少年時代 | Centotrenta 代表 加藤いさおのBLOG                        

蝉の鳴き声が夏の到来を

教えてくれる。

これだけは「あの頃」と

何一つ変わっていない。

変わってしまったのは

私が歳を重ねたという現実だ。

子を授かったという真実だ。


蝉の鳴き声で

先ずフラッシュバック

されるのが

夏休みである。


「あと何日行けば

夏休みだ?」

お気楽な悩み事が

少年の脳裏を支配する

大量の夏休みの宿題なんて

夏休み初日にほとんどやり終えたら

良いではないか。


後は遊ぶだけ。


少年は毎年同じ事を考えるが

また

同じ繰り返しで

夏休み最終日に

泣きべそをかきながら

「初日にだけ手をつけた痕跡のある」

宿題をやる事になる

学習能力ゼロなのは

ずっと変わらず

痛い目に遭おうが

またケロリと忘れてしまう。


それは少年の長所でもあり

最大の短所でもある。


団地の納涼大会の

「炭坑節」がその地域一帯に

鳴り響き

子供も大人も

お祭りムードになる。


母が納涼大会のやぐらに上がって

司会をしていた

少年はそれを照れ臭く

見守りながら

どこか誇らしくもあった。

夜更かしが許される日

子供達は

団地の廊下で

ノコギリクワガタを見つける

そのノコギリクワガタは

威風堂々としていて

最初に見つけた友人に

懇願した

「どうしても欲しい」

「ええよ、おばちゃんに

さっきジュースもらったし」

一つ上のガキ大将は

優しく少年にノコギリクワガタを

くれた。

ノコギリクワガタが

自分のものになる

そんな夏休み

少年の気持ちは高揚した


朝のラジオ体操にも毎日行こうと

決心した。

何か嬉しい事があれば

嫌な事も苦ではなくなる

今思えば

マイナスをプラスに

脳内変換する事を

「あのころ」に学んだのだろうか?


団地というコミュニティは

マンションのような

上品さはなく

皆が家族のように

助け合う

その名の通り

団結する地場の人々の

集まりなのだ。

蝉の鳴き声が鳴り響く

このコンクリートジャングルで

目を瞑ると

1980年代の

少年の気持ちを思い出す。


誰かが困っていると

助ける。

野良犬を子供達全員で

面倒を見る

その犬は

少年達を学校まで

見送り

そして帰ってくると

尻尾をふって迎えてくれる

それが永遠に続くものだと

少年達は信じていた

その犬が保健所に連れて行かれたと知る

トラウマが残る。

同時にイノチの尊さを知る

人間の残酷さも知る


父になった

「少年は」

倅を川に連れて行き

蝉の鳴き声で

心が1980年に飛んでいた。

彼が小学生になると

「夏休みの宿題は

毎日やりなさい。」と

心の底から教える事だろう。


そしてもう一つ

どんな事にも

「ありがとう」と言いなさい

その言葉は

君を助けるし。

人を助けるでしょうと。

蛍が出る川は

あれから

40数年経っても

まだ蛍が生息しているらしい。



世の中

捨てたものじゃないな。

さて、仕事という

終わりのない宿題を

始める事にしよう。

何処かで

「月が出た出た〜.」と

炭坑節のBGMが

流れている事だろう

題名は知らないが

何故か心に残る音楽

現在の少年達にも

「そういう夏」

になって欲しいものである。