頭上のお宝 -57ページ目

隠れた逸材、辺多楠次郎現る!!

初めて読まれる方はこちらからお読みください。
第一話:無改造亀吉くん奮闘記
第二話:赤撮り半次郎 !見参

                       第三
 
 堅気に戻った亀吉。あれからはや幾星霜かの時が過ぎた。
亀吉が野の花や村人たちの笑顔を撮っている時に出来た友がいた。名前は辺多楠次郎。
彼は生まれつきローパスフィルターがなかった。その為に、心無い者たちからいじめられた過去を持っている。
亀吉も同じような経験を持つ者として、直ぐに仲良くなった。

 そんなある日、二人は撮影に夢中になり気がつくと、まわりは既に闇につつまれていた。
そして、東の空にオリオン座が迫るように昇ってきていた。亀吉はふと面白い事を思いついた。

「ねぇ、楠次郎。あのオリオンの左にバラ星雲てのがあるの知ってる?」
「あぁ、知ってるよ。赤~いドクロ見たいに見えるやつだろ。」
「うん、うちの赤撮りの半次郎さんが、今の時期はモンキーかバラだなっていつも言ってるんだ」
「へぇ、でもあれッて直焦でないとドクロまで見えないそうだよ」

 そこで、亀吉は伊目次郎からもらったおもちゃ代わりに使っているSE120を取り出して楠次郎に見せた。

「楠次郎?これであのバラ撮ってみてよ」
「えぇ!?お、俺がぁ?」
「うん、そうだよ。ローパスフィルターが無いと綺麗に撮れるんじゃないかなぁ。いや、気に障ったらごめんよ。
ただ、自分ではコンプレックスと思っているものが意外と素晴らしい価値あるものだったりするじゃない?」

 楠次郎はしばらく黙っていた。それと言うのも何れは自分も直焦撮影の技術を見につけたいとは思っていたが、
やまね村のももんが師匠から、まずは画像処理とカメラレンズでの撮影技術を身につけろ。焦点距離の違いで
見える世界の表現方法を勉強しろ。直焦撮影はそれからだ。でないと機材に頼る泥沼にはまると固く言われている。
 しかし、楠次郎は亀吉の興味とは別に、自らの可能性の様なものを見てみたい気もしていた。

「そうだなぁ、たしかにこの夏、天の川を撮った時にポツポツとやけに赤い星雲が亀吉より見えていたよなぁ」
「だろう!ねぇ、撮ってみようよ。楠次郎のお師匠さんには黙っておくからさぁ」
「いやぁ、別に黙ってなくても良いよ。最近、師匠も鏡筒のカタログ集めたりしているからなぁ」
「エッ!そうなの?あのももんが師匠が?カメラレンズの鬼と言われているあの人が?」
「うん、よく独り言で、『あぁ、200㎜の向うを撮ってみたい。いや、もっと向うを』って」
「へぇ~、そうなんだ。あのももんが師匠だと、ε130なんかが似合いそうだなぁ」
「いぃや、どうもビクセン村の鍛冶屋が作ってる VSD100F3.8て言うのを所望しているみたいだよ」
「ゲッ!!すごいなぁ。さすがフィルム時代から暗室にこもって修行を積んできた人は違うなぁ」

 そんな話がはずむ中、二人の気持ちを固めさすかのようにオリオンが一層の高さを見せてきていた。
楠次郎の腹は決まった。おもむろに亀吉の手からSE120を受け取ると、オリオンの左下を見つめた。
と思う間もなく楠次郎は鏡筒を置いた。
 それは一瞬の事だった。亀吉はやっぱりダメか、直焦は無理なのかと思った。

「やっぱりダメ?直焦は」
「いぃや、撮ったよ」
「エッ?」
「亀吉には言ってなかったけど、実は俺、ISO 12800まで感じれるんだ。」
「えぇ~っ、い、い、12800ぅ!!!!」
「うん、だって昼間はほとんど使う事ないからさぁ。使うなら今だと思って。頑張れば51200も感じれるみたい」
「す、すごい。まるで天体撮影御用達じゃない!?」
「うん、観音村や城下似根町の改造の人達と違って、俺はどのレンズでもピントは来るし、へんなゴーストが出たり
ホワイトバランスで悩んだりしないんだ。だって生まれつきなんだから。テヘッ。」

左は前記事の画像。右はももんが師匠の処理を真似てみました(テヘッ)

Wバラ


 亀吉は思った。楠次郎の隠された能力を皇座山で思う存分発揮させてやりたいと。
しかし、それには伊目次郎や半次郎の理解が必要だった。そして、一週間ほどが過ぎたある日。

「伊目次郎さん、ちょっと話があるんだ。」
「おぅ!亀吉。良いところへ来た。俺もおめぇに話があってなぁ」
「えっ?なに?」
「おぅ、それよりおめぇの話ってぇ何でぇ?先に聞かせろや」

 亀吉が話そうとしたその時、奥の部屋から赤撮りの半次郎が旅支度の姿で現れた。

・・・・・・・・・・・・つづく




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