エンライト代理人チームです。
新型コロナの検証シリーズ記事を3月中に再開します。連載10回とする予定です。
ただしその場所はエンライト妹・美雨さんのブログとさせていただきます。
美雨のひそひそ、こちょこちょ
手始めに、最近の国内事件・ならびに国際情勢について検証したいと思います。
先日、物議を醸した出来事がありました。
聴覚障害者の逸失利益についての裁判です。
「裁判所は差別を認めた」両親が無念の思い 聴覚障害の11歳女児の逸失利益は“全労働者の85%” 重機死亡事故めぐる損害賠償訴訟で大阪地裁が判決 ABCニュース
逸失利益とは「生きていれば将来得られるはずだった収入」を差します。
事故死した井出安優香ちゃん(当時11歳)は聴覚障害者であり、大阪地裁はこの子の逸失利益を「全労働者の平均賃金の85%」と認定しました。
ご遺族はこの判決に対して「差別だ」と怒りをにじませました。
裁判官にとって難しい判断だったはずです。
判決文を精査すると、苦心の跡が伺えます。
将来のことなど誰も分からない。
平均値はあくまで平均であり、その数値に当てはまらない人もいる。
重度の障害者である乙武洋匡さんは、一般的なサラリーマンの何倍も何十倍も稼いでいるはずです。
そのような障害者もいる反面、低所得の障害者も多いです。
仕事に様々な制約があるからです。
電話・および取引先を訪問する形態の業務もできない。
代理人チーム員の体験を紹介しますが、社内で聴覚障害者と業務上の打ち合わせやコミュニケーションをとるとき、健常者と異なる手段を使わざるを得ないことがあります。
連絡したいとき、口頭で説明できず、いちいち紙に書いて手渡すなど。
「手話」という手段もあります。
でも、全社員に習得させるのは現実的じゃないし、コストもかかります。
遠くにいる人にはLINEなどチャット形式のツールを用いる手があるけど、目の前の人にも同じ事をするのは非効率的です。
ちなみに井出安優香ちゃんは手話を必要としなかったそうです。
相手の口の動きを観察し、意味を理解する能力に優れていたとのことです。
でも、常に100%理解できたとは言い難い。
エンライト氏は身体障害者でした。
サラリーマンを経て、起業しました。
障害が重かったため、サラリーマン時代は他の社員に迷惑をかけることが多かったと…。会社としても障害者のために色々なコストをかけたとのことです。
そのためエンライト氏は会社に対して感謝こそすれ、不満は一切述べなかったそうです。
井出安優香ちゃんの裁判…
誰も未来のことが分からない以上、安優香ちゃんの逸失利益も分からない。
だから過去のデータを参考にするしかないのです。
そのデータに照らすと、健常者と同じ100%にするのは、やはり難しい。
でも、60%では低すぎる。
裁判官としてはその中間の85%が妥当だと判断したのでしょう。
ネットの様々な声を集めると、やはり8割以上の人は妥当な判決と評していました。
「100%にはできないって事で、85%に設定した今回の判決は妥当かと。
80じゃなく85ってところに裁判官の苦悩と配慮がうかがえる」
しかし、少数派ながら「差別だ」という怒りの声もあります。
どちらの声が正しいのでしょう?
次のような意見もありました。
↓
「賠償は命の値段ではない。将来いくら稼げるかというだけの話。
実際、事故当時の年収と年齢ででほぼ機械的に判断される。学生であれば平均年収で性別、学歴によっても差がでる。
これを差別と言うなら一律に同額としないといけなくなる」
まさにそこですよ。
人それぞれに背景も条件も違う。なのに誰に対しても一律に同額にすれば、いちじるしく不公平な話になると思いませんか?
「逆差別だ。許せない」と言われて、バッシングされるかも?
安優香ちゃんの父親・井出努さんは、85%の逸失利益に対し「裁判所は差別を認めた」と語りました。
母親の井出さつ美さんは、「どんなに努力しても、ただ聴覚に障害をもっているだけで、その子の人生を否定されないといけないんですか」と、悔しさと怒りをにじませました。
ご両親の言いたいことは分かる気もするけど、裁判官をここまで悪し様に糾弾する姿勢には不快感を覚えました。
裁判官は決して娘さんの努力を否定したわけじゃないし、人生を否定したわけでもないでしょ。
担当した裁判官は本当に悪党ですか?
なぜ判決にここまで酷い言い掛かりをつけるのか?
障害者割引(特典・減税・免税)
https://di-agent.jp/tips/entry079.html
上のリンクを見ても分かるように、障害が重い人には公的支援・控除・特別手当などのサポートがあります。
なのに、こんな時だけ健常者と同じ扱いにしろ…と言うのですかね?
ふざけんな、と言いたい。
公的支援や特別手当などの財源は、私達が納めている税金です。
もし健常者と同じ逸失利益を求めるならば、今まで得てきた特別支援や手当のお金を返却すべきです。
(返却と言っても、11歳の時点では得られない支援金や控除もあるので、ここでは逸失利益から「差し引く額」を含めた話だと理解してください)
そうでもしない限り、逆差別になりますよ。
健常者に対する逆差別です。
健常者が得られるはずだった金額を上回る利益を得ようという話ですから。
賢者テラと名乗るスピリチュアル指導者がいます。
氏は2つの障害を抱えており、その一つが発達障害です。様々な支援を受けていました。
彼のブログは一時期「映画の批評」で溢れていました。有利な条件で映画鑑賞が出来る特典を受けていたからです。
それにも関わらず、マスコミのインタビューで「発達障害はいわゆる障害ではない。一つの個性だ」などと宣った。
支援・特典を貰ってる分際で、こんな事をぬけぬけと言い放った。
だからエンライト氏は徹底的に検証し、賢者テラ氏の欺瞞を突いたのです。古参の読者は覚えておられるはず。
そもそも、この種の問題では「差別」というレッテルを安易に貼るのは言語道断。
絶対に避けるべき。
対立概念としての「逆差別」という泥仕合が始まるからです。全ての人に同等の報酬を与えた時に…。
大阪地裁は無茶苦茶な判決を下したわけじゃないのにね…。
技術の進歩により、聴覚障害が何の問題も生まず、生活上でも仕事上でも何らハンディキャップとならない時代が来る可能性にも言及していた。
そこまで踏み込んだ判決文であり、画期的なことです。
しかし、しょせん将来の話でもあるよね。
未来は確定しておらず、誰も正確な予想ができない。
なので、これまでに蓄積された過去のデータに基づく最終判断を下すしかないわけ。
今の時代、安易に「差別」「蔑視」というレッテルを貼り、すぐ被害者面する人が激増しました。
似非リベラルの影響だと思います。
私どもは正直申し上げて、この種の人たちとは関わりたくないですね(苦笑)。
他人事ではないからです。
現代社会では誰もが加害者になる可能性があります。
被害者面している人だって、次の瞬間には加害者になるかもしれない。
何の過失もない人の言動をあげつらって攻撃し、簡単に炎上事件が起こってしまう時代です。
確かに悪質な差別主義者もいます。
セクハラ、パワハラ、モラハラなどの問題もあります。
本当にハラスメントがあった時、それは許されないことだし、解決すべきです。
しかし、何の問題も無いはずの言動すら問題視され、レッテルを貼られ、炎上事件に発展するケースも後を絶たない。
被害者面した人が大騒ぎし、同調した人たちが加勢するわけです。
それゆえ簡単に「差別」というレッテルを貼ってはいけないのです。
差別だと断罪した瞬間、そこに「加害者と被害者」という関係性が成立してしまい、冷静な議論が出来なくなってしまうのですよ。
安優香ちゃんの事件は、これを期に逸失利益について深く考え、議論し、必要ならば法律を整備する機会でもあったのです。
なのに差別問題にすり替えられたら、適切な議論が出来なくなる。
互いが対等な関係ではなくなってしまうからです。
元検事の荒木樹氏は次のように述べています。
↓
「逸失利益は、生きていれば得たであろう収入を仮定し、その逃した損害を、家族が相続するという考え方に基づいている。
この考え方は、一家の大黒柱であれば妥当な結論であろうが、子が死亡した場合に不合理な結論になる。親は子の収入に頼って生活する訳ではないし、幼児ですら男女で金額が異なることになる。
裁判官もその不合理さは理解しているので、なるべく平等に近づけようとした結論が「全労働者平均の85%」であろう」
まあそういう事ですよね。
大黒柱が亡くなった時、配偶者や子供たちが遺産相続するという考え方を、今回のケースでは「子供の推定遺産を両親が相続する」というあべこべな関係性の中で成立させる。
そういう裁判で100%なんて有るはずがない。両親はまだ若くて現役バリバリで働き、生活を成り立たせている。
子供の稼ぎに頼っていたわけではありません。
そのような状況で、尚且つ子供の逸失利益も丸ごと手に入れる。不条理すぎます。
苦労して働き、子供を養っている人にとって、こんな不公平な話はない。
逸失利益とはあくまで大黒柱を失ったとき、家族の生活を助けることに合理性を発揮する概念なのです。
慰謝料の話であれば理解できる。愛する娘を失った以上、遺族は慰謝料を受け取る権利がある。
でも、この裁判の争点は逸失利益なのです。
95%ならば、まだ議論が成り立つかもしれません。しかし100%だったら財産相続制度も含めて、あらゆる制度・法律を全面的に改正しなければならなくなる。
これが現時点でのエンライト代理人チームの統一見解です。
4年前の調査データのリンクを貼らせていただきます。
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/05/seiken_190510_1.pdf
聴覚・言語障がいのある雇用者の年間収入額を推計すると約309万円となり、全労働者の年間収入405万円の約76%に相当するようです。
言語障がいも含めたデータですが、およそ76%です。