中央アジア巡礼行記 2023年

12 サマルカンド(7) 

 

 

 

 レギスタン大通りを西へ行くと程なく交差点があって、樹々の向こうに水色に輝くティムール廟、そしてぐっと地味な黄土色のルハバト廟が頭をのぞかせている。

 

 

 背後のビルには孔雀とウズベク人女性の壁画が描かれている。この壁画、全体にペルシャ風のモチーフが多用されているように感じる。

 

 

 

 狛犬のようなライオン像の脇から公園の中の参道を進み、まずは、手前に位置するルハバト廟に参詣する。外観も内部も質素な廟である。中が涼しく一息つく。

 

 

 廟内には監視人兼解説員のようなおばさんがいて、グループ客や家族連れを相手にした説明の声が響いている。録音した音声でもないし、スピーカーなども使っていないから不快感がない。

 

 

 

 

 

 続いてティムール廟へ。こちらはさすがに青いタイルモザイクが整った結構を見せている。しかし、回廊を囲むアーチの中が、レンガ壁でつぶされているので、少々閉塞感がある。

 

 

 

 廟自体も思ったよりも小さく、お棺(偽物だけど)がいくつも並んでいるので狭苦しい。壁から天井にかけての装飾は、さすがに金ピカだ。しかし、光り過ぎて少々成金趣味にも思える。せっかくサマルカンドにあるのだから、もう少し青の分量が多い方がふさわしかろう。

 

 

 廟を出て裏手に回ると、地下にある本物のお墓に降りる階段があって、ツアーガイドが説明している。とはいえ、中に入れるわけではないから、そうなのかと思うだけでしかない。

 

 

 ティムール廟の裏側には、道を隔ててアクサライ廟が建っている。ガイドブックには3つの廟がセットで紹介されているのだから無名というわけでもないのに、こちらまで足を伸ばす人は少ない。

 

 

 

 この廟、どうということもない外観とは対照的に、内装がとてもきらびやかである。デザイン性ではティムール廟を上回ってさえいる。それなのに、定まった入場料すらなく、監視人の男が1万スムの喜捨を求めるにすぎない。彼は、ホール中央床のクッションに観光客のスマートフォンを置いて天井装飾の写真を撮るというサービスをしていた。

 

 

 さて、これでサマルカンドのいわば三大名所(ビビハニム・モスク、レギスタン広場、ティムール廟)を見たことになる。新市街の方へは全く足を踏み入れていないけれど、どうも喉の痛みがひどくなってきた。ウズベク語では薬局はドリホナと言い、都市部なら至る所に存在している。

 大通りを歩きながら、入りやすそうな店を物色し、レギスタン広場にほど近い一軒に入った。カウンターの向こうに小娘のような薬剤師がいる。彼女に「のどが痛いけど熱はない」と言うと、「それなら、これ!2時間おきに飲むのよ」と小箱を差し出した。2時間おきとは聞き間違えたかと思ったけれど、小娘薬剤師は箱を開けて中味を見せてくれた。なるほど、ヴィックスのようなドロップ状の薬である。しかも箱をよく見るとインド製である。きっと、強烈に効いてくれるだろう。いずれにせよ、箱を開けてしまったのでは買わずばなるまい。値段は35,000スム(350円)であった。

 

 

 ホテルに帰って、少し休憩。ちょうど若奥さんが中庭にいて、滞在登録証を明日渡すと言う。滞在登録制度は最近、少し変わって、5泊以上するときに限り必要となったのだそうだ。しかし、明日はタジキスタンのペンジケントへ行くつもりでいる。もし、滞在登録証をもらい忘れたら国境で問題になるかもしれない。そう言うと、それなら今作ると、中学生くらいの男の子(彼女の弟か甥っ子なのか)を呼んだ。彼は一旦部屋に引っ込むと、すぐに1枚の紙きれを手に戻ってきた。滞在登録証といっても10センチメートル四方ほどの小さな紙切れで、パソコンとプリンターさえあればいくらでも偽造できそうな代物である。ともあれ、パスポート袋に大切に納めておく。

 

 

 

 

 

 喉の痛みが急に治まるわけはないけれども、夜はやっぱりレギスタン広場へと繰り出してしまう。今夜はひときわ人出が多い。子どもたちはパラシュートのようなものを飛ばしている。

 

 

 

<13 ペンジケント(1) へ続く>

<うさ鉄ブログ トップページ へ戻る>