とある靴磨き職人のモノガタリ | Centotrenta 代表 加藤いさおのBLOG                        

6年前

いきなり舗に「あの~靴磨かせてくれませんか?」と

飛び込みで入ってきた若者がいた

 

決して喋りが上手じゃないその青年

聞くと 「本町の雑居ビルの中にある
靴磨き専門店で店長してまして
店長と言っても僕一人なんすけどね」と言う
瞬時にそのハートの綺麗さと 誠実な人間性に私も惹かれた

「自分おもろいやん、じゃ俺の靴磨いてや」と声を掛けた一言から

「縁」が始まった

 

今も弊社で取り扱っている

ドイツの靴「ハインリッヒディンケルアッカー」

この靴はコードバンを使う靴が多く

 

私も磨くのに苦労していた

 

コードバンは独特の光沢があり

とてもデリケートな革で

雨の日に履いてしまうと

水滴などが染みになってしまう

厄介な代物だ

 

「なあ、今度ハインリッヒの受注会うちの舗でやるねんけど

お前、来るお客さんの靴磨くイベントしてみいへん?

顔も売れると思うよ、こういう商売自分を売り込まなあかんぞ」と

偉そうに言った 笑

 

あれから6年・・・・・・・彼は 弟子のような存在の子が8人増え

ルクアの中にインショップもかまえられるほど

技術も知名度もあがり

 

己の腕だけでのし上がっていった

生粋の職人だ

 

そんな彼が

この前久しぶりに舗に訪ねてきてくれた

 

「どしたん?順調か?」

 

「はい、順調なんですけど僕退職するんです

自分で商いをやろうと思って

その前にサンフランシスコに行って

まだ日本にはない技術を学びに行こうと思いまして」

 

「サムライやな、じゃあさ渡米する前に

ゲン担ぎで

俺の靴磨いてや」と言う

 

「勿論っす!」と

本日来てくれた

 

彼が所属するアメリカの靴磨き協会のワッペン

image

 

「磨くか死ぬか」

 

格好良すぎる

image

image

「日本の靴磨きは表面をいくら綺麗に光らせても
その後お客さんがまた磨く事を考えていない人が多いんですよ
だから ある程度お客さんが磨いても光沢が残るように配慮するのが
僕は大切だと思うんです」

 

「ほう・・・・・・・・」

 

我々服屋にも相通ずる事

 

「売ったら売りっぱなし」

 

その場しのぎの売り上げが欲しいから

ゴリンと押し売りをしてしまう

 

それではダメダ

 

「これは似合ってないのでやめときましょう」と言える現場人が

果たして今、何人いるのだろうか?

 

「俺な、お前のような靴磨き職人が居て 靴をリペアできる人が居て
理容師さんが居て そして服屋がある、そんな夢のようなワンフロア空間

いつの日か作りたいねん」と少し真剣に話す

 

「それ良いですね」

 

「靴磨いといて、その間スーツ作っとくからって言われてみ
なんて魅力的やねん 笑」

「ほんまですね、なにかおもしろい事できそうですね」

そんな夢を語りつつ

 

舗に戻ると

10坪の現実が待ち受けていた

「せまっ 笑」

 

・・・・・・・志は大きく!

 

大岡

アメリカでまたひとつ大きいヲトコになって

戻ってきておくれ

 

鮭が産まれた川に戻ってくるよふに・・・・・・・・

 

 

image

 

また

会おうぞ!!