スイスの東北ぐるり旅 2003年

4 サンクトガレン

 

 

 

 サンクトガレンに住む知人を訪問するために、アッペンツェル駅から列車に乗る。

 今度は東に向かって出発だ。列車は勾配を上ってゆき、アッペンツェルの町を見下ろす。

 しばらくは、気持ちのいい牧草地の中を走っていく。進行左手の高いところに駅があって赤い電車が停まっている。あんなところにも駅があると思って眺めていると、列車はヘアピンカーブの上り坂をクイッと回り込んで、その駅のホームに滑り込んだ。そこがガイスであった。アルトシュテッテンへの路線の分岐駅である。

 

 

 ガイスからは谷間に下ってゆく。左手にはまだセンティス山が見えている。沿線は意外と工場が多い。タオフェンの村を路面電車になって通り過ぎる。

 

 

 さいごはラックレールでサンクトガレンに向かって下ってゆく。谷間に家が建ち並び、大きな教会も見えるけれども旧市街とは違う場所のようだ。

 

 

 

 

 サンクトガレンには18年前にも来たことがある。その日は3月だというのに大雪で、駅近くのヴァルハラというホテルに泊まった。星が4つもあるホテルで若造には分不相応だったけれども、快適なベッドでよく眠れた。そのホテルは今も駅前広場の向こうに見えている。

 今日は街の中心へ歩いて行く。しかし日曜だから店が全部閉まっている。したがって人通りも絶えている。木彫で飾られた出窓を見ながら修道院へ向かう。

 

 

 入場料を払って大聖堂に入る。ここは天井に暗灰色のフレスコ画が描かれているのが特徴的だ。

 壁面には懺悔室がずらりと並んでいる。緑のカーテンが下がり、司祭の名前が書かれた名札がさがっている。懺悔者の房は司祭の両側にあって、台に膝をつくと赤いランプが点灯する仕掛けだ。

 中庭にはサッカーやバスケットのゴールが見える。坊さんたちもこうしたスポーツをするらしい。

 

 大聖堂の向こう側、トローゲンバーンの線路がある通りに出る。ケバブサンド屋などがあり、道行く人も中近東系が多い。その通りから階段を上がったところに知人の住むアパートメントがある。

 観葉植物が並ぶ天井の高いリビングルームからテラスに出る。マンションの周囲は芝生の斜面で、近所の人たちが思い思いにくつろいだり、バーベキューをしたりしている。

 彼我の生活水準のあまりの違いに少し憂鬱な気分になる。

 

 

 

 アパートメントを出て木の階段を更に上へと登る。行き来する人が随分多い。頂上には貯水池が3つ並んでいて、そのうち2つがプールとして使われているのだった。

池に沿った道からは遠くボーデンゼーも見えている。湖の上に飛行船が浮いている。  そういえばツェッペリンで名高いフリードリヒスハーフェンは対岸だ。

 トローゲンバーンの走る谷を挟んだ向かい側にも木々の間に住宅が点在している。あちらは高級住宅地なのだと言う。

 

 

 アパートメントに戻り、知人の車に乗りこむ。ガレージは地下にあり、建物面積に比べて随分と広い。2棟の共同なのだそうだ。外観からは車の出入り口も目立たない。

 向かうのはさっき見た高級住宅地の方である。坂道をのぼってゆくと、ときおりセンティスが家並みの間から顔をのぞかせる。

 着いたのはピーター&ポールという名の魚料理の店であった。かぼちゃスープがなぜかラーメンのスープ味だった。隣接してワイルドパークがあり、シュタインボックや鹿、イノシシにウリンコがいる。イノシシの柵には「野生ブタ」とある。

 

 

 

 帰りはそのままアッペンツェルまで車で送ってくれる。アッペンツェルの町の手前で脇道に乗り入れる。正面には西日を受けて白く輝くセンティスがそびえ、足元にはアッペンツェル町が静かに横たわっていた。

 

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