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行列のできない診療所

医師の心の目で日々を綴ります

数年前に退職した元同僚(看護師さん)と街でばったり会って、近況報告をしあいました。

 

高齢のお母さまが肺炎になり、病院に入院して治療を受けていたそうで、親の介護についての話になりました。

 

高齢者にはありがちの誤嚥性肺炎だったようです。

年をとると足腰が弱るのと同じで、飲み込む動作も弱ってきてしまうのです。

 

肺炎はどうにかおさまっても、以前のように食べられなくなってしまって、点滴をしているそうで、医療者には「老衰ですから(積極的な治療はしないでいいでしょう)」と言われて、モヤモヤした気持ちになったそうです。

 

「老衰って言われてもね・・・入院する前は普通にしゃべって食べてたわけだし」

 

看護師としての長いキャリアを持つ彼女でも、今は娘としてお母さまの今後について案じているのです。

 

老衰という診断を下すのは、現実的には実は難しいです。

きちんとした診断基準がなく、医師が総合的に判断しますが、現場では家族が「寿命ならしかたないよね」と納得させるために使われている場合もあるかもしれません。

 

たしかに客観的にみれば、お母さまは老衰という状態に近づいていっているのかもしれません。

けれども、彼女がモヤモヤしてしまったのは、「老衰だからもう何もしない」というように医療者側が考えていて、お母さまが苦痛を感じても、何もしてもらえないのではないかと感じたからなのではないかと思いました。

 

「偶然にも今日先生にこんなところでばったり会って、話聞いてもらえてよかったです」

 

私も昨年両親が相次いで他界したときのことや、仕事に関する悩み事などをきいてもらって、うれしかったです。

 

こういうスモールトーキングというのは、心の健康を保つのに、とても役立つのです。