スイスの東北ぐるり旅 2003年

5 アッペンツェルからリヒテンシュタインへ

 

 

 アッペンツェルのホテルをチェックアウトし、駅からサンクトガレン行きの列車に乗る。

 

 

 町はずれからはセンティスやクロンベルクが遠くに見えている。あのあたりを歩いたのだなと目を凝らしてみると、尾根筋に建っていた礼拝堂まで見えているではないか。天気が良いとはいえ、空気が澄んでいるのだなと思う。

 

 今日は数駅乗っただけで、ガイスで一旦下車する。ここでアルトシュテッテン・シュタット行きに乗り換えるのだ。乗り換えた列車には人が乗れる部分が1両半しかない。当然ながらお客はほとんどいない。そんなローカル線でも快適な列車が1時間おきに走っているのがスイスのすごいところだ。

 

 

 

 

 

 

 ガイスを出るとはじめ少しだけ上ってすぐに下り坂になり、ゆっくりになったかと思うと、床下でラックレールに歯車が噛みあう音がする。そのあたりから右手にはライン河谷の大展望が広がった。以前に通ったときは濃い霧の中、歯車の音だけが響いていたことを思い出す。今日は天気が良く景色を存分に楽しめる。教会の塔が2本空に向かって伸びているアルトシュテッテンの町も見下ろせる。

 

 

 アルトシュテッテン・シュタットの駅は旧市街のはずれにある。ガイスからの所要時間はたったの21分だったのだが、景色を堪能したせいか随分長く乗っていた気がする。

 ホームの端がそのまま道路につながっている簡素なターミナル駅である。このまま路面区間に乗り入れていたのをちょん切られてしまった形だ。駅のすぐ向こうが旧市街なのだが、まだ一度も足を踏み入れたことがない。路面区間の廃止後は7番のバスがスイス国鉄のアルトシュテッテン駅まで連絡している。

 

 アルトシュテッテンからはスイス国鉄の列車でブーフスまで行く。クリーム色と草色に塗られた客車である。昔ながらの塗り分けで感じがいい。

 ブーフスの駅前に降り立つと、方面別にバス停がずらりと並んでいる。分岐駅かつリヒテンシュタインへの玄関口の駅とはいえ、さしたる大きさでもない町の駅前広場にしては随分と整備されている。

 

 ブーフスからのバス1系統はライン川を渡り、リヒテンシュタインのシャーンを経由する。シャーンの町の手前で踏切がある。さっきブーフス駅にいた1両きりのディーゼルカーがシャーン駅に停車していて、遠足らしき小学生の一団が乗り込んでいるのが見える。あっちの列車にすればよかったかなと思う。

 こちらのバスはシャーンからファドーツの町なかを通り抜けていく。町はずれのアウというバス停で下車する。すぐそばにあるガストホフがリヒテンシュタインでの常宿なのである。

 

 ところが、前回の宿泊以来3年の間に宿とその周囲の環境は激変していた。宿が建つT字路は大きなラウンドアバウトになり、緑の芝生だった庭はなくなってトヨタの自動車販売店とガソリンスタンドが建っているではないか。部屋のテラスに出ても、西側、アッペンツェル方向の山並みがそれらのビルに遮られてしまっている。何たることだ・・・

 

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