中央アジア巡礼行記 2023年

11 サマルカンド(6) 

 

 

 また一夜明けて、サマルカンドの朝。今朝は朝食を食べてすぐにレギスタン広場へ行く。広場では、水を撒いて清掃中である。水色のドームが石畳に映し出されている。人も少なく、清々しい朝だ。今日に限らず空気は爽やかなのだろうけれど。

 

 

 

 横手に回り、ブースでチケットを買って入場する。まず、向かって左手のウルグベク・マドラサに入ってみよう。

 

 

 

 中庭は、青を中心とした濃密なタイル装飾のを回廊で囲まれている。建物が大きく装飾に統一感があるせいか、シャーヒ・ズィンダ廟群のようなくどさは感じられないから、こちらの方が好みだ。

 

 

 

 

 アーチの下は土産物屋になってしまっていて、これを残念がる向きもあるが、まあいいだろう。売り子の女性たちが衣服の間に所在無さげに座っているだけで、騒々しさとは無縁である。

 

 

 

 タイル装飾を愛でながら回廊を巡ってゆく。ふと見ると入隅の小さな看板に気が付いた。上階にカフェがあるようだ。階段を上がってみると、カフェは土産物屋の奥にひっそりと店開きしていた。

 アーチの下に置かれたテーブルでトルコ式のコーヒーを飲む。砂糖菓子と干しブドウもついて35000スム(350円)は中々のお値段ではあるが、場所と雰囲気を考慮すれば妥当な設定だろう。

 

 

 

 レギスタン広場に入場する人は多くても2階まで上がってくる人は少ない。そして、テーブルでゆっくりとお茶やコーヒーを飲んでいく人はさらに少ない。日陰の屋外に座るのは少々寒いけれども、こうした時間を大切にしたい。

 

 

 

 

 

 

 ウルグベク・マドラサに続いて、向かい側のシェルドル・マドラサに入る。ライオンの背中に太陽を表したともいわれるホクロだらけのおっさんが描かれた、不思議な装飾のある建物だ。この絵を引用した現代建築を、既にタシケントで見ている。

 

 

 

 

 

 

 シェルドル・マドラサの内部はウルグベク・マドラサよりも俗っぽくなっていて、アラビアンナイトの登場人物のような服に着替えた観光客が写真に写ったりしている。しかし、ムカルナスや、かぼちゃ型のドームなどの装飾はこちらの方がさらに繊細だ。

 

 

 

 朝食の緑茶に加えてコーヒーまで飲んだので少々催してきた。ウルグベク・マドラサ裏手のトイレに行く。トイレへの通路には人もあまり来ず、街中を歩いているかのように錯覚する。ところで、ウルグベク・マドラサ北側の塔は傾いているとガイドブックにある。しかし、よくよく見れば、傾いているのはその塔だけではない。他の塔も傾いているし、イーワーンもかなりの前傾姿勢になっている。

 ビビ・ハニム・モスクも建設直後から崩壊が始まっていたというし、サマルカンドの地盤は意外と弱いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 最後に、広場の正面に鎮座するティラカリ・マドラサに入る。このマドラサには広場からも見えるドームの下にモスクがあり、内部の装飾がひときわ華麗である。そのホールから伸びる回廊は対照的に白く塗られていて、尖頭アーチの連続がスークのようだ。一番奥には1930年代の写真なども展示され、絵葉書も売っていた。今回の旅行で絵葉書を見たのは、この場所が最初で最後であった。

 

 

 早くも午後になり、朝方は日陰になっていたシェルドル・マドラサのファサードに陽が当たっている。朝方の気温は4℃だったのに、今はTシャツ1枚でちょうどいいくらいに暑い。

 レギスタン大通りを西へ歩き、ティムール廟へと向かう。 

 

<12 サマルカンド(7) へ続く>

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