コーンウォールの夏休み 2012年

12 ニューキー(1)

 

 快適だったコテージを退去してニューキー空港まで戻り、レンタカーを返却する。借りるときと同様、返す時も自分で勝手に駐車場に停めてキーをカウンターに返すだけ。「何も問題なかったね?OK!」の一言でおしまいである。れっきとしたワールドワイドな大手レンタカー会社の営業所であっても呑気なものだ。

 空港からは路線バスでニューキーの中心部へ出る。586系統という一般の路線バスで毎時決まった時間に1本あるので、利用しやすい。運賃の方はローカル路線らしく、20分ほどの乗車時間なのに3.5ポンド(600円)もする。小型の四角い車両で、鼻先にベンツのマークがついている割に、騒音、振動とも大きく上り坂では難儀するほど力もない。

 

 途中、ウォーターゲートなる入江の村がある。大衆的なホリデーコテージが立ち並び、ホワイトハウスという看板も見える。ニューキーの郊外からは老人たちがたくさん乗ってきて満員になった。乗車時に運賃を支払う方式だが、地元の人たちは皆、カードをタッチしているから時間があまりかからない。

 ニューキーの鉄道駅にほど近いバス停で下車する。バス停の名はバーガーキングという。

 

 

 

 

 徒歩数分のところにあるB&Bへ。到着時間をあらかじめ断っておいたので、まだお昼前だが部屋に通してくれる。

 

 荷物を置いて、直ぐに昼食に出かける。お目当てのティールームがあるので、街の中心とは反対側へ歩いてゆく。倉庫や病院が並ぶ埃っぽい道を抜けると突然に緑の濃い斜面が現れ、木立の下の階段を下りてゆく。段丘の下はトレナンス・ガーデンという公園で、敷地内に同名のティールームがあるのだ。

 ところが、この店は廃業していた。窓に何かのアワードを記念したステンドグラスが見えるのがむなしい。

 

 

 

 公園にはもう一つ、レイクサイド・カフェなる施設もあるので行ってみる。公園の休憩所を想像してあまり期待していなかったのだが、ここのクリームティーも美味しかった。窓の向こう、池の対岸には高級そうな住宅が並び、モダンな店内の雰囲気もいい。カフェと称していても本格的な食事もできるようで、黒板のメニューを書き換えている最中であった。

 

 

 公園を出て、今度は坂道を上る。ニューキーの中心部は海岸段丘の上に位置しているのだ。住宅地の路地を抜けて近道をする。一軒の家の庭にウサギが飼われている。柵などなく放し飼いである。逃げたり犬に襲われたりする心配はないのだろうか?

 

 

 中心街の通りに出ると、クリームティーのできる店が次々と現れる。しかし、クリームは全てロッダスで、例の水色の牛乳缶が店の前に置いてある。

 ところが、中の1軒にはオリジナル・クリームと表示が出ている。入ってみるとクリームティーのピクニックボックスが置いてある。しかもクリームはCornishCream.comという、聞いたこともない会社のものだ。今しがたクリームティーをしたばかりではあるが、これは「買い」だ。

 近くの店で、テイク・アウェイの紅茶も買っておく。

 

 

 

 

 

 海岸に出ると、ちょうど引き潮の時間なのか、砂浜が広々としている。薄茶色の砂である。ここは3段のテラスが作られていて右手には三角屋根の水族館があり、その向こうには「ジ・アイランド」なる小島に吊橋がかかっている。この島は個人宅とのことで入ることはできない。一方、左手には半島が伸び、先端の丘にホテルが一軒建っているのが見える。テラスの下段はレジデンツ・オンリーとあるから、ホリデーコテージになっているらしい。

 

 

 

 

 ベンチに座って、先ほど購入したピクニックボックスを開く。クロテッドクリームは4オンス(120グラム弱)もあって、スコーンとミニ・ジャムがそれぞれ4個ずつ入っている。スコーンはパンに近い感じ。先ほどのティールームのスコーンもそうだったから、これがニューキー風なのだろうか。このクリームもおいしいなあ。さっき食べたばかりなのに、環境が変わったせいかペロリと平らげてしまった。

 隣に座ったおばさんが、沖合のヨットのそばにイルカがいると教えてくれたけれども発見できない。

 

 テラスを後にして、郵便局に立ち寄る。同行者が用事を済ませている間に近所の店を覗いてみる。すると、棚にまた別な会社のクリームティー・ハンパーがあるではないか。本日3度目のクリームティーになってしまうので迷いつつも購入してしまった。

 

 

 

 

 

 

 ハンパーをB&Bに預けて、海岸線を北へ歩く。

 段丘上が広い原っぱになっていて、陽射し、風ともに強い。振り返れば岬で区切られた引き潮の砂浜が西陽に照らされていい雰囲気だ。

 さすがにこの崖っぷちには金網の柵がある。しかし、深緑色に塗られているし、支えの横棒も省略されているので目障りではない。柵に花束がしばりつけられているのは、自殺した人への手向けなのだろうか。

 

 

 

 この原っぱはバロウ・フィールズと言う。その名のとおり、古墳らしき高まりがいくつか見える。柵で囲われた部分もあって、出土品の写真が掲示してある。この柵は陸地測量部発行の地図にも描写されている。英国の地形図は地上の様々な事物を実によくとらえていて、いつもながら感心する。

 

 

 帰りに地元産を強調しているフィッシュアンドチップスの店でヘイクのフライを買って帰る。ふっくらした大きな身の白身魚である。ヘイクとはどんな魚かと調べてみたら、子どものころに給食によく出たメルルーサの英語名だった。

 主食にはもちろん、さっき買ったクリームティー・ハンパーをいただいた。クリームは残念ながらオリジナルではなく、大手であるロッダスの製品であった。

 

 

<13 ニューキー(2) へ続く>

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