建築と空間 イタリアの巻 1994年

7 ローマの路面電車

 

 

 

 ローマにもトラムが走っている。バチカンやコロッセオの近く、トラステヴェレ地区なども通ってはいるけれども、全体としてはローマの武蔵野線といった感じで、旅行者にはあまり縁がない。それだけによそ行きでないローマの雰囲気が味わえる。渋いオレンジ一色に塗られた車両もクラシックで、トラムというより路面電車と呼ぶのがふさわしい。

 

 

 

 

 なかでも、テルミニ駅の東南にあるポルタ・マッジョーレのあたりは楽しいところだ。古代ローマの城門にしてその出自は凱旋門、さらには水道橋を兼ねた城壁を市電の線路が取り囲み、壁を貫いては市電とは別な950ミリ軌間の路線が通っているという具合なのだ。

 

 停留所に新型連接車が来たので乗る。系統番号は30に斜線が入っている。電車は国鉄線路をくぐり裏町を抜ける。この新型車、カーブするたびに連接部ゴムの軋る音がうるさい。旧型車の方がずっと乗り心地が良いのはどうしたことか。

 

 

 

 やがて広い通りに出て道の中央を快走し始めた。夕暮れ時の場末の風景はひときわ寂寥感が募る。それでも地下鉄の入口が見え、このあたりから多少は飲食店などが現れた。通りの名はマルゲリータ女王通りという。もし、この通りに市電が走っていなかったら、ただの寒々しい大通りでしかないだろう。

 

 

 ところで、イタリア語では停留所のことをフェルマータという。音楽記号と同じだ。標識の上辺が丸っこいのも共通している。

 

 

 電車通りを離れ、テルミニ駅方向に歩いてゆく。Coinという、恵比寿ガーデンプレイスみたいなショッピングセンターがあるので入ってみる。現代的な建物でもデザインには一日の長がある様に思う。

 

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