頭上のお宝 -92ページ目

ローパスフィルターよどこ行った(赤撮り半次郎 !見参)

天候不順のためファーストライトならず、言いたくてうずうず(笑)
今回初めて読まれる方は まず1回目の放送をご覧ください。

梱包


今日も亀吉は一光村の縦縞軍団の連中にいじめられていた。

「やーい、亀吉! おまえ、ノーマルなんやて?
赤いところ、写んないんだ。 だっせ~。
ノーマル、ノーマル、ノーマル、ノーマル!」

伊目次郎にも言われていた。「奴ら、普段は気の良い連中なのだが、
阪神が負けた日の翌日はあの村には近づくんじゃぁねぇぞ」
その日、たまたま亀吉は前日のニュースを見るのを忘れていた。

頭にズームアイピースをぶつけられ血だらけになりながらも
伊目次郎との約束を守っていた。

開梱


亀吉がそんな危なっかしい日々を送っていたある日。
長い修行を終えて伊目次郎が帰ってきた。二人は再会を喜びあった。
ふと、亀吉が玄関口に立っている一人の人物に気がついた。
「あの人は?」と亀吉が聞くと、伊目次郎は神妙な面持ちで紹介した。
「あぁ、紹介しよう。この方はな、おれが修行中お世話になっていた、
片口のいわし一家の若頭で赤撮りの半次郎さんだ。ほれ、亀吉、ご挨拶しろ」

片口のいわし親分からの助っ人、
ひと呼んで「赤撮り半次郎」こと、EOS Kiss Digital(改)

カメラ本体

亀吉はなにか訝しげに型どおりの挨拶をした。
そして、伊目次郎は半次郎が来たわけを亀吉に話した。亀吉は泣いた。

それは、片口のいわし親分に亀吉のことを話していた時のことだった。
「おぅ、伊目次郎さんよ。このご時世、ローパスフィルターも外さずに、
赤を狙おうてぇなぁ、てぇした根性じゃねぇか。
だがよぅ、いくらおめぇさんが秘伝オートストレッチの技を身につけても
亀吉くんにフィルターが付いてる限り、赤は出ても赤を撮ることはできねぇ。
そこでだ、うちの半次郎を助っ人に使ってやっちゃぁくれねぇか。
いや、無理にたぁ言わねぇ。だがよ、亀吉くんのお袋さんとの約束も
ある事だし、ここはひとつ、亀吉くんを堅気にさす良い潮時ってぇもんじゃぁ
ねぇかい。」
伊目次郎には、いわし親分の言葉がありがたく、親分の気持ちが嬉しかった。
だが、亀吉は納得するだろうか。今日まで、ノーマルだ、無改造だと
バカにされながらも必死で頑張ってきたのは何のためだったのか。
話を聞いた亀吉は黙っていた。必死で堪えようとするが、涙がこぼれた。

伊目次郎は言った。
「亀吉。俺たちゃぁな、ご法度のお裏街道歩く渡世なんだぞ。まともに、
お天道様の下を歩けねぇんだ。お袋さんの遺言でもあらぁな。亀吉。
おめぇにはお天道様の下を大手を振って歩かせてやりてぇんだ。
野山の景色や花や村のじぃちゃんばぁちゃんの笑顔を撮らせてやりてぇんだ」

亀吉には伊目次郎の言う事はわかるが、素直に納得出来なかった。
そんな亀吉を見かねて、赤撮りの半次郎が初めて話しに入ってきた。

赤撮り半次郎の通行手形

通行手形

「亀吉くん、おめぇさんには立派なお父つあん、おっ母さんが居たんだろう。
おれにゃぁそんな、おっ父もおっ母もいねぇんだ。物ごころついた時にゃぁ
喧嘩漬の毎日だ。ローパスフィルターなんかとうの昔に取っ払った。
あげく、シャッターまで壊しちまったぁ。もう、何にも撮れねぇ。
それからは荒れ放題の毎日だ。相手かまわず喧嘩を売り、いっそ、
喧嘩相手に殺された方が楽になる、なんてそんなバカな事を考えてた。
そんな時、今のいわしの親分に拾われたんだ。そりゃぁ、親分は厳しかった。
だけどよう。おれは生まれて初めて親の情ってぇものを知った。
ある日、目が覚めたらシャッターが治っていた。後で聞かされた話しだが、
寝てる間に、いわし親分が自分の部品を使って俺のシャッターを治してくれていたんだ。それを知った時にゃぁ泣いた。ミラーを上げて泣いたぜ。
そして、親分がこう言ったんだ『これで、お目ぇにも撮れる』って。
最初、親分が何言ってるのかわからなかった。『赤いバラ星雲が撮れるぜ』
あっと思った。俺は今まで下ばっかり見て生きてきた。そうよ、上だぜ。
この広い、大きな星空にはローパスフィルターを外しちまった俺にも
撮れる世界があるんだって事に気がついた。それからというもの、
おれは晴れてれば毎日星空を見上げて生きてきた。今では赤撮りの半次郎と
呼ばれるまでになった。それもこれもみんな片口のいわし親分のおかげよ。
亀吉くんよぅ、そんな親分がおめぇさんの事を心配して、
俺を寄こしなすったんだ。どうか、伊目次郎さんの話し、いわし親分の
気持ちをくみ取ってくれねぇか」

半次郎はそこまで一気に話した。そして、いわし親分と出合った頃を
思い出しているのか、じっと空を見上げていた。

伊目次郎は亀吉に諭すように言った。
「なぁ亀吉。この観音村の夜空はおれと半次郎さんとで撮るからよう。
おめぇは堅気になって、お天道様の下で綺麗な花や村の人の笑顔を撮って
生きて行ってくれねぇか」

亀吉の心にようやく素直な気持ちが生まれたようだ。
「わかった、俺、堅気になる。そんで、村一番の写真機になって見せる。
でも、皇座山へも時々遊びに行ってもいいだろう?」
「おぅ!時々なんて言わねぇでいつだって遊びにくりゃぁ良い。
おめぇにだって、天の川の色ぐれぇなら撮れるさ。」

さっきとは打って変わって、部屋には三人の男の笑い声が響いていた。

が、この後、赤撮り半次郎の身に大変な試練が待ち受けていようとは
この時の三人には知る由も無かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく

※ と言う事で、かたくちいわし大先生のご厚意により、
山口のじぃは晴れて波長656nmの光を捉える事が出来るようになりました。

今までは「なんじゃぁ、ノーマルかぃ、この無改造のボケ、カス、マヌケ
耳から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わして、ど頭かち割ってストローで
血ぃ吸うたろか」と、後ろ指を指される
事は無かったですが、これからはジャカスカ赤い赤い赤い天体も撮って
まいりますのでどうか、よろしくお願いします。

かたくちいわしさん本当にありがとうございました。
山口のじぃ、今日より、天体撮影を始めます。(パチパチパチ)





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