エレキギター関連の機材はもちろん好きですが、同等にピュアオーディオ系のお話も好きな店長白形です。
と言っても、情報をくまなく追いかけているわけではないので、純粋なオーディオファンからすれば今更な約4年ほど前の話題を最近知ったのです。
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SONY PS-HX500 実勢価格 ¥70000前後
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引用元リンク (アナログレコード特有の音響効果をデジタルで再現 SONY)
SONYさんが開発された”バイナルプロセッサー”については、オーディオファンの方やウォークマン愛用者の方にとっては今更な情報であると思います。
この”バイナルプロセッサー”の先進性は、やはり、古くから言われてきた、
「CDで聴く音質、音響よりもアナログレコードの再生による音質及び、音響のほうが優れているのではないか」
という、曖昧な基準や主観だけで議論されてきたことを、科学的な見解と方法論で新たな評価軸を築こうとされているところです。
人間の耳の性能は生物としての個人差もありますし、生まれ育った環境や体験や経験値など個人のバックボーンによる感じ方の差異も多分にあります。
ただ、多くの人が実際に感情として抱いてきた感覚を現在の科学の分析力を使うことによって検証してゆくことはとても大切だと感じます。
アナログレコード再生の良い現象だけをデジタル再生に反映させる技術、バイナルプロセッサーの特徴は大まかに3つ。
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(バイナルプロセッサー)
①レコードプレーヤーのアームの構造に由来する低域共振を音源に加えるとスピーカーユニットの動き出しが物理的に早くなり、結果、音の立ち上がりと、低域の伸びが良くなる傾向が見られる
②レコードプレーヤーの針とアナログレコードの盤面の間に生じるサーフェスノイズとスクラッチノイズを音源に加えると、スコーカーやツイーターの初動感度が上がり、音楽成分が聴き取りやすくなる
③スピーカーから出る音の音圧によってレコードプレーヤーに置いたアナログレコード盤が共振し、その振動音が音源に加わることによって主にボーカル音声に感情がこもったような音質変化が生じたり、リスナーは音楽との一体感の向上を感じるようになる
理論的な詳しい話はリンク先のテキストを熟読していただくとして、ここでは、
”エレキギター機材オタク兼、オーディオマニア”
という、私の特異な立場からの希望的観測を述べていきたいと思います。
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(デジタルモデリング系ギターアンプ)
①楽器メーカー各社の努力により、さまざまなデジタル解析法やモデリング技術が発展途上
②デジタルによる音質づくりによって、歴史上の様々な名機に近いものが再現可能となってきた
③機動性や安定性、及び価格面でもデジタルによる音の再現には優位性がある
④一方で、アナログアンプ、特にアナログチューブアンプとの比較において不満の声もある
これは、ピュアオーディオ界隈で議論されてきた、
”CD音源含む、デジタル音声ファイルの音質 VS アナログレコードの音質論争”
これに非常に似た構図を持つ議論が音楽業界、特にエレキギタリスト中心に議論されているのではないでしょうか。
”デジタルモデリング系アンプの音質 VS アナログチューブアンプの音質”
デジタル系ギターアンプが持つ、短所ではないかと疑われている点を私見ながら列挙してみましょう。
(デジタル系ギターアンプの泣き所)
①演算処理時間に由来するレイテンシー、つまり音の立ち上がりが遅いのではないか
②音の波形をPCM方式でデジタル化する際の、量子化ビット数とサンプリング周波数の限度に由来するダイナミックレンジの狭さを体感として感じるが、プラシーボ?
注=ダイナミックレンジ=最小音と最大音量の幅
補足すると、①についてはわりと理解しやすい時間的な発音までの遅れであるので万人が感じやすい点であると思います。
②については、縦軸と横軸を持つグラフの精細度、稠密度を想像していただくと理解しやすいかもしれません。
縦軸=音の大きさの段階=ビット数(例16ビットとか24ビット)
横軸=1秒間に区切るサンプル頻度=44.1khzは一秒間を44100回に区切ってサンプル化
現段階での主流は、縦軸24ビット×横軸96khzになりつつあり、将来的にはもう少し高精細にデジタル化されるようになると見込まれます。
ここまで読まれた賢明なギタリスト諸氏、もうお分かりですよね。
どんなに演算能力が上がってレイテンシーが改善されても、実際に電気信号を音にするのはスピーカーユニットである、という当たり前の部分に注目している点が、今回話題にしている”バイナルプロセッサー”の特異点です。
SONYの優秀なサウンドエンジニアの方が科学的な違いとして検証されたデジタル音源の音の立ち上がりの遅さは、デジタルの長所でもある無音状態の完全無音に由来する、スピーカーウーファーを物理的に動かし始めるときの初動感度を下げる”静止摩擦”ではないのか、ということらしいのです。
つまり、動いていない物体を動かし始めるときに最もエネルギーを必要とするという物理法則によって実際の発音が遅れる、というとてもわかりやすい理由がひとつ解ってきたことになります。
識者=「長所か短所かを見極めるというのは、それを使う条件によって異なる」
そんなことも思い出します。
検証実験として計測したわけではないですが、体験に照らすと、アナログチューブアンプは常に人の耳には聴こえにくい範囲での周波数のノイズが出ていそうです。
仮にそうだとすれば、微細な音信号がギターアンプから出力された際、ノイズ成分によって常に微細に動いていたスピーカーユニットの初動が早くなり、音の立ち上がりも早く感じられるのではないか、という推察ができます。
これをデジタルギターアンプの技術に応用すると、①の立ち上がりの悪さの一部解消が可能かもしれません。
念のため付け加えておきますが、本稿の後半部分は、完全なる私の妄想が多分に含まれていますので記事内容を鵜呑みにしないようお気を付けくださいね。
②のダイナミックレンジについては、デジタル機器の根幹たる演算処理能力の進歩を待つだけです。
いずれにせよ、新たな観点による音の立ち上がり方の改善の可能性が見えてきた感があります。
まあ、無学な私ごときがココでいまさら語るまでもなく、もうすでに実装しようと研究がなされているかもしれません。
もしくは、もっと斬新な手法にて楽器用デジタルギターアンプの改善方法の研究が進んでいるかもしれません。
でも、私がこの”バイナルプロセッサー”に一筋の光を感じるのは、いままで曖昧に語られてきた、
*アナログレコードの音を心地よいと感じる
*チューブギターアンプの音を心地よいと感じる
ここに最新科学のメスが入った、と思えたことです。
音は物理的な空気振動ですから、人間側の”感性性能”の部分だけでなく、気付きにくい理由によって違って聴こえるものと思います。
以前の記事にて語った”CD音源でカットされた超高周波を含む音”により音質や音響が違って感じられるというお話も思い出してください。
「超高周波を豊富に含む音というのが、心と身体に色々とポジティブな影響を及ぼす」
この観点と、今回の”バイナルプロセッサー”という観点、デジタル音源の未来を占う際にはとても重要な部分であることは間違いありません。
ひいては、我々ギターオタクの未来をも照らしてくれることを希って、発展を見守りたいと思います。
メンテナンスに気を遣いながら、良質なチューブを常に確保しつつ手間をかけてチューブギターアンプを使っていくことによる歓びもあります。
しかし、夢や希望を持ってギター道を邁進する若者たちが、もっと気軽にビンテージ機材の良さに触れられる世の中になれば、と、いつも思っています。
「概念言語の驕りを感じられるものは面白い」
音の迷宮は広大であるから面白いのかもしれませんが(ええっ、始めから書き直せっ)
それではまたいつか、店長白形のブログでお会いしましょう(もっと更新しろよっ)