 

あまりにも小さい

 

当時一人暮らしだったので

 

「さて・・・・どうしたものか?」

 

イノチを引き受けるとは

とても重責な問題で

 

まだまだ私も若かったので

きちんと留守番ができるまで

飲み歩きもできないな・・・・とぼんやり

考えていた

 

「名前は・・・・・ピコだな」

 



イタリア語で小さいという意味

 

ここから彼女と私の生活が始まった

 

おすわりやおて

まて

 

そんな事を覚えていく彼女が

愛おしくて仕方なかった

友人の誘いも断って

仕事終わり

一目散に家に帰る日々が続いた

散歩に行って

公園でリードを外して

一緒に全速力で走ったり

 



明け方寝室をノックするので

ドアを開けると

ベッドに潜り込んできて

それが癖づいて

いつも一緒に寝るようになった

 

2年が経ち

マンションからクレームが出た

私が仕事に行っている間寂しくて

ずっと吠えていたらしい

そのタイミングで

母が住んでいた

父名義の家を

父が

手放さなければならないという事になり

母は次の家が見つかるまで

私の家に少し住む事になった

 

ピコは驚くくらい母に懐いた

 

意を決して

箕面に古いマンションを母に買った

母は断ったが

息子として

本当に迷惑をかけてきたので

まずはここからと思い

初めて大きな買い物をした

ようやく母が住める場所が

できたのだ

僕にとっても実家ができた

なんだか嬉しかった

「悪いねんけど箕面でピコの

面倒見たってくれへんか?

一人暮らしやし寂しく無いやろ」と

半ば強制的に母にお願いした・・・笑

 

 

そう本当の章は

母とピコの物語で始まる

 

それこそ

ずっと2人は一緒だった

 

一昨日

東京出張から帰っている最中に

連絡があった

「もうあかんと思う・・・・」

 

僕は慌てて実家に行った

 

電話が鳴った

 

嫌な予感がする

 

「亡くなった・・・・・」

 

あと少しで到着するというところで

彼女は逝ってしまった。

 

彼女を抱き抱えると

まだ温もりが残っていた

 

いつも抱いているあの感じと

少し違うとすれば

彼女は私の口を舐めることも

抱きつくこともなく

ただ「かたまっていた」

目が開いたままだ

「よう頑張ったな

間に合わなくてごめんな」と

目を撫でると

彼女は目を瞑った



「おまえは幸せだったか?」

その問いを打ち消した

「母と出会えて

おまえは幸せだったもんな」

1年間の闘病生活をしていた

彼女の体重は

2.5キロだったと聞いた

あまりにも軽すぎる

しかし

あまりにも

重すぎる

それがイノチなんだと

改めて思い直した。


今、思えば

彼女はミニピンではなく

雑種だったかもしれない

血統書?

そんなもので

犬の人生を左右するのか?

イノチってそんなものじゃないよな。

さあ

まだ見ぬ世界で

自由に走りまわっておくれ。

17年間 シンプルな愛を

ありがとう。

合掌。